SH5592 米国FDAとHHSによる処方箋医薬品の消費者向け広告規制の強化 石原坦/谷川原淑恵(2025/10/08)

取引法務表示・広告規制

米国FDAとHHSによる処方箋医薬品の消費者向け広告規制の強化

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 石 原   坦

弁護士 谷川原 淑 恵

 

1 はじめに[1]

 2025年9月9日、米国保健福祉省(HHS)[2]および米国食品医薬品局(FDA)[3]は、「誤解を招く」消費者向け処方箋医薬品広告(Direct to Consumer Advertising:DTC広告)に対処するため、これまでは詳細な情報を提示する必要がなかった安全性に関する警告や注意事項について、広告にすべての安全性に関する情報を提供することを義務付けるという重要な規制強化を含む、一連の措置を発表した[4]。これらは、同日、トランプ大統領が、誤解を招く処方箋医薬品のDTC広告に対処するため、FDAおよびHHSに対し、取締りを強化する適切な措置を取るよう指示する内容の大統領覚書[5]に署名した直後に発表されたものである。

 日本とは異なり、米国では、医師が処方する処方箋医薬品についても、一般消費者に直接働きかける広告(いわゆるDTC広告)が許容されている。特に、近年では米国のテレビコマーシャルなどで処方箋医薬品のDTC広告が多くみられる。これらは、これまでのFDAの規制により、一部の安全性に関する警告や注意事項に関しては、広告で直接の表示を行う必要がなかったことによって実質的に可能となっていた。しかし、今回の米国政府の発表により、当該規制は、広告規制の“抜け穴”として公衆衛生に悪影響を及ぼしているとの指摘がなされており、当局は今後当該“抜け穴”規制を撤廃し、DTC広告への取締りを強化することを示した。これにより、処方箋医薬品に関するテレビコマーシャルなどのDTC広告の多くが大規模に見直しを迫られることになると考えられる。

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(いしはら・ひろし)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1997年東京大学経済学部卒業、2000年弁護士登録、2004年慶應義塾大学法学部卒業、2005年米国コロンビア大学ロースクール修了(LL.M.)、2006年カリフォルニア州弁護士登録、2007年ニューヨーク州弁護士登録。また、日本銀行及び総合商社への出向経験を有する。主要な業務分野は、国内及びクロスボーダーのM&A、ヘルスケア・薬事規制。「医薬・ヘルスケアの法務 - 規制・知財・コーポレートのナビゲーション」(商事法務)、「実務で役立つ 世界各国の英文契約ガイドブック」(商事法務)等の著書多数。

 

(たにがわら・よしえ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2009年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2011年早稲田大学大学院法務研究科修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)。2020年米国University of Pennsylvania Carey Law School (LL.M.) 修了。2021年米国ニューヨーク州弁護士登録。グローバル製薬会社での企業内弁護士経験を有し、ライフサイエンス・ヘルスケア分野の法務を専門として、製薬や医療機器に関する国内及びクロスボーダー取引(M&A、知財ライセンス、業務提携・アライアンス等)、薬機法等の各種規制対応、不正調査、訴訟・紛争解決を取り扱う。

 

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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