◇SH2200◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(119)雪印乳業㈱グループの事件を組織論的に考察する㉙岩倉秀雄(2018/11/20)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(119)

―雪印乳業(株)グループの事件を組織論的に考察する㉙―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、事件発覚後の経緯と当局の捜査について述べた。

 雪印食品(株)は、農水省の5項目の指示・通達を受け、生肉事業からの撤退社長及び担当専務の辞任、岩瀬弘士郎を社長とする新体制を発表した。

 また、社内調査や農水省及び保健所の事情聴取により、オーストラリア産牛肉詰め替え以外にも、シールの偽造、日本ハム・ソーセージ工業協同組合への水増し請求、牛肉・豚肉の産地偽装等、の不正行為が明らかになった。

 警視庁、兵庫県警、埼玉県警は合同捜査本部を設置農水省が関西ミートセンター長を詐欺容疑で兵庫県警に刑事告発したことを受け、合同捜査本部は、本社や全国十数か所に詐欺容疑で家宅捜査を行い、更に両罰規定のある食品衛生法違反の疑いでも捜査する方針を発表した。

 今回は、親会社の雪印乳業(株)への影響と会社の解散について考察する。

 

【雪印乳業(株)グループの事件を組織論的に考察する㉙:親会社への影響と会社の解散】
(『雪印乳業史 第7巻』431頁~433頁より)

1. 雪印乳業(株)への影響

 雪印食品(株)の不祥事は、再建計画を強化し、2002年度黒字化を目指していた雪印乳業(株)に決定的なダメージを与えた。

 食中毒事件により、牛乳、乳製品の売上げが回復しない中で、雪印乳業(株)は、子会社の管理責任を問われ、社会的信用を失い雪印乳業(株)の存在価値そのものを問われることになった。

 同社の株価は大幅に下落、一時は上場以来最安値の100円を割り込み、新たな再建計画の策定を急がなければならなくなった。(別途後述する)

 雪印乳業(株)の西社長は、2002年2月5日、本社で記者会見を行い、「市乳事業の分社化を前倒しし、農協や生産者からの出資を求める方向で最終調整に入る」、「雪印乳業本体は経営資源をより付加価値の高い乳製品事業に集中し収益構造の改善を図る」、「2度にわたる不祥事で消費者に対する信頼回復が厳しくなっていることから、資本増強や提携で財務体質を強化するとともに企業イメージの刷新を目指す」、「3月末までに具体的な再建策を公表する」とした。

 雪印食品の存続については、2月上旬の同社の再建策を見て検討するとした。

 

2. 会社再建断念と会社解散

 しかし、その後も雪印食品(株)の売上は回復せず、全国4ヵ所のハム・ソーセージ工場(北海道早来町の北海道工場、埼玉県春日部市の関東工場、兵庫県宝塚市の宝塚工場、岩手県花巻市の東北雪印食品(株))の操業度は急激に低下、稼働率はいずれの工場も1割~2割に落ち込んだ。

 このため同社は2月5日、3月10日付けでパート従業員や嘱託約1,000人に対して解雇を通告した。

 そして、同社は、2月22日開催の臨時取締役会で、会社再建を断念し4月末を目途に会社を解散することを決議した。 

 生肉事業からの撤退、パート従業員などの契約打ち切り、社長以下管理職の給与カット等を決めるなど経営再建を模索していたが、売上高の激減や信用失墜のダメージが大きく、業績回復の見通しが立たないとの判断によるものだった。

 当日、雪印食品(株)新社長の岩瀬弘士郎は、東京都内で記者会見を行ない、会社の解散を発表、雪印乳業(株)の副社長も同席した。

 解散に伴なう損失額は240億円で、雪印乳業(株)が250億円を上限に債務を肩代わりし、従業員約950人の雇用確保や営業譲渡先の確保に全力を上げるとした。 

 同社は4月26日に臨時株主総会を開催し会社解散を決定、30日に解散した。

 

3. 牛肉偽装事件関与の元幹部社員らの刑事裁判 

 牛肉偽装事件により、雪印食品㈱の元ミート営業調達部長、元関西ミートセンター長ら元幹部社員5名が2002年5月10日に、元専務と元常務が5月18日にそれぞれ詐欺容疑で逮捕された。

 元幹部社員5名は5月30日に、元専務と元常務は6月8日にそれぞれ詐欺罪で起訴され、11月22日、元幹部社員5名に対し、神戸地裁は執行猶予付き有罪判決(懲役2年執行猶予3年)を言い渡した。一方、元専務と元常務に対しては、2004年7月13日「部下の供述以外に共謀を裏付ける証拠はない」として無罪判決が言い渡された。

 また、法人としての雪印食品(株)が食品衛生法違反と不正競争防止法違反で書類送検されたが、起訴猶予処分となった。

 

4. 元株主による株主代表訴訟

 2003年2月10日、雪印食品(株)の元株主が、清算中の同社元役員13名に対して「牛肉偽装事件で経営判断を誤り、会社を営業不能に陥らせた」、「不祥事を防止する注意を怠った」として、300億円の賠償を求める株主代表訴訟を提起したが、2005年2月10日、東京地裁は「元役員らが、元社員による牛肉偽装工作を把握していたとは言えない」として、請求を棄却した。

 また、別の元株主から解散による株価下落を理由とする総額1億2,000万円余の損害賠償請求について、2005年1月18日、東京高等裁判所より請求を棄却する判決があり、上告なく判決が確定した。(2005年2月2日)

 

5. 雪印食品一般労組による地位保全等仮処分申し立て

 2002年2月5日、雪印食品のパート社員・嘱託・アルバイト約1,000人の3月10日付け解雇発表に対し、雪印食品一般労働組合は、解雇の撤回を申し入れ、さいたま地裁に従業員地位保全仮処分の申し立てを行なった。

 雪印食品(株)の解散後は、雪印乳業(株)に組合員の雇用を要求し、雪印乳業(株)との団交応諾を求め、地労委に不当労働行為の申し立てを行なった。

 2002年6月24日、さいたま地裁で中間和解が成立したが、組合側は雪印乳業(株)が提案する再就職支援先については了解せず、その後も、雪印乳業(株)東京本社前で抗議行動や株主総会での不規則発言がしばしば行なわれた。

 その後、協議を重ね、2004年9月に和解が成立した。

 次回からは、雪印食品牛肉偽装事件後の雪印乳業(株)の経営再建策について考察する。

 

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