インドネシア:子どもによるオンライン・サービスの利用制限
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
1 はじめに
メッセージや写真、動画をリアルタイムで交換するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、友人間やコミュニティ内での便利なコミュニケーション・ツールとしてはもちろん、今日では企業のPR活動にも積極的に取り入れられており、現代社会のさまざまな活動において不可欠なプラットフォームを形成している。同時に、SNSを介したプライバシー侵害、ネットいじめ(サイバー・ブリイング)、フェイク・ニュースなど数々の弊害が社会問題化しているところであり、とりわけ精神的に未成熟な子どもたちへの悪影響が指摘されている。こうした中で、諸外国においては、子どもによるSNSの利用を制限しようとする動きも見られる。例えば、フランスでは2023年に成立した法律により、SNS事業者は、15歳未満の子どものユーザー登録に際して親権者の同意を取得すべきことが義務付けられた。オーストラリアでは、16歳未満の子どもによるSNSの利用を禁止する法律が2024年11月に成立しており、成立後12か月以内に施行される。
インドネシアにおいてもSNSの子どもたちへの悪影響は大きな社会問題となっており、ネット上での児童ポルノ被害など深刻な人権侵害事案も報告されている。インドネシア政府は、2025年3月27日、子どもの保護にかかる電子システムの運営管理に関する政令2025年第17号(以下「本政令」という。)を制定し、オンライン・サービスの利用に伴うリスクから子どもたちを保護する施策を打ち出した。
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(まえかわ・よういち)
1998年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2013年Northwestern University School of Law卒業(LL.M.)。2013年~2016年長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク(Soemadipradja & Taher内)勤務。2019年~2023年長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。2024年~長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・オフィス(IM & Partners in association with Nagashima Ohno & Tsunematsu)勤務。
ジャカルタの業務提携先法律事務所に3年間駐在し、日本企業のインドネシア進出及び投資、進出後の労務問題、危機管理等に関して豊富な経験を有する。2019年から2023年までのシンガポール・オフィスでの執務を経て、2024年1月からジャカルタを拠点として、日本企業のインドネシアにおけるJV案件、M&A案件、不動産取引、既進出企業の現地での日々のオペレーションに伴う法務面のアドバイスを行っている。
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