◇SH1390◇ソフトバンク、不当景品類及び不当表示防止法に違反したとして消費者庁から措置命令 齋藤弘樹(2017/09/13)

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ソフトバンク、不当景品類及び不当表示防止法に違反したとして
消費者庁から措置命令

岩田合同法律事務所

弁護士 齋 藤 弘 樹

 

1 事案の概要

 ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」という。)は、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)に違反したとして、消費者庁から平成29年7月27日付で措置命令(以下「本件措置命令」という。)を受けた。ソフトバンクは自社ウェブサイト上で、ソフトバンクショップにおいて期間限定でApple Watchを定価より安く販売する旨の表示をしたが、実際にはソフトバンクショップにおいてApple Watchを準備していない場合があった。このことが「おとり広告に関する表示」の禁止に抵触するものとして景表法違反とされ、本件措置命令を受けることになったものである。

 

2 おとり広告に関する表示の禁止の解説

 景表法5条は、事業者が自己の供給する商品や役務の取引について、一般消費者に対して不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示(以下「不当な表示」という。)を行うことを禁止しており、禁止される不当な表示の類型は下図(消費者庁の公表資料より引用)のとおりである。

 本件は景表法5条3号に基づく告示である「おとり広告に関する表示」(平成5年4月28日公正取引委員会告示第17号。以下「本件告示」という。)1号に該当する違反であり、近年、同じように本件告示1号に該当するとして措置命令が出された事例として東京ガスライフバル文京株式会社及び東京ガスイズミエナジー株式会社に対する措置命令(平成29年7月11日付)、株式会社きむらに対する措置命令(平成26年1月21日付)等がある。

 おとり広告に関する表示について違反があるとされるのは、①取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができないのに広告やビラで宣伝している場合(本件告示1号)、②供給量が著しく限定されているにもかかわらず広告やビラにその限定の内容が明瞭に記載されていない場合(本件告示2号)、③供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらずその限定の内容が広告やビラに明瞭に記載されていない場合(本件告示3号)、④実際には取引する意思がないのに広告やビラで宣伝している場合(本件告示4号)である。

 おとり広告に関する表示について違反があった場合、事業者は景表法7条1項に従い措置命令を受けることになるが、措置命令の内容として、違反の事実を一般消費者に対して周知徹底することを命じられる場合があり(本件及び前述の同種事例では、いずれも命じられている。)、再発防止策の策定等といった事業者内部での行為を命じられるだけにとどまらない場合がある。このような場合、事業者にとって、消費者に対する周知徹底に伴うレピュテーションリスクは小さくないので、注意が必要である。一方、優良誤認表示(景表法5条1号)や有利誤認表示(景表法5条2項)と異なり、平成28年に導入された課徴金制度の対象となることはない。

 

3 事業者に求められる対応

 上記本件告示2号及び3号所定の行為類型のように、広告やビラの記載に不備があり結果的に不明瞭になってしまった場合でも違反があるとされるので、事業者は広告やビラを用いて宣伝を行う場合には記載漏れ等に注意が必要である。中でも消費者に対する影響という観点から見れば、通常よりも廉価で取引する旨記載した商品や役務について広告やビラで宣伝を行う場合に一層の注意が必要であろう。消費者庁が定める「おとり広告に関する表示」等の運用基準においても、おとり広告に関する表示のうち、通常よりも廉価で取引する旨記載したものについて、重点的に取り締まりを行う旨述べられている(「おとり広告に関する表示」等の運用基準第1.2.①)。

以 上

 

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