◇SH2577◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第35回) 齋藤憲道(2019/06/03)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

3.「製品規格」の仕組みが業法・有害物質規制・表示規制等の遵守に有効

(3)「表示規制」を守る

・品質・成分・組成・性能・用途・産地・賞味期限・価格等の表示は、購入者が市場で商品やサービスを選択・使用する際の重要な情報であり、安全問題や取引被害等の発生を防ぎ、健全な市場を確保するために、正確かつ適切に行われることが求められる。

 このため表示は、以下に例示するように多くの法令で規制されており、違反者に対する指示・勧告・命令等の行政処分や刑事罰が設けられている。

・表示に起因する取引のトラブルを防ぎ、被害者を救済する法律も整備されているが、流通形態の変化や技術の進歩等に伴って新たな類型のトラブルが出現するので、その都度、必要に応じて見直しが行われる。

  1. 〔消費者と事業者の間のトラブル〕
  2.   消費者と事業者(企業等)の間には、持っている情報の量・質や交渉力の面で格差があることを踏まえ、消費者の利益を守るために「消費者契約法[1]」が定められている。同法により、消費者は次の法的保護を受ける。
  3. ・ 事業者の「不当な勧誘[2]」により消費者に誤認・困惑等が生じて結ばれた「契約の取消し」
  4. ・「不当な契約条項[3]」は「無効」
  5.  〔企業間の取引に係るトラブル〕
  6.   企業間の取引において、製品(完成品、部品、材料等)の性能・特性を偽る行為が「契約書(仕様書を含む)」「納品書(性能書)」等への虚偽表示等によって行われることがある。これは、不正競争防止法[4]や刑法(詐欺)に抵触し、差止・損害賠償請求・刑事罰の対象になる。
     
  7. 〔インターネット取引をめぐるトラブル〕
  8.   近年、様々な類型のインターネット取引が出現し、その市場が拡大するのに伴ってトラブルが増大している。取引相手の実態が分からず、商品の現物を確認せずに行われる取引も多く、適切なルール作りが求められている。(後記)

・表示の不正は、外見では識別できないものが多く、しばしば内部告発によって発覚する。

 (外見では識別し難い例)原産地、含有成分とその特性、製造年月日、賞味期限、消費期限

・表示の類型は業界・事案によって様々である。法令の抽象的な規定では企業の実務に十分に対応できないので、多くの事業者又は事業者団体が自主的な業界ルールとしてそれぞれの「公正競争規約[5]」を定めて運用している。

 (参考)事業者が景品表示法を遵守するために講ずべき管理に関する指針[6]が、消費者庁から公表されている。

  1. 指針に示された「管理上の措置の具体的事例」
  2.   景品表示法の考え方の周知・啓発の例
  3.   法令遵守の方針等の明確化の例
  4.   表示等に関する情報の確認の例
  5.   表示等に関する情報の共有の例
  6.   表示等を管理するための担当者等を定める例
  7.   表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採る例
  8.   不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応の例
  9.   前記からまで以外の措置の例

例1 景品表示法[7]

・景品表示法は、景品および表示を適切に行うべきことを定め、一般消費者が自主的かつ合理的に選択できるようにする。違反行為があれば内閣総理大臣(実務は消費者庁)および都道府県知事が規制する。

・商品・役務の取引に際して、過大な景品類提供および不当表示が行われると、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するとして、①一般懸賞による景品類・共同懸賞による景品類・総付景品のうち過大な提供、および、②優良誤認・有利誤認・その他誤認されるおそれのある不当な表示は、制限又は禁止され、内閣総理大臣(実務は消費者庁)が規制金額(景品の最高額や総額)・表示内容等の具体的な基準[8]を定めている。

・公正取引委員会及び消費者庁長官は、業界で定められた自主ルール「公正競争規約」を認定する。

・優良誤認の疑いがある場合、消費者庁長官は事業者に対して、表示を裏付ける合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者がこれを提出しないときは不当表示とみなす。

・不当表示規制に違反した者には、その違反に係る商品の直近3年間の累積販売高の3%の課徴金が課される。なお、自主返金等した金額は課徴金納付額から減額される。

・消費者庁・公正取引委員会による違反行為の調査は、事業者・団体・消費者からの情報提供、都道府県知事(報告徴収・立入検査・指示等の権限を有す)からの措置請求、職権探知等が端緒となる。

 

例2 家庭用品品質表示法[9]

 事業者に家庭用品の品質に関する表示を適正に行うことを要請する法律で、表示すべき事項や表示方法が繊維製品品質表示規程[10]・合成樹脂加工品品質表示規程・電気機械器具品質表示規程・雑貨工業品質表示規程等において具体的に定められている。

 不適正な表示については誰でも内閣総理大臣(実務は消費者庁)又は経済産業大臣に申し出ることができ、これを受けた当局は必要な調査等を行って、販売・陳列の禁止等の適当な措置をとる。

 

例3 食品表示法[11]

 食品の、名称・アレルゲン・保存方法・消費期限・原材料・添加物・栄養成分の量と熱量・原産地・その他の表示基準は、内閣総理大臣(実務は消費者庁)が、厚生労働大臣・農林水産大臣・財務大臣に協議し[12]、消費者委員会に意見聴取して、策定・変更する。事業者にはこの「食品表示基準[13]」を遵守する義務があり、違反行為に対しては指示・措置命令・公表・立入検査・罰則等の規定が設けられている。

 


[1] 平成12年(2000年)法律第61号

[2] 不実告知(消費者契約法4条1項1号)、断定的判断の提供(同法4条1項2号)、不利益事実の不告知(同法4条2項)、不退去(同法4条3項1号)、退去妨害(同法4条3項2号)、過量契約(同法4条4項)

[3] 事業者の損害賠償責任を免除(全部免除、故意・重過失の場合の一部免除)する条項(消費者契約法8条)、消費者の解除権を放棄させる条項(同法8条の2)、消費者が支払う損害賠償の額(平均的な損害額を超える部分等)を予定する条項等(同法9条)、消費者の利益を一方的に害する条項(同法10条)

[4] 不正競争防止法2条1項14号

[5] 公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて運用する(景品表示法31条)。「公正競争規約」の具体的な規定の例:必要な表示事項(原材料名、内容量、賞味期限名等の表示を義務付け)、特定事項の表示の基準(不動産広告の「徒歩○分」は、80m/分で換算)、特定用語の表示を禁止(加工乳・乳飲料に「牛乳」を用いない)

[6] 2014年(平成26年)11月14日内閣府告示第276号「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」

[7] 景品表示法1条、4条、5条、7条2項、8条、9条、10条、31条、33条1項。同法施行令14条(権限の委任関係)

[8] 優良誤認表示(景品表示法5条1号)、有利誤認表示(同法5条2号)、商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示: 無果汁の清涼飲料水、商品の原産国、消費者信用の融資費用、不動産のおとり広告、おとり広告、有料老人ホーム(以上、同法5条3号に基づく告示)

[9] 家庭用品品質表示法1条、7条、10条2項

[10] 国内の洗濯表示の記号が22種類から国際規格(ISO3758)の41種類に変わった。2016年(平成28年)12月以降適用される新洗濯記号(新JIS L 0001)においては、洗濯処理(温度・強弱)、漂白処理、乾燥の仕方、アイロン仕上げ(温度設定)、クリーニング(方法、可否)等が変更されている。

[11] 食品表示法4条~10条、17条~23条

 

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