経団連、「人権尊重経営」の推進
――「ビジネスと人権」に関する経団連の考え方と政府への期待――
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 齋 藤 宏 一
弁護士 新 庄 絢
1 はじめに
2025年9月16日、一般社団法人日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)は、「『人権尊重経営』の推進―『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待―」(以下「本意見書」という。)と題する政策提言を公表した[1]。
グローバル市場において、企業は単なる経済的存在ではなく、社会的責任を果たすアクターとしての役割を強く求められている。とりわけ、「人権尊重」はその中心的なテーマの一つであり、2011年に国連が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」[2](以下「指導原則」という。)は、「国家の保護義務」、「企業の尊重責任」、「被害者の救済アクセス」の3本柱を提示し、企業の行動原則として広く受け入れられてきた。以降、欧州を中心に人権デュー・ディリジェンス(以下「人権DD」という。)を義務化する法制度が整備され、日本企業も対応が不可避となっている。
経団連は、日本政府による「『ビジネスと人権』に関する行動計画」[3]の5年ぶりの改定作業の完了に先んじて、本意見書をまとめた。本意見書は、国際社会が企業活動に求める人権対応の高度化を背景に、日本企業が直面している課題、「人権尊重経営」に取り組む際の基本的な考え方および今後の対応の方向性を明らかにしている。
以下では、本意見書の内容を紹介する。
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(さいとう・こういち)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1999年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第一東京)。2008年ハーバード・ロースクール(LL.M.)修了、2008-2009年ハーバード・ロースクール客員研究員。2009年ニューヨーク州弁護士登録。企業法務、特にインセンティブ(株式)報酬制度やM&Aに関連する相談に対応するほか、ビジネスと人権にも注力している。
(しんじょう・あや)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年慶應義塾大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院修了。2023年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
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