SH4303 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第7回 公益通報の種類・範囲(1) 金山貴昭(2023/02/06)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 

第7回 公益通報の種類・範囲(1)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

Q 公益通報の種類と各通報に対する事業者の義務

 公益通報者保護法における公益通報にはどのような種類がありますか。また、公益通報の種類に応じて公益通報者保護法上の保護の内容や事業者の義務は異なりますか。

 

A 【ポイント】

公益通報者保護法では、①事業者内部、②権限ある行政機関、③その他事業者外部の3つを公益通報の通報先として規定し、各通報先への公益通報ごとに公益通報者の保護要件を定めています。また、公益通報者については、労働者、派遣労働者、役員等の通報者の属性に応じて保護の内容が規定されています。加えて、①事業者内部への公益通報のうち、内部公益通報受付窓口への公益通報に関しては、法定指針において部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備が義務付けられています(第4の1)。

 

【解説】

1 公益通報の種類

 公益通報者保護法上は、公益通報の分類はされていません。公益通報を分類する場合には、通報主体、通報内容、通報先等で分類することが考えられますが、よく用いられる分類としては、通報先に着目して分類する、「内部公益通報」と「外部公益通報」です。これらについては公益通報者保護法上の定義はありませんが、消費者庁QA[1]では、「内部公益通報」は事業者内部への公益通報(いわゆる1号通報)が該当し、「外部公益通報」には、行政機関への公益通報(いわゆる2号通報)とその他の事業者外部への公益通報(いわゆる3号通報)が該当すると整理しています。また、法定指針では、「内部公益通報」という用語を用いており、「法第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報をいい、通報窓口への通報が公益通報となる場合だけではなく、上司等への報告が公益通報となる場合も含む」と定義しています[2]

 一つ目の留意点として、内部公益通報として分類される「事業者内部」への公益通報には、事業者自体(社内の通報窓口や上司等)への公益通報に加え、事業者があらかじめ定めた者(社外の弁護士を通報窓口とする場合や外部業者に通報窓口を依頼する場合等)への公益通報も含まれます[3]。後者の窓口は、事業者内では「外部窓口」として呼称される場合も多いと思いますが、法定指針においては当該窓口への公益通報は内部公益通報に含まれます。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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