SH5506 中小受託取引適正化法成立(第2回) 適用対象の拡大――従業員基準・特定運送委託類型の導入および木型・治具等の対象取引への追加 原悦子/西向美由(2025/07/08)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

中小受託取引適正化法成立(第2回) 適用対象の拡大
――従業員基準・特定運送委託類型の導入および木型・治具等の対象取引への追加――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 原   悦 子

弁護士 西 向 美 由

 

1 はじめに

 下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)および下請中小企業振興法が改正され、2026年1月1日より、それぞれ製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下「中小受託取引適正化法」という。)および受託中小企業振興法(以下「新振興法」という。)と改称の上施行される。第1回では、これらの改正の全体像と実務に直結する改正の要点を紹介した。第2回となる本稿では、「適用対象の拡大」に関する改正に焦点を当て、制度の変更内容をより具体的に解説するとともに、企業として求められる対応についても検討を加える。

 今回の改正では、①従業員基準の導入、②特定運送委託類型の導入、③木型・治具等の対象取引への追加などにより、下請法と比べてその適応対象となる取引が大幅に拡大される。これにより、下請法のもとでは親事業者に該当せず下請法対策が必要なかった事業者が中小受託取引適正化法では新たに「委託事業者」として法の適用を受けることになったり、これまで下請法の適用対象外であった取引が新たに対象取引となり発注方法等を見直さなければならなくなったりするケースが生じることが見込まれる。以下では、上記①ないし③の改正内容について詳述する。

この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください


 

(はら・えつこ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1998年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2006年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)修了。2007年ニューヨーク州弁護士登録。2019年~2022年東京大学大学院法学政治学研究科准教授。独禁法の分野において、独禁調査案件、企業結合届出の対応に幅広い経験を有するほか、クロスボーダーでの事業展開、フランチャイズ、戦略的提携に関する案件、通商業務も多く取り扱う。

 

(にしむかい・みゆ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所シニア・アソシエイト。2008年京都大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2018年3月-8月・ベルギー ブリュッセルのMcDermott Will & Emery法律事務所勤務。事業会社への出向経験を有し、主に独禁法及び下請法の分野において、企業結合届出、調査対応のほか、コンプライアンス体制に関するアドバイスを数多く取り扱っている。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

タイトルとURLをコピーしました