SH5524 公取委、改正下請法の施行(2026年1月1日施行)に向けて下請法運用基準等の改正案を公表 佐々木智生(2025/07/29)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、改正下請法の施行(2026年1月1日施行)に向けて
下請法運用基準等の改正案を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 佐々木 智 生

 

1 はじめに

 「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」が2025年5月16日に可決・成立し、2026年1月1日から施行される予定である(以下「本改正」という。)。これに伴い、2025年7月16日、公正取引委員会は、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(以下「運用基準」という。)の改正案(以下「改正後運用基準」という。)を公表した。本改正に対応する上では、運用基準の改正点を踏まえることが必要となるところ、以下では、実務上影響が大きいと考えられる運用基準の改正点について解説する。

 なお、本改正に伴い、法律の題名は「下請代金支払遅延等防止法」(以下「現行法」又は「下請法」という。)から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(以下「改正法」という。)に、運用基準の題名は「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(以下「現行運用基準」という。)から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」に、それぞれ改められることになる。

 

2 振込手数料を中小受託事業者に負担させることの禁止

 現行運用基準では、下請代金を下請事業者の銀行口座に振り込む際の手数料を下請事業者に負担させることは、①下請事業者との書面での合意があり、②親事業者が金融機関に支払う実費の範囲内で下請代金の額から差し引いて支払う限りにおいて、下請代金の減額に当たらず、適法との解釈が示されている(現行運用基準第4・3(1)キ、ク)。

 もっとも、決済に伴う手数料の負担の在り方については、民法が弁済の費用を債務者(発注者)が 負担することを原則としていることを踏まえると、発注者が負担することが合理的な商慣習であると考えられ、振込手数料を下請事業者に負担させる行為は、合意の有無にかかわらず、下請法上の違反に当たることとし、その旨、解釈を変更して、運用基準において明示すべきであるとの方向性が示されていた(企業取引研究会「企業取引研究会報告書」(2024年12月)24頁)。

 上記を踏まえ、改正後運用基準では、中小受託事業者(現行法でいうところの下請事業者)との合意の有無にかかわらず、製造委託等代金(現行法でいうところの下請代金)を中小受託事業者の銀行口座へ振り込む際の手数料を中小受託事業者に負担させ、製造委託等代金から差し引くことは、製造委託等代金の減額(改正法5条1項3号)に該当し、違法であるとの解釈が示される見込みである(改正後運用基準第4・3(1)カ)。

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(ささき・ともお)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年一橋大学法学部卒業。2016年弁護士登録。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>
〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)

 


公取委、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」案、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」案等の公表
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/jul/250716_toriteki.html

公取委、事務総長定例会見記録(令和7年7月16日)〔「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」案等関連〕(18日)
https://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/2025/jul_sep/250716.html

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