◇SH1776◇債権法改正後の民法の未来21 役務提供契約(1) 橋田 浩/宇仁美咲(2018/04/17)

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債権法改正後の民法の未来 21
役務提供契約(1)

橋田法律事務所/岡本正治法律事務所

弁護士 橋 田   浩/弁護士 宇 仁 美 咲

1 提案内容

 役務提供型契約に属する典型契約の見直し及び受皿規定創設の要否が検討されましたが、見送られました。

(1) 提案

 部会資料17-1、2の「第1 役務提供型の典型契約(雇用、請負、委任、寄託)総論」、「第3 委任、6準委任(民法652条)」及び「第4 準委任に代わる役務提供型契約の受皿規定」において、役務提供型契約に属する典型契約の見直し及び受皿規定の要否を検討する提案がなされました。編成については、役務提供型契約の総則的なものを創設するのか、それとも既存の典型契約に該当しないものに適用されるべき受皿規定を創設するのかという点は未だ具体的な形での提案にまでは至っていませんでした。

(2) 規定に盛り込むべき内容

 「第4 準委任に代わる役務提供型契約の受皿規定」(部会資料17-1、2)では、規定に盛り込むべきか否か検討するものとして以下のものが挙げられました。

  1. ① 役務提供者の義務
  2.    役務提供者の義務として、結果債務と手段債務とで異なる義務を負担するような規律を設けるか否か。
     
  3. ② 役務受領者の義務
  4.    役務受領者の義務として、契約の性質によって必要な場合には、役務受領者に契約目的の達成に向けて必要な協力をする義務があることを規定するか否か。
     
  5. ③ 報酬
  6.    報酬の支払い方式、支払時期、役務提供の履行が不可能な場合の報酬請求権に関する規律を設けるか否か。
     
  7. ④ 任意解除権
  8.    任意解除権に関する規律の要否及び任意解除権が行使された場合に役務提供者の損害を填補するための損害賠償請求権の要件及び範囲についての規律を設けるか否か。

(3) 特殊の委任(媒介契約、取次契約)

 「第3 委任、6特殊の準委任(民法652条)、7特殊の委任」(部会資料17-1、2)では、準委任の概念を第三者との間で法律行為でない事務を行うことを目的とするものに限定し、特殊の委任として、これまで民法典には規定がなかった媒介契約を特殊の委任として、定義や情報提供義務、報酬支払方式について民法典に規定を設けることが提案されましたが見送られました。

 

2 提案の背景(立法事実)

(1) 役務提供契約

 現代社会においては、民法典が想定しておらず既存の典型契約のいずれかに性質決定することが困難な種々の役務提供型契約が広く行われています。

 現在の解釈では、これらの役務提供型契約で典型契約に該当しないものについては準委任が広く受皿になっていますが、準委任には委任に関する規定が準用されることに照らすと、役務(サービス)の提供者側も任意解除権を有することになり、現実に行われている各種サービス提供契約には必ずしも適合しません。

 さらに、現実に行われている各種サービス提供契約は、物とは結び付かない仕事の完成を内容とするものが多いことから、目的物の瑕疵に関する規律等請負契約に関する規定の多くは適用されませんから請負に包摂することも困難です。

 そこで、これら種々の役務提供型契約が存在することに鑑み、準委任とは別に、典型契約に該当しない役務提供型契約に適用されるべき規定として妥当な内容を有する規範群を設けることが提案されました。

(2) 特殊の委任

 媒介に関しては、商法27条以下、会社法16条以下に媒介代理商の規定が、商法543条以下には商事仲立についての規定があるものの、媒介について一般的な定義や効果について定めた規定がありません。民事仲立の実際上の例として非商人間の不動産取引の媒介などが世上多く行われていることに鑑み、媒介契約に関する規定を民法典に設けることが提案されました。

 

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