◇SH1259◇船井電機、監査等委員である取締役候補者の辞退及び株主による修正動議を公表 伊藤広樹(2017/06/28)

未分類

船井電機、監査等委員である取締役候補者の辞退及び株主による修正動議を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 伊 藤 広 樹

 

 船井電機株式会社(以下「当社」という。)は、本年6月20日、同月28日開催予定の定時株主総会(以下「本総会」という。)において上程している第2号議案「監査等委員である取締役3名選任の件」(以下「本議案」という。)に関して、①監査等委員である取締役候補者の1名がその就任を辞退した旨(かかる辞退をした候補者を、以下「辞退候補者」という。)とともに、②当該辞退を受けて、当社の大株主から、本総会において、本議案に関して、辞退候補者に代えて新たな監査等委員である取締役候補者を提案する旨の修正動議を提出するとの連絡があった旨を公表した。

 当職の経験上も、本件のようにやむを得ない事由により株主総会直前のタイミングで役員候補者を取り下げる(議案の撤回)、又は差し替える(議案の変更)べき事態が発生することも間々あることから、以下では、本件を題材に、株主総会直前のタイミングにおける議案の撤回・変更の方法について、その概要を解説する。

 

1.  議案の撤回

 株主総会直前のタイミングで、役員候補者が死亡した場合や健康上の理由等により就任を固辞した場合、会社としては、当該候補者の選任議案の撤回について検討する必要がある。

 なお、当社では、本総会の終結時をもって監査等委員である取締役3名全員が改選期を迎えるところ、監査等委員会設置会社では3名以上の監査等委員である取締役を選任する必要がある(会社法331条6項)ため、本総会で新たに3名の監査等委員である取締役を選任する必要がある。したがって、当社では、単に辞退候補者の選任議案を撤回するのみでは足りず(法令上の員数を充たさなくなる)、新たな候補者と差し替える(議案を変更する)必要があったものと考えられる。

 議案の撤回の方法としては、一般的に、①議案の撤回について取締役会決議を経た上で、株主総会において議長が撤回を宣言する方法と、②株主総会において、議長が議案の撤回の動議を提出し、これを議場に諮り普通決議を得る方法とが挙げられるが、実務的には、上記①の方法を採用することが多い。これは、議案を撤回する以上、当該議案に関する決議取消しの問題は生じないとの判断から、より簡易な手続を志向するものであると言える。

 なお、株主総会直前に議案を撤回する場合には、これを決議するための取締役会を招集する余裕がないことが多いため、株主総会当日、株主総会開催の直前に役員控室で臨時取締役会を開催することもある(多くの役員が揃っているため、都合が良いと言える)。

 

2.  議案の変更

 株主総会直前のタイミングにおける議案の変更については、実務上、本件のように株主総会当日の修正動議により対応することが多い。

 この点に関して、このような修正動議を会社側から提出するのか、或いは、株主側から提出してもらうのかが問題となるが、法令上、会社提案議案については事前に株主総会参考書類の作成が必要とされていることとの関係で、株主総会当日に会社側から修正動議を提出することには否定的な見解も示されていることから、実務的には、本件のように株主側から修正動議を提出してもらうことが多い。

 したがって、このような場合には会社に友好的な株主との間で綿密な連携が必要であると言える。

 また、(会社側からであると、株主側からであるとを問わず)株主総会当日に修正動議を提出する場合には、提出済みの議決権行使書の取扱いにも留意が必要である。即ち、会社提案議案に「賛成」している議決権行使書は、修正動議については「反対」として取り扱われるべきものであるため、修正動議を可決させるためには、(既に議決権行使書を提出した)大株主との間で議決権行使に関する対応(株主総会に出席してもらう、委任状を取り付ける等)を事前に協議しておくことが肝要である。

 加えて、本件のプレスリリースのように、広く株主から修正動議に対する「賛成」を集めるべく株主総会への出席を促すことは、実務上参考になる丁寧な対応であると言えよう。

 

議案の撤回・変更の方法
  1.  •  議案の撤回
    → 取締役会決議を経た上で、株主総会において議長が撤回を宣言する方法が一般的。
    → 株主総会当日、株主総会開催の直前に役員控室で臨時取締役会を開催することもある。
  2.  •  議案の変更
    → 株主総会当日、株主側から修正動議を出してもらうことにより対応することが多い。
    → 提出済みの議決権行使書の取扱いに留意が必要。

 

以 上

タイトルとURLをコピーしました