SH2362 公取委、株式会社イトーヨーカ堂に対する勧告 三浦貴史(2019/02/26)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、株式会社イトーヨーカ堂に対する勧告

岩田合同法律事務所

弁護士 三 浦 貴 史

 

1 はじめに

 公正取引委員会(以下「公取委」という)は、株式会社イトーヨーカ堂(以下「イトーヨーカ堂」という)に対し、平成31年2月15日、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下「特措法」又は「法」という)3条1号前段(減額)及び後段(買いたたき)の規定に違反する行為が認められたとして、法6条1項の規定に基づき勧告を行った。以下では、特措法の内容を改めて確認した上、本件事案の概要を紹介する。

 

2 特措法の概要

 特措法[1]の主な内容は以下のとおりである。

  1. ① 消費税の転嫁拒否等の行為の禁止(法3条)
    下記で詳述する。
  2. ② 消費税の転嫁を阻害する表示の禁止(法8条)
    全ての事業者を対象に、次の❶~❸の表示を禁止する。

    1. ❶ 相手方に消費税を転嫁していない旨の表示(同条1号)
    2. ❷ 相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって、消費税との関連を明示しているもの(同条2号)
    3. ❸ 消費税に関連して相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって、❷の表示に準ずるもの(同条3号)
  3. ③ 価格の表示についての特例
    1. ❶ 表示価格が税込価格だと誤認されないための措置を講じていれば、税込価格を表示しなくてもよい[2](法10条1項)。
    2. ❷ 税込価格を明瞭に表示していれば、税抜価格を強調して表示したとしても、景品表示法上の不当表示に該当しない(法11条)。
  4. ④ 転嫁カルテル及び表示カルテルの許容(法12条)
    次の❶❷については、原則として独占禁止法が適用されない[3]

    1. ❶ 転嫁の方法の決定に係る共同行為[4](同条1号)
    2. ❷ 表示の方法の決定に係る共同行為(同条2号)

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(みうら・たかし)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年東京大学法学部卒業。2016年東京大学法科大学院卒業。2017年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)

 

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