米国貿易裁判所、IEEPA関税に違法判断
──控訴裁が一時的執行停止、関税は継続──
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 髙 嵜 直 子
弁護士 中 村 美 子
1 はじめに
トランプ米大統領は、2025年1月20日の大統領就任以来、積極的な関税政策を推進してきた。その一つが、国際緊急経済権限法(以下「IEEPA」という。)に基づく関税である。米国は、IEEPAに基づき、①メキシコ、カナダ、中国に対する違法薬物および移民対策として、メキシコ、カナダおよび中国原産品に追加関税[1]を発動し、②貿易赤字等への対策として、全世界からの輸入品にベースライン関税(いわゆる「相互関税」)を課している[2](これらを総称して、以下「IEEPA関税」という。)。
これらの関税措置に対し、米国の輸入者や複数の州政府が米国内訴訟を提起した。米国の国際貿易裁判所(以下「CIT」という。)は5月28日、IEEPA関税が違法・無効であると判断し、差止命令を下した[3]。米国政府は、即日、連邦巡回区控訴裁判所(以下「米連邦高裁」という。)に上訴し、米連邦高裁は、翌5月29日、審理が完了するまでCITの判断を一時的に停止する措置を命じており[4]、6月10日、控訴中はかかる措置が継続することを認める判断を示した[5]。したがって、現時点(6月16日現在)では、IEEPA関税は引き続き適用されている。
本稿では、CITの5月28日付判断の概要を整理するとともに、米連邦高裁における審理を含め、今後予想される展開についても述べる。
この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください
(たかさき・なおこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。2004年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院卒業。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2012年Stanford School of Law(LL.M.)修了。2013年ニューヨーク州弁護士登録。インドネシア及びシンガポールの大手法律事務所、経済産業省通商政策局国際経済紛争対策室への出向経験を有する。主な業務取扱分野は、WTO/国際通商法務、海外事業展開の支援等。
(なかむら・よしこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年中央大学法学部卒業。2017年東京大学法科大学院卒業。2018年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。税務関連の案件について広くアドバイスをするほか、データプライバシー法務、M&A、訴訟・紛争その他の企業法務全般を取り扱っている。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用