◇SH2641◇自民党・司法制度調査会、司法システムでICT・AI技術の積極的活用を促す提言 (2019/07/02)

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自民党・司法制度調査会、司法システムでICT・AI技術の積極的活用を促す提言

――裁判手続では「実現可能なものから導入」を期待、工程表の年度内策定を検討要請――

 

 自由民主党政務調査会は6月4日、司法制度調査会(会長・上川陽子衆議院議員)が司法システムの充実・強化等の観点から行った検討の成果を司法制度調査会2019 提言「司法システムの新たな展開〜3つの視点と4つの柱〜」として取りまとめ、公表した。

 司法制度調査会では今年2月から5月にかけて計12回の会合等を開催し、司法制度関係者を始めとする有識者からのヒアリングや議論をかさねてきた。提言に示される視点とは、視点1「誰一人取り残さない社会を実現する司法制度の構築」、視点2「ICT(情報通信技術)・AI技術の積極的活用」、視点3「人間性ゆたかな多様な能力を有する『司法人材』の育成強化」の3つ。これらを踏まえ、4つの柱として(A)安全・安心な社会を支えるわが国の司法システムの充実・強化の観点から、(1)ICT × 司法制度、(2)青少年の権利と保護、(3)多文化共生社会の実現に向けた司法システムへのアクセスを中心とする幅広い取組の一層の推進、また(B)司法システムの国際展開やそのシステムを支える人的基盤の育成・強化という観点から、(4)司法外交を掲げている。

 視点2としては「司法分野におけるICTの利活用やAIの導入が全く進んでおらず、ICT先進国であるシンガポールや韓国などの後塵を拝している」現状を端的に指摘。この視点は上掲「4つの柱」のうち、直接的な効果として「司法サービス及び法務行政サービスの質の向上」を図るという上記(1)(「ICT × 司法制度」のこと。以下同様)に及んでいるばかりでなく、たとえば在留外国人が司法システムを適切に利用できるように「アクセスを支援するきめ細やかな体制を整備することが重要」と提言する上記(3)にも関わるものとなった。ここでは「わが国の司法情報の国際的な発信力強化に向けた取組」に絡み、「AI翻訳の導入」への言及もみられる。

 上記(1)を仔細にみると、個別・具体的な課題としては、①民事裁判手続におけるIT化の推進、②法務行政におけるICTの利活用の推進、③インターネット上の人権侵害への迅速かつ効果的な対応――の3点を取り上げている。

 ①では、民事裁判のIT化の現状を紹介しつつ「訴えの提起や準備書面の提出などについては、これを認める最高裁判所規則が整備されていないため、オンラインで行うことができない状況」に言及。諸外国で可能な諸手続に敷衍しながら「わが国の民事裁判はIT化という観点では諸外国に大きく遅れており、……この遅れを早急に取り戻す必要がある」と、問題意識をストレートに表現した。

 政府における民事裁判のIT化の検討、そして今年4月に設置された「民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議」(議長・内閣総理大臣補佐官)における裁判手続のIT化の検討については、それらの具体的な検討に当たり「ア ユーザー目線に立つこと」「イ IT弱者に配慮した国民に寄り添ったIT化の実現」「ウ IT化の実現に向けたインフラ整備及び財政措置」「エ IT利用のインセンティブを与えることの検討」「オ 将来ビジョン及び工程表の策定」といった5つの視点を踏まえる必要性を指摘。これらのうち、たとえば「エ」ではオンライン申立てを行う場合について、「書面での申立てを行う場合と比較して納付すべき手数料を優遇すること」「オンライン決済など多様な支払手段を認めること」も検討すべきとしている。

 また「オ」では、「未来投資戦略2018」(2018年6月15日閣議決定)に掲げられた「裁判手続等のIT化の推進」のプロセスを巡り「これに固執することなく、IT技術を用いた新たな制度については、実現可能なものから速やかに導入することが期待される」として、政府に対し、最終的なビジョンをしっかりと描いたうえでこれに向けた工程表を本年度中に策定することを検討すべきと要請した。

 上記②の「法務行政におけるICTの利活用の推進」では、(ⅰ)不動産・商業登記分野、(ⅱ)外国人の出入国手続、(ⅲ)刑事施設といった3分野を取り上げて検討。うち(ⅰ)では、これまでの取組を総括しながら「今後も、不動産登記申請における法人の印鑑証明書の添付省略を可能とするほか、登記や他の公的情報との間での相互の情報連携を推進する」ことなどを例示しつつ、ICTの利活用による取組の一層の推進、さらなる利用者の利便性向上と登記所における業務の効率化の推進の必要性を強調している。

 本提言は6月5日、法相に手交することにより申入れされたほか、11日には内閣官房長官に、また20日には首相に手交された。

 

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