◇SH2105◇金融庁、銀行によるマッチング業務の「その他の付随業務」の該当性に係る解釈を明確化 冨田雄介(2018/09/26)

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金融庁、銀行によるマッチング業務の「その他の付随業務」の該当性に係る解釈を明確化

岩田合同法律事務所

弁護士 冨 田 雄 介

 

 金融庁は、本年9月14日、産業競争力強化法が定める「グレーゾーン解消制度」(事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合にあらかじめ規制の適用関係について、事業所管省庁を通じ、規制所管省庁に確認を求める制度)に基づく照会に対し回答を公表した。照会内容は、提携先金融機関が顧客である土地所有者及び太陽光発電事業を希望する事業者を紹介し、ビジネスマッチング手数料を収受することが銀行法第10条第2項の「その他の付随業務」に該当するかというものであった。これに対する金融庁の回答は、①当該事業者及び当該事業者へ紹介する顧客が提携先金融機関の「取引先企業」である場合、提携先金融機関の営む業務はビジネスマッチング業務と考えられるから、「その他の付随業務」として取り扱うことが可能である(以下「回答①」という。)、②提携先金融機関が紹介する顧客が「取引先企業」ではない場合(例えば、個人事業主ではない個人を紹介する場合)であっても、提携先金融機関において、銀行法第12条において他業が禁止されていることに留意し、以下の(a)ないし(d)の観点を総合的に考慮した上であれば、「その他の付随業務」として取り扱うことも可能である(以下「回答②」という。)というものであった。

 

【回答②のケースにおいて考慮される観点】

  1. (a) 当該業務が銀行法第10条第1項各号及び第2項各号に掲げる業務に準ずるか。
  2. (b) 当該業務の規模が、その業務が付随する固有業務の規模に比して過大なものとなっていないか。
  3. (c) 当該業務について、銀行業務との機能的な親近性やリスクの同質性が認められるか。
  4. (d) 銀行が固有業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力の活用に資するか。

 

 銀行法上、銀行が銀行業以外の業務を営むことによる異種リスクの混入の阻止、銀行業務に専念することによる効率性の発揮、利益相反取引の防止等のため、銀行に対しては他業禁止規制が課されており(銀行法第12条)、銀行は、原則として、固有業務(銀行法第10条第1項)、付随業務(同条第2項)及び他業証券業務等(銀行法第11条)以外の業務を営むことができない。

 したがって、銀行が銀行法上明示的に掲げられていない業務を行うに当たっては、当該業務が付随業務として定められる「その他の付随業務」(銀行法第10条第2項)に該当するか否かが問題となる。

 この点、「その他の付随業務」については、金融庁の「主要行等向けの総合的な監督指針」Ⅴ-3-2及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」Ⅲ-4-2(以下「監督指針」と総称する。)において解釈が示されており、特に銀行が従来から固有業務と一体となって実施することを認められてきたビジネスマッチング業務については、取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化の観点から、固有業務と切り離してこれらの業務を行う場合も「その他の付随業務」に該当するとの解釈が示されていた。今般の金融庁の回答①は、かかる解釈に沿ったものといえる。

 もっとも、一般的にはビジネスマッチングとは企業と企業を対象としたマッチングを指すと考えられるため、従前、銀行が個人事業主ではない個人顧客を企業に紹介するマッチング業務が「その他の付随業務」に該当するか否かについては必ずしも明確ではなかった。今般の金融庁の回答②は、かかるマッチング業務も「その他の付随業務」に該当し得ることが明らかにされたという点で実務上意義を有する。なお、回答②で示された(a)ないし(d)の観点は、「その他の付随業務」一般について監督指針で示されている観点である。

 現在、多くの銀行において、マイナス金利政策の影響を受けて手数料ビジネスの開拓が進められているところであり、今般の金融庁の回答によって、個人事業主ではない個人顧客を企業に紹介するマッチング業務の銀行法上の取扱いが明確化されたことから、かかるマッチングビジネスがさらに促進されることになると思われる。

 そして、銀行によるマッチング業務の拡充は、個人事業者に限らず、様々な業種の事業者に対しても、ビジネスチャンス創出の観点から好影響を与え得るものと思われる。

 

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