◇SH0217◇消費者庁、消費者契約法に基づく差止請求に係る判決等に関する情報の公表 深沢篤嗣(2015/02/13)

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消費者庁、消費者契約法に基づく差止請求に係る判決等に関する情報の公表

岩田合同法律事務所

弁護士 深 沢 篤 嗣

 平成27年1月30日、消費者庁は、消費者契約法(以下「法」という。)に基づく差止請求訴訟の判決等3件に関する情報を公表した。本稿では、同法における差止請求制度を概観した後、本件の公表内容の概要を解説する。

1.差止請求制度について

 平成18年法改正により、平成19年6月から消費者団体訴訟制度が運用されているが、この制度は、事業者の行う不当な行為に対する差止請求を行う権利を、一定の要件を満たす消費者団体(適格消費者団体)に認めたものである。

 差止請求の対象となるのは、下表のとおり「不当な勧誘行為」及び「不当契約条項の使用」である。

 



出典) 内閣府国民生活局 「消費者団体訴訟制度説明会資料」

 

 平成25年7月5日現在、これまでに行われた差止請求は全部で264件あり、うち「不当勧誘行為」に関するものが12件、「不当契約条項」に関するものが252件となっている。詳細な内訳は下図のとおりであるが、「消費者の利益を一方的に害する条項」(法10条)に関するものが136件と、半数以上を占めている。

 



出典)消費者庁 「消費者団体訴訟制度 差止請求事例集 平成26年3月」

 

 また、差止請求訴訟について判決や和解が成立したときなどには、その概要や、当該差止請求に係る相手方の名称等を公表することとされており(法39条1項)、今回の3件を含め、これまでに66件の情報が公表されている。

 

2.上記公表内容について

 今回公表がされたのは、「不当契約条項」に関する差止請求訴訟の判決2件と裁判外の和解1件である。

 まず判決の1件目は、有料老人ホーム等の入居契約に関し、①入居一時金の一部(20%相当額)の非返還条項及び②入居一時金の償却期間を180か月とする旨の条項が、「消費者の利益を一方的に害する条項」(法10条)に該当するかが争われたが、福岡地方裁判所は、①②いずれの条項も法10条には該当しないと判断した(なお、原告は福岡高等裁判所に控訴中である。)。

 もう1件の判決は、③冠婚葬祭互助会契約において、契約解約時に払戻金から所定の手数料が差し引かれるとの条項につき、福岡地方裁判所は、解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害」を、425円(会員募集に要する費用の合計額)に当該会員の入会期間1年につき408円(会員管理に要する費用の合計額)を加えた金額であると認定し、これを超える解約手数料を差し引くことを内容とする部分については、法9条1号に該当し無効としたが、法10条への該当性は否定した事案である(なお、原告は福岡高等裁判所に控訴中である。)。

 裁判外の和解がされた事案については、木造注文住宅の設計、施工、販売契約にあたり、④契約成立後から工事完成前までに注文者が契約を解除した場合、受領済の工事代金等を返還しない旨の規定、⑤契約を解除したときに、工事未着手の場合、受領済みの請負代金を返還しない旨の条項、⑥注文者の責めに帰すことのできない事由による場合であっても、注文者が損害賠償義務を負う旨の条項につき、④及び⑤については法9条1号該当性が、⑥については法10条該当性が問題となった事案である。本件は、適格消費者団体と事業者の間で裁判外で和解が成立し、事業者側が、基本的に④ないし⑥の条項を、適格消費者団体の要請を受け入れる形で修正すること等が合意された。

 

3.

 このように、上記「不当契約条項」と評価されるおそれのある条項が含まれる契約書を用いる場合、事業者には、単に私法上の効力を否定されるに留まらず、適格消費者団体から差止請求を受け、その概要が公表されるリスクが存在しているといえる。事業者においては、このようなリスクの観点からも、用いている契約書のひな形等に、上記の「不当契約条項」と評価されるおそれのある条項が存在しないか、今一度精査し、疑義があれば専門家等に相談することも必要であろう。

 

(ふかざわ・あつし)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2008年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2009年弁護士登録。2013年4月から2014年3月まで、金融庁証券 取引等監視委員会取引調査課に出向、インサイダー取引、相場操縦行為等の調査に携わる。金融法務、企業法務等を専門とする。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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