SH3800 法務省、法制審議会担保法制部会(第7回)会議 部会資料公表 足立理(2021/10/22)

取引法務担保・保証・債権回収

法務省、法制審議会担保法制部会(第7回)会議 部会資料公表

岩田合同法律事務所

弁護士 足 立   理

 

1 はじめに

 法務省において、令和3年4月より、法制審議会担保法制部会(以下「本部会」という。)が定期的に開催されている。本部会においては、動産、債権等を対象とする担保法制について調査審議が行われているところ、同年9月28日には7回目の会議が開催された。同会議の開催に際して公表された部会資料「担保法制の見直しに向けた検討⑹」[1](以下「本部会資料」という。)において、法改正により担保取引に関する新たな規定(以下「新たな規定」という。)を設けることを前提に、新たな規定に基づく担保権の私的実行[2]に当たって、私的実行をする担保権者(以下「実行担保権者」という。)又は設定者が他の担保権者との関係で行うべき手続の在り方について分析がなされているので、紹介する。

 

2 実行担保権者又は設定者は他の担保権者との関係で私的実行について通知等を行うべきか

 G1は、食品メーカーであるSに1000万円を貸し付けるに当たり、貸金返還請求権の担保のため、Sが所有し、工場内に保管する機械設備甲に第1位の譲渡担保を設定し、対抗要件を備えた。G2は、同様に、Sに500万円を貸し付けるに当たり、貸金返還請求権の担保のため、甲に第2位の譲渡担保[3]を設定し、対抗要件を備えた。

 G1は、Sが弁済期になっても貸金を返済しないので、甲について譲渡担保の私的実行を行うことを企図している。

 

⑴ 新たな規定によるルールの明確化

 動産、債権等を対象とする譲渡担保等の担保取引については、「明文の規定を設け、これらに関する法律関係の明確化や安定性の確保等を図る……必要がある」と指摘されている[4]。本部会においても、新たな規定による担保取引のルールの明確化が志向されており、本部会資料では、その一環として、上記事例(以下「本事例」という。)のようなケースにつき、新たな規定に係る担保権の私的実行において、劣後担保権者が権利行使をする機会[5]をどのように確保するかに関し、検討がなされている。

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(あだち・まこと)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年東京大学法学部卒業。2016年東京大学法科大学院修了。2017年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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