乾汽船が株主招集の臨時総会を巡り開催禁止仮処分申立て後に和解、
買収防衛策廃止提案は否決
――東京地裁における和解により懸念が払拭、6カ条の和解公表を経て開催――
乾汽船(本社:東京都中央区、東証市場第一部上場)は4月24日、株主が招集する5月7日開催予定の臨時株主総会を巡って東京地方裁判所に株主総会開催禁止の仮処分命令を申し立てたと発表し、同月30日、28日に和解が成立したと表明した。5月7日、本臨時総会開催後の19時15分に同社が適時開示したところによれば、唯一の議案であった株主提案「乾汽船株式会社の令和元年6月21日開催の定時株主総会で導入が決議された『乾汽船株式会社の株式の大規模買付行為等への対応策(買収防衛策)』の廃止の件」は否決されている。
同社が今年3月6日付ニュースリリース「株主による株主総会の招集許可申立てに係る許可決定に関するお知らせ」等で発表しているように、株主であるアルファレオホールディングス合同会社(本社:東京都千代田区、以下「アルファレオ社」という)との間には乾汽船の昨年6月21日開催・同社第99回定時総会の決議に絡んですでに昨年中複数回のやりとりがあり、今般招集の臨時総会は、同様に株主招集による昨年11月4日開催の臨時総会で目的事項として取り上げられなかった議案を巡るもの。アルファレオ社は昨年10月11日、上記・買収防衛策の廃止を目的事項とする株主総会の招集許可を求める申立てを行っており(昨年10月23日付乾汽船リリース参照)、今年3月6日付のリリースはこの申立てに対して東京地裁が許可決定を行った決定書を同社が同日受領したとするもので、「決定を受け、真摯に対応してまいる所存でございます」とコメントしていた。
その後、本臨時総会の開催については基準日・開催日の変更を経て3月17日、当初「令和2年4月17日までの日」とされていた総会の会日に関する東京地裁の決定が「令和2年5月7日までの日」とされた変更決定書を東京地裁から受領した旨、同社が発表。追って3月24日、同社は3月23日付で東京地裁に株主総会検査役の選任申立てを行ったと発表し(4月8日付決定書により選任の旨を4月9日発表)、4月17日には買収防衛策廃止の株主提案につき取締役会として反対意見を決議、これを発表した(改めて4月27日、株主側の4月21日付招集通知を受け、取締役会の反対意見を表明)。
4月24日の株主総会開催禁止仮処分申立ては、このような経過をたどるなかで同社監査役によりなされたもので、本臨時総会において(A)出席議決権に算入すべき議決権代理行使の委任状による議決権が算入されない蓋然性が高いこと、(B)株主の議場への入場制限により株主の直接の議決権行使等が制限される予定であることを理由として「招集株主が行おうとしている決議方法には法令違反又は著しい不公正があり、かつ、それにより当社に著しい損害が生ずるおそれがある」と主張していた。
4月28日付で成立した和解は(a)招集株主において同社が本臨時総会に関する議決権の代理行使の勧誘を行った結果として取得した委任状を無効と判断しないこと、(b)招集株主が当該委任状を持参した株主の議場への入場を認めることを招集株主に誓約させるなどの点で「当社監査役の……懸念が払しょくされる内容であった」とされるもので、ほか、同社が「本総会の議長を本招集株主が選定した者が務めることを認め、本総会の議長が適法かつ適切に本総会の議事を運営する限り、本件株主(編注・同社選定の株主1名)をして、本総会において議長の不信任動議又は議長交代を求める動議を提出させず、本件株主以外の出席株主による議長の不信任動議又は議長交代を求める動議について賛成させない」旨も和解の内容とされた。4月30日付同社リリースでは、別紙として「和解調書記載の内容を原文のまま記載」しているとする和解条項を併せて公表しており、適宜参考とされたい。