SH5478 対内直接投資等に係る政省令改正と外国金融機関に係る事前届出・事後報告義務の強化 松本拓/鈴木潤/武士俣隆介/佐藤龍(2025/06/09)

組織法務経済安保・通商政策

対内直接投資等に係る政省令改正と外国金融機関に係る
事前届出・事後報告義務の強化

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 松 本   拓

弁護士 鈴 木   潤

弁護士 武士俣 隆 介

弁護士 佐 藤   龍

 

1 はじめに

 2025年4月4日、「対内直接投資等に係る政令の一部を改正する政令の改正」および関連省令・告示が公布され(以下「本政省令改正」という。)、2025年5月19日に施行された。本政省令改正では、上場株式の取得等に関する「事前届出免除制度」について「特定外国投資家・準特定外国投資家」の概念が新規に導入されたこと、および「変更報告書の適用範囲」が拡大された点が重要である[1]。公布された本政省令改正の本文および財務省による本政省令改正に対するパブリックコメント(「対内直接投資等に関する政令の一部を改正する政令(案)等に対する意見募集結果について」[2]。以下「本パブコメ回答」という。)によって、従前広範に解釈される余地があった適用範囲に対して明確化がなされた。本稿では、この明確化された適用範囲を中心に、本政省令改正について解説する。

 なお、本政省令改正は、外国金融機関に対して広範な影響を及ぼし得る。今後事前届出免除制度を利用して、日本株に投資する外国金融機関においては、その属性に係る事項について定期的な見直しを実施し、従前は事前届出が不要であった種類の取引であっても、本政省令改正を踏まえて、今後の取引では事前届出が必要とならないか確認する必要がある。特に、後述する変更報告書については、外国金融機関の所在国にかかわらず、そのオーナー、意思決定プロセスにおける対象者の変更にともない、提出の要否を確認する必要があるため、実務上注意を要する。

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(まつもと・たく)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー(弁護士・ニューヨーク州弁護士)。主要な業務分野は,①M&A・投資,②経済安全保障・通商,③アウトバウンド・インバウンド,④スタートアップ法務・投資,⑤ウェルス・マネジメント及び⑥競争法関連。2012年インドネシアのSSEK法律事務所勤務,2016年コロンビア大学・ロースクール(LL.M.)修了,2016年~2017年米国のSeward & Kissel法律事務所勤務。https://www.amt-law.com/professionals/profile/TUM

 

(すずき・じゅん)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル。2004年慶應義塾大学法学部卒業。2006年立命館大学法科大学院卒業。2009年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2015年米国ジョージ・ワシントン大学ロースクール(LL.M.)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。2024年7月まで2年間、外務省総合外交政策局経済安全保障政策室において、経済安全保障推進法、外為法、重要土地等調査法、重要経済安保情報保護活用法等の設計や運用にかかる体制整備等を担当。それ以前は、日系事業会社の本社及び米国グループ会社の法務部において経済安全保障部門の立ち上げに関与した他、グループ全体の経済安全保障に関するコンプライアンス体制の整備、投資案件等の個別案件を担当。

 

(ぶしまた・りゅうすけ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所シニアアソシエイト。主要な業務分野は①国内およびクロスボーダーのM&A・投資、②ヘルスケア・医薬品関連法務。2022~2024年財務省大臣官房企画官(国際局調査課)。著作『M&A・投資における外為法と海外の投資規制の実務』(共著)(中央経済社、2024)、「財務省・2023年度版『外為法・対内投資審査制度-アニュアルレポート(年次報告書)』の概要と近時の無届事案の分析について」(共著)NBL1283号(2025)、「財務省『外為法・投資審査制度にかかるアニュアルレポート(年次報告書)[2023年度版]』の刊行とアウトリーチの取組み」(共著)金融法務事情2252号(2025)ほか。

 

(さとう・りゅう)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年早稲田大学政治経済学部卒業。2021年一橋大学法科大学院卒業。2023年弁護士登録(第二東京弁護士会)。M&A、訴訟、再保険などの分野を中心に取り扱う。

 

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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