SH5523 中小受託取引適正化法成立(第3回)代金の決定・支払・執行――改正により求められる取引実務の再構築 原悦子/西向美由(2025/07/28)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

中小受託取引適正化法成立(第3回)代金の決定・支払・執行
―改正により求められる取引実務の再構築―

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 原   悦 子

弁護士 西 向 美 由

 

1 はじめに

 下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)および下請中小企業振興法が改正され、2026年1月1日より、それぞれ製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下「中小受託取引適正化法」という。)および受託中小企業振興法(以下「新振興法」という。)と改称の上施行される。第1回では、これらの改正の全体像と実務に直結する改正の要点を紹介し、第2回では「適用対象の拡大」に関する改正について概要を説明した。第3回となる本稿では「代金の決定・支払・執行」に関する改正に焦点を当てて解説する。

 今回の改正では、まず製造委託等代金を決定する場面において、代金額の決定プロセスに着目した新たな禁止行為として「協議を適切に行わない代金額の決定」(新5条2項4号)が追加された。また、支払条件に関しては、手形による支払いが禁止されるとともに、60日以内に満額の代金を支払う義務が厳格化された。さらに、執行面においても、遅延利息の対象に製造委託等代金の減額分が追加され、既往行為を対象とする勧告に関する規定が整備され、面的執行も強化された。

 これらの変更により、委託事業者は、委託時における製造委託等代金および支払条件の決定から、支払義務の履行に至るまでの一連のプロセスについて、取引実務が中小受託取引適正化法に準拠したものとなっているかを再確認すると共に、必要に応じて取引実務の再構築が求められる可能性がある。以下では、代金の決定・支払いの各局面における改正内容および執行強化の内容について、より具体的に解説するとともに、企業として求められる実務対応についても検討を加える。

 

2 「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」の追加

⑴ 買いたたきとの比較

 中小受託取引適正化法では、従来からの「買いたたき」(新5条1項5号)に加えて、「協議を適切に行わない代金額の決定」(新5条2項4号)という新たな禁止事項が追加された。買いたたきについては、下請事業者等の用語の変更に伴う形式的な調整はあったものの、実質的な内容に変更はない。両禁止事項の改正後の条文は以下のとおりである。

 

買いたたき 協議を適切に行わない代金額の決定

五 中小受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い製造委託等代金の額を不当に定めること。

四 中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること。

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(はら・えつこ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1998年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2006年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)修了。2007年ニューヨーク州弁護士登録。2019年~2022年東京大学大学院法学政治学研究科准教授。独禁法の分野において、独禁調査案件、企業結合届出の対応に幅広い経験を有するほか、クロスボーダーでの事業展開、フランチャイズ、戦略的提携に関する案件、通商業務も多く取り扱う。

 

(にしむかい・みゆ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所シニア・アソシエイト。2008年京都大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2018年3月-8月・ベルギー ブリュッセルのMcDermott Will & Emery法律事務所勤務。事業会社への出向経験を有し、主に独禁法及び下請法の分野において、企業結合届出、調査対応のほか、コンプライアンス体制に関するアドバイスを数多く取り扱っている。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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