SH5618 シンガポール:船荷証券の呈示のない運送品引渡しに関するシンガポール最新裁判例 梶原啓(2025/10/31)

取引法務企業紛争・民事手続

シンガポール:船荷証券の呈示のない運送品引渡しに関するシンガポール最新裁判例

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 梶 原   啓

 

1 はじめに

 船荷証券(Bill of Lading)は海上物品運送を請け負った運送人が荷送人に対して発行する証券である。船荷証券の所持人は運送品引渡請求権を行使することができる。つまり、運送人は船荷証券の呈示を受けて運送品を荷受人に引き渡すのが原則である。しかし、実務としては、船荷証券が荷受人に未着であっても例えば滞船を防ぐ等の要請から、運送人が船荷証券の呈示を受けないまま引渡しを行う例も珍しくない。船荷証券の呈示のない引渡しのために運送品が船荷証券の正当な所持人の手元にない事態(ミスデリバリー)について、船荷証券の所持人から賠償請求を受けた運送人はどのような反論ができるだろうか。2025年9月5日のシンガポール最上級審判決[1](以下「本判決」という。)は、第一審判決の結論を維持し、この問題に関する判断枠組みの落ち着きどころを示した。本判決に至る一連の裁判例は、海事法分野の基礎的な事項に関する最近の重要な展開である。

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(かじわら・けい)

国際商事仲裁及び投資協定仲裁をはじめとする国際紛争解決を扱う。日本国内訴訟にも深く関与してきた経験をいかし、アジアその他の地域に展開する日系企業と協働して費用対効果に優れた複雑商事紛争処理に尽力する。2013年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。2019年ニューヨーク大学ロースクール修了(LL.M. in International Business Regulation, Litigation and Arbitration; Hauser Global Scholar)。Jenner & Block LLPでの勤務を経て、2021年1月から長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィスにおいて勤務開始。

 

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