◇SH2638◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第43回) 齋藤憲道(2019/07/01)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

2.生産・調達

(4) 品質管理

 商品の「品質」は、企業が顧客・消費者から信頼を得るための最も重要な要素である。

 このため、第2次世界大戦後から多くの日本企業が商品の品質向上を目的として、方針管理・日常管理・小集団活動・社員教育等に取り組んできた。

 商品の品質の大部分は、製造の前段階の「設計」で決まるが、「品質管理課」等の組織を工場内に設置する例も多い。工場内の品質管理組織には、工程不良の低減、規格外品を工場の外に出荷させない「最後の番人」、そして、市場で発生した品質問題・製品事故への対応(営業と連携して行う)等の役割が求められる。

 しかし、生産量と利益を追求する製造部門において「不良品(些細な規格外れを含む)」の出荷を全て中止し(場合によっては廃棄する)、あるいは、市場における品質問題や製品事故が「自社の製品が原因」である旨を表明すること等は期待できないとする指摘も多い。

 そこで、JIS認証製品を生産する事業場や、厳しい安全管理が必要な医薬品事業については、法令で、品質管理部門を製造部門から独立させ、製品品質を確保するための強い権限を与えている。

  1. 例1 日本工業規格への適合性の認証に関する省令[1]
  2. ・ 製造業者等は、JIS認証の鉱工業品の製造(又は加工)部門とは独立した権限を有する品質管理責任者を選任し、次の職務を行わせる(一部を抜粋)。
  3.   社内標準化・品質管理に関する計画の立案・推進
    工程に生じた異常・苦情等に関する処置、その対策に関する指導・助言
    JIS認証の鉱工業品の日本工業規格への適合性の承認
    JIS認証の鉱工業品の出荷の承認
     
  4. 例2 GMP省令(厚生労働省)[2]は、品質部門に大きな責任と権限を与えている。
  5. ・ 製造業者等は、製造所毎に、製造管理者の下に製造部門と品質部門を置かなければならない。(4条1項)
  6.   品質部門は、製造部門から独立していなければならない。(4条2項)
  7. ・ 製造業者等は、品質部門に、手順書等に基づき、製造管理・品質管理の結果を適切に評価し、製品の製造所からの出荷の可否を決定する業務を行わせなければならない。(12条1項)
  8.   製造業者等は、12条1項の決定が適正に行われるまで製造所から製品を出荷してはならない。(12条4項)

(5) 第三者認証機関が「工場の品質管理水準」を評価する方法に学ぶ
      内部監査・監査役の業務監査の参考になる

 第三者認証機関が基準・規格の適合審査を行う際の「工場の品質管理水準」の評価は、概ね、(1)製造ラインの実態(絶対的水準と他社との相対的水準)及び(2)社内規程の整備・運用の実態をそれぞれ確認し、(1)と(2)を総合して行われる。

 具体的な確認事項を、次の(ⅰ)~(ⅶ)に示す。

 この評価方法は、内部監査部門や監査役が行う「業務監査」の参考になろう。

  1. 〔具体的な確認事項〕
  2. (ⅰ)組織、情報(文書、電子情報、計測データ等)に係る社内規程の整備とその運用
  3. (ⅱ)商品の使用者・取扱い業者(取引先・流通業者等)の苦情に係る社内規程の整備とその運用
  4. (ⅲ)資材、製造工程、設備・計測器に係る社内規程の整備とその運用
  5. (ⅳ)社外の基準・規格への適合性検査に係る社内規程の整備とその運用
  6. (ⅴ)上記(ⅰ)~(ⅳ)の内容の変更の管理(対応を含む)体制と変更手順
  7. (ⅵ)工程の実態(市場ニーズへの対応力、歩留り、品質水準の変動、他社との競争力等)
     (注) 製品に懸念事項がある場合は、それについて重点的に他社比較することがある。
  8. (ⅶ)申請者が指定する基準・規格への適合性検査の状況


[1] 「平成17年3月30日 厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省 令第6号」2条1項5号ロ(1) 

[2] 「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」の通称。GMPは、Good Manufacturing Practice(製造管理及び品質管理の基準)の略称。

 

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