SH3496 産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会、報告書「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における商標制度の在り方について」を公表 深津春乃(2021/02/19)

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産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会、報告書
「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における商標制度の在り方について」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 深 津 春 乃

 

1 はじめに

 産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会(以下「本小委員会」という。)においては、今後の商標制度がウィズコロナ/ポストコロナ時代に対応できるよう、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって顕在化した課題を中心に審議が行われていた。本小委員会は、令和3年2月4日、かかる審議内容を踏まえ、報告書「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における商標制度の在り方について」(以下「本報告書」という。)を公表し、今後の商標制度についての議論の方向性を示した。本報告書においては、以下の事項に言及されているが、これらのうち、重要と思われる①の事項について解説する。

 

① 模倣品の越境取引に関する商標法上の規制の必要性について

② 国際商標登録出願に係る手数料納付方法及び登録査定の謄本の送達方法の見直しについて

③ 特許法改正論点の商標法への波及について

 

2 現行制度の課題及び検討の背景

 模倣品の越境取引においては、国内に事業者(輸入・販売業者)が存在する場合には、当該事業者による模倣品の「輸入」が商標権の侵害となるため(商標法37条3号)、税関で、当該模倣品を商標権侵害物品と認定して、没収等することが可能である(関税法69条の11第1項9号及び2項)。

 一方、輸入等が禁じられる「商標」とは、標章(マーク)のうち、「業として」商品を販売等する者(以下「事業者」という。)が、その商品等について「使用」するものをいい(商標法2条1項1号及び2号)、事業者でない者(以下「個人」という。)の使用するマークは「標章」であって、「商標」ではないことから、国内の個人が、海外の事業者から、模倣品を購入する取引は、商標権の侵害とはならず、税関で模倣品を没収等することができない。また、海外の事業者が国内の者に模倣品を直接販売・送付する行為についても、商標権侵害が成立するかは明らかでない。

 このような国内の個人による模倣品の越境取引については、従来からも課題として認識されていたものの、規制には至っていなかった。ところが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるライフスタイルの変化により外出の機会が減少したこと等の影響により、インターネット通販による模倣品の個人使用目的の輸入が急増したため、改めて検討が行われることとなった。

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(ふかつ・はるの)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2016年京都大学法科大学院修了。2017年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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