SH4280 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第3回 従事者に関する運用上の留意点(3) 金山貴昭(2023/01/23)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~

第3回 従事者に関する運用上の留意点(3)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

Q 従事者を指定する場合の留意点

 従事者については、当社の従業員以外にも外部の窓口業者や弁護士を指定することができると思いますが、そのような従事者を指定する場合、どのような点に留意すべきでしょうか。

 

A 【ポイント】

事業者外部の者であっても、法定指針が定める要件を満たす者は従事者に指定しなければならず、従事者の指定方法や指定の時期等についても、事業者内部の従業員を指定する場合と基本的に違いはありません。ただし、外部の窓口業者の従業員や法律事務所の弁護士等の外部の個人を事業者が直接指定することが実務的に難しい場合もあり、そのような場合には、このような外部業者や法律事務所に従事者の指定を委託して指定することも可能です。なお、あくまで従事者の指定は事業者の義務ですので、外部業者に委託したものの、実際に外部業者による指定が行われなかった場合には、事業者が義務違反に問われる可能性はあるため留意が必要です。

 

【解説】

1 従事者の指定方法に関する指針の定め

 公益通報者保護法は、事業者に対し、内部公益通報に対応する業務に従事する者を「公益通報対応業務従事者」として定めることを義務付けており(本法11条1項)、法定指針では、公益通報対応業務従事者として指定する必要がある具体的な対象者の範囲を定めています。加えて、法定指針では、従事者を指定する方法について、下記のとおり定めています。

  1.  「事業者は、従事者を定める際には、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くことが従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならない。」
2 従事者を定める方法

 指針の解説では、従事者を定める方法として、2つの例を説明しています。一つは、「従事者に対して個別に通知する方法」です。これは、たとえば、内部規程等においては「通報対応責任者は、公益通報対応業務に従事するものを従事者として定める」と従事者に指定される者の範囲を内部規程等には規定せず、具体的に従事者となる者は指定権限のある者から個別に従事者に就任する者に対して通知する場合などが考えられます。

 もう一つの例は、「内部規程等において部署・部署内のチーム・役職等の特定の属性で指定」する方法です。ただし、この場合でも、「従事者の地位に就くことを従事者となる者自身に明らかにする必要がある」と説明しています。すなわち、内部規程等で従事者に指定される者の範囲を規定した上で、従事者となる者自身に対しては従事者となることが明確になる方法で通知等を行うことを必要としています。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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