◇SH0216◇銀行員30年、弁護士20年 第2回「弁護士の仕事」 浜中善彦(2015/02/13)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第2回 弁護士の仕事

弁護士 浜 中 善 彦

 サラリーマンについては、人によって多少の違いはあるが、いずれにせよ、具体的イメージが浮かばないということはない。専門的職業であっても、医者については、全くお世話になったことがない人はほとんどいないであろうから、かなり具体的なイメージがある。公認会計士や税理士については、一般の人はほとんど縁がないが、それでもある種のイメージがあるのではないかと思われる。しかし、弁護士については、多くの人にとってはテレビ番組で見るくらいで実際にはほとんど縁がない人が大部分であろうから、なんとなく裁判をする人程度の印象ではないかと思われる。実際、弁護士の仕事は、従来、裁判所中心であったし、修習も、裁判所提出文書作成の修習であった。多分、その点は、現在でもあまり変わっていないのではないかと思われる。

 銀行業務についていうと、私が銀行員時代の昭和40年代から50年代にかけては、リーテール(中小企業、個人取引)よりもホールセール(大企業取引)のイメージが強かったように思う。しかし、現在は、経済構造や企業の資金調達の変化等により、ホールセールよりもリーテールの比重が格段に高まってきているという印象である。

 弁護士業務は、現在でも裁判所中心であることはあまり変わっていないようにみえるが、社会の変化に伴って、かなり変わってきているように思われる。たとえば、同じく裁判所中心とはいっても、過払金返還請求訴訟などはかつてはなかった。過払金訴訟については、実務のほとんどを弁護士資格のない事務員任せのところもあるなど批判もあるが、これまで裁判や弁護士に縁のなかった人たちに、弁護士も身近な存在であるということを認識させたという点では、必ずしもマイナスばかりでもないと思う。

 また、企業法務の面でもコーポレートガバナンスやコンプライアンスがこれまで以上に厳しく問われるようになってきたことにより、裁判だけではなく、日常業務における法務の重要性が増してきている。さらに、国際化の進展に伴って、国際的な取引も増加してきている。しかも、従来のように欧米先進国との契約問題だけではなく、企業の海外進出のサポートや進出後の法的問題の相談業務等かつてない領域の仕事も発生している。地方自治体でも、地方分権が進むなか、制定する条例の検討や市民に対する法的対応などの政策形成への関与、リスク管理やコンプライアンス強化等についての弁護士ニーズは高まってきている。

 そういう面からみると、弁護士業界は、現在増員による新規登録弁護士の就職問題や既存弁護士の仕事の減少等負の側面のみが問題にされがちであるが、若い弁護士の増員と社会的経験のある弁護士の増加によって、これまでにない職域拡大が期待される、魅力ある職場ということもできるのではないかと思うのである。

以上 

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