◇SH3380◇「ポストコロナ時代を見据えたダイバーシティ&インクルージョン推進」に関する調査結果が発表される――経団連企業会員273社における新たな制度整備、女性活躍の具体的取組みなど明らかに(2020/11/11)

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「ポストコロナ時代を見据えたダイバーシティ&インクルージョン推進」に関する調査結果が発表される

――経団連企業会員273社における新たな制度整備、女性活躍の具体的取組みなど明らかに――

 

 日本経済団体連合会は10月29日、「ポストコロナ時代を見据えたダイバーシティ&インクルージョン推進」に関するアンケート結果を発表した。

 経団連企業会員1,444社を対象として今年8月24日~9月18日の間に「ポストコロナ時代を見据えたダイバーシティ&インクルージョン推進に関する考えや取り組みの把握」を目的としてアンケート調査を行い、273社から回答を得た(回答率18.9%)。アンケートの内容は「Ⅰ.D&I推進が経営にもたらす影響」「Ⅱ.D&I推進に向けた取り組み」「Ⅲ.女性活躍推進」の3部構成となっており、上記Ⅱでは「ダイバーシティ&インクルージョン」(以下「D&I」という)推進の観点から「特に効果的な施策」について事例を紹介するとともに、「コロナ禍前後の労働環境」として「活用が進んだ制度・習慣」「新たに整備された制度・習慣」を整理。上記Ⅲでは「女性管理職を増やすための取り組み例」「女性役員を増やすための取り組み例」を具体的に取り上げた。公表資料はパワーポイント様式で表紙を含めて21シートとコンパクトに取りまとめられている。

 調査結果の仔細をみると、上記「Ⅰ.D&I推進が経営にもたらす影響」として、まず「(経営層が)期待する経営効果」を調べる調査では、回答の多い順に「優秀な人材の維持・獲得」(回答社数121社、以下同様)、「プロダクト・イノベーション」(102社)、「事業環境変化に対する感応度、危機対応力の向上」(88社)であることが判明した(最大3つまでの複数回答可)。「実感した経営効果」については事例紹介の形式が採られ、「優秀な人材の維持・獲得」関係では「経験を積んだ役職定年前後の高度技術者の中途採用の応募が見られるようになった」(情報通信)など、計3社の回答が紹介されている。

 「Ⅱ.D&I推進に向けた取り組み」によると、「社内で取り組みを進める施策」として回答が顕著に多かった5項目は(1)多様な社員が働きやすい労働環境を整備(249社)、(2)中期経営計画等、 経営戦略を示す際にD&I推進を明記(174社)、(3)D&I推進目的を社員に理解させるため、研修などを実施(172社)、(4)KPIやロードマップの設置(167社)、(5)D&I推進を目的とする組織の設置(162社)であった(複数回答可)。うち上記(1)に関して具体的な「特に効果的な施策」は、事例として、「イクメン休業」制度(土木・建築)、テレワークの拡充とスーパーフレックス制度の有効活用の浸透(化学・医薬品・食品)、在宅勤務制度利用を促進(土木・建築)、障がいのある社員が働く農園を2か所開設(サービス)が挙げられた。

 同じく上記Ⅱの調査結果から「コロナ禍前後の労働環境」をみると、まず①活用が進んだ制度・習慣について「以前からあったが、 感染症の影響で活用が進んだ」制度・習慣とし、リモート勤務制度(180社)、フレックスタイム制度(122社)、時差出勤制度(116社)、社員間での仕事内容・量の十分な把握(66社)、社員間での円滑なコミュニケーション(57社)、法定以外の様々な有給休暇制度(44社)、男女の区別ない休暇や両立支援制度の取得(36社)などが寄せられた。

 一方、コロナ禍を機として②(感染症拡大後に取り入れた)新たに整備された制度・習慣とし、リモート勤務制度(89社)、時差出勤制度(36社)、法定以外の様々な有給休暇制度(19社)、社員間での仕事内容・量の十分な把握(15社)、フレックスタイム制度(12社)、社員間での円滑なコミュニケーション(11社)が挙がっている。

 なお、回答の選択肢中「兼業・副業の届出制度」については、上記①の観点から「新型コロナウイルス感染症拡大前から取り入れていた企業」は84社、うち「以前からあったが、 感染症の影響で活用が進んだ企業」は6社、上記②の観点から「感染症拡大後に取り入れた企業」は4社となっており、今般の回答会社においては積極的な取組みとなっていないことが判明した。

 上記Ⅲより「女性管理職を増やすための取り組み例」を問う調査結果をみると、事例として(a)研修、(b)ロールモデルとの交流、(c)採用、(d)計画的な登用、(e)人事評価制度、(f)福利厚生制度が紹介されている。上記(a)では「『前倒しのキャリア形成』という考え方で、女性とリーダーの双方へ研修・OJTを実施」(化学・医薬品・食品)、「経営職階に昇格した女性に対して、マネジメントに必要とされる大局観及びスキルを習得する研修機会を提供」(金融)といった施策を取り上げるほか、(b)では「20代後半の結婚や出産といったライフイベントを迎える時期に役員や先輩社員による講話やキャリア研修を取り入れる」といった交流方法を掲げた。

 「女性役員を増やすための取り組み例」については、(α)ロールモデルとの交流、(β)研修、(γ)メンタリング・コーチング、(δ)人事ローテーション、(ε)経営者によるコミットメント――の順に、これらの事例を紹介。たとえば、(γ)では「スポンサーシッププログラム制度を通じて、担当役員が将来部長職以上への昇進・活用を加速したい女性人材を直接コーチング・育成。管理職における女性比率の増加をもたらした」(化学・医薬品・食品)例、「対象を、連結子会社社長・管理職・課長補佐の階層に分けたメンター制度」により「メンター・メンティ合同説明会にて、それぞれの心構えなどを解説した後、3回程度メンタリングを実施し、都度人事にレポートを提出」するなどのプログラムを通じ、結果として「参加したメンティから執行役員を輩出」(運輸・倉庫)した例が挙げられる。また、上記(δ)の関係では「女性部長層に対し、関連事業会社の非常勤取締役登用等により、成長機会の提供と更なる飛躍を後押し」(金融)する例が紹介された。

 経団連では、本調査結果を踏まえて「コロナ以前から柔軟な働き方をはじめD&I推進に取り組む企業は、今回のコロナ禍においてもBCP対応がスムーズであったとのコメントが多数寄せられ、D&I推進と企業の危機対応力には一定の相関関係が見られる」「各社において『何のためのD&Iなのか』を明確にし、その目的と課題を社内で共有しながら取り組みを進めることが必要」などと総括しており、特にD&I推進に取り組む各社の担当部署・担当者においては経営層との意識の共有を図る観点から本資料の活用を検討されたい。

 

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