◇SH1257◇経済産業省、「第3回営業秘密官民フォーラム」を開催 工藤良平(2017/06/27)

未分類

経済産業省、「第3回営業秘密官民フォーラム」を開催

岩田合同法律事務所

弁護士 工 藤 良 平

 

 経済産業省は、平成29年6月14日、「第3回営業秘密官民フォーラム」(以下「第3回会合」という)を開催し、議事次第及び配布資料の一部を公開した。

 営業秘密官民フォーラムは、平成27年1月に開催された「技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議」において、企業情報の漏えいに関する最新の手口やその対応策に関して、関係府省・産業界の実務者による情報交換を緊密に行う場として創設が決定された。議事は非公開とされているが、平成28年の第2回会合から、一部の配布資料と議事次第が経済産業省のHP上で公表されている。

 第3回会合の配布資料によれば、「営業秘密保護・活用に関する最近の動き」に関し、経済産業省から概要以下のとおりの報告が行われている。

  1. ① 平成29年の独立行政法人情報処理推進機構による企業における営業秘密管理に関する実態調査(以下「平成29年IPA調査」という)によれば、少なくとも約3割の大企業が、情報漏えい事例を検知している。
  2. ② 平成29年IPA調査によれば、営業秘密として管理する企業内のノウハウは、増加傾向にある。
  3. ③ 平成29年IPA調査及び警察庁資料によれば、平成28年に発生した標的型攻撃メールの認知件数は4,046件(平成25年は492件)と年々増加している。企業が営業秘密漏えいリスクの高まりを感じる主要な社会的動向として、「標的型攻撃メールの増加」が第1位、「スマートフォン・タブレット機器等の急速な普及」が第2位、「データの活用機会の増加」が第3位と認知されており、第4位の従業員の転職等「人」を通じた漏えいリスクよりも、IT化の進展による漏えいリスクが上位に位置づけられている。
  4. ④ 企業における営業秘密漏えいルートとして、平成24年度の調査によれば「中途退職者による漏えい」が最も多かったものの、平成29年IPA調査では漏えい事例全体に占める「中途退職者による漏えい」の割合は半減し、代わって「現職従業員等の『ミス』による漏えい」が最も多くなっている。
  5. ⑤ 警視庁調査によれば、営業秘密の侵害事犯の検挙事件数は、平成25年から平成28年にかけて3.6倍に増加している。

 また、弁護士知財ネット(https://iplaw-net.com/)は、第3回会合において、「最近の事例から見える営業秘密の管理対策のポイント」として、概要以下のとおりの報告を行っている。

  1. ① 企業における営業秘密管理の実態として、大規模企業においては対策が進捗して中途退職者による漏えい割合が減少する一方、中小規模企業においては危機意識が低く留まっており対策があまり進んでいない。
  2. ② 大規模企業の7割以上が、営業秘密漏えいの検知活動を実施している一方、中小規模企業における実施は3割以下に留まっている。
  3. ③ 企業における「スマートフォン・タブレット機器等の急速な普及」、「データの活用機会の増加」、「クラウド利用機会の増加」といった社会動向の変化に伴う営業秘密の漏洩に対する危機感が高まっている。

 今後も、日本知的財産協会が幹事、独立行政法人情報処理推進機構が事務局となり、年1~2回、営業秘密官民フォーラムの会合開催が予定されている。

 営業秘密に関する情報提供及び各種セミナーなどのイベント案内は、経済産業省HP(http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html#forum)に加え、独立行政法人情報処理推進機構のHP(https://www.ipa.go.jp/security/economics/mailmag/index.html)でも公開されている。営業秘密保護・活用に関する近時の動きについては、後記図表も参照されたい。

 第3回会合の配布資料から読み取れる近時の情報漏えいに関する傾向を踏まえると、企業としては、今後、IT・ネットワーク化やIoT (Internet of Things)の進展に伴い、電子データの形式で社内に保存されている営業秘密が、標的型攻撃メールを意図せず開封してしまうなど従業員の「ミス」によって漏えいしてしまうといった可能性を見据えた情報漏えい防止のための措置を進めていく必要があろう。

以 上

 

【参考】「営業秘密保護・活用に関する最近の動き」

 (経済産業省HP http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/170614meti.pdfより転載)

 

タイトルとURLをコピーしました