総務省、「放送事業者におけるガバナンス確保に関する論点整理(案)」を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 中 崎 尚
1 はじめに
フジテレビの一連の騒動においては、当時広告を出稿していたスポンサー企業の多くがテレビCMの差し止めに踏み切り、一時はAC(公共広告機構)のCMばかりが繰り返し流れていたのは記憶に新しい。これはまさに、広告によって成り立つ民間放送事業の存立基盤を失いかねない状況であった。放送業界を管轄する総務省は、今回のような放送に対する国民の信頼を失墜させる事案が生じてしまった背景には、民放各社の、放送の公共性や言論・報道機関としての社会的責任に対する自覚やガバナンスの欠如があると考えられるとして、2025年6月より「放送事業者におけるガバナンス確保に関する検討会」をスタートさせた[1]。検討会では、主に①放送事業者に求められるガバナンスの具体的内容、②ガバナンスの実効性確保のための具体的方策、③かかる具体的方策の実施に当たり放送事業者・業界団体・国等がそれぞれ果たすべき役割、について議論が重ねられてきた。2025年9月24日に開催された第5回検討会において、事務局資料として提出された「放送事業者におけるガバナンス確保に関する論点整理(案)」(以下「論点(案)」という。)は、ガバナンス確保に関する取組の具体的内容を議論・検討する中で浮かび上がってきた論点を改めて整理するものである[2]。
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(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、国内外のインターネット・IT・システム関連を中心に、個人情報保護・プライバシー(ヘルスケア・遺伝子を含む)、サイバーセキュリティ、AI・メタバース・宇宙衛星をはじめとする先端分野、経済安全保障、電波法・電気用品安全法ほか技術分野、EUサイバーレジリエンス規制ほか海外コンプラインアンス対応、クロスボーダー取引、知的財産案件(著作権・商標・ライセンス・共同開発)、ベンチャー支援を幅広く取り扱うほか、AI事業者ガイドラインWGほか経済産業省・総務省・内閣府ほか政府の有識者委員を多数歴任するとともに、個人情報保護委員会の各種調査を受託しております。インターネット関連では、SNS・クラウド・メタバース・オンラインゲームほかの各種サービス立ち上げ・海外進出支援、ドメイン紛争、セキュリティを中心に、個人情報保護法、資金決済法、プロバイダ責任制限法、電気通信事業法ほか各種業法規制への対応、IT・システムでは、システム開発、セキュリティ、オープンソースを含むプログラム紛争を中心にサポートしております。
日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、内閣府メタバース官民連携会議委員、AI事業者ガイドラインWG 委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。
「生成AI法務・ガバナンス 未来を形作る規範」「Q&Aで学ぶメタバース・XRビジネスのリスクと対応策」「Q&Aで学ぶGDPRのリスクと対応策」(いずれも商事法務)ほか講演・執筆多数。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
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