◇SH0458◇消費者契約法専門調査会のポイント(第19回)須藤克己(2015/10/28)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第19回

弁護士 須藤 克己

 

 平成27年10月23日、内閣府消費者委員会において、第19回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者の私見である。

 

1. 配布資料

 以下の資料が配布された。

  配布資料

  資料1   公営社団法人経済同友会提出資料
        消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見

  資料2   在日米国商工会議所提出資料
        消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見

  資料3   日本チェーンストア協会提出資料
        消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見

  資料4   全国中小企業団体中央会提出資料
    4-1 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に関する意見
    4-2 第19回消費者契約法専門調査会資料

  資料5   公営社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会提出資料
    5-1 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に関する意見
    5-2 消費者市民契約における消費者契約~消費者契約法改正に向けて消費者意識調査
        からの提言~平成25年度調査報告書

 

2. 議事内容

 公営社団法人経済同友会、在日米国商工会議所、日本チェーンストア協会、全国中小企業団体中央会、公営社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の計5団体から、消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」(平成27年8月)に関するヒアリングを行った。

 

3. 各団体からの意見(ヒアリング)の主な内容

 以下は、ヒアリングで実際に出された各団体の意見の要旨である。(各団体ごとに詳細な意見を配布資料として提出している。本調査会のHP上で公開される同資料を適宜参照されたい。)

 (1) 公営社団法人経済同友会

  1. ● 会社法、民法の改正と比較し、企業者の意見が十分に取り入れられておらず、拙速との印象がある。
  2. ● 高度の情報化社会の到来等によって消費者対事業者という二項対立モデルには限界が生じている。
  3. ● 消費者概念の拡張は取引に多大な混乱を招きかねない。法改正ではなく、まずは現行法の運用やソフト・ローによる対応などで対応していくべきではないか。立法事実を詳細に確認し、国民経済の健全な発展という法の目的と整合する改正とすべきである。
  4. ● ”一般”と”特殊”の混同が散見される。
  5. ● 勧誘要件について、特に広告を勧誘に含めるとなると、すでに存在する景表法や各業法による規制とどのように整合させるのか。

 (2) 在日米国商工会議所

  1. ● 法改正の立法事実が十分か、疑問である。
  2. ● 景表法や各業法との関係を整理できているか。
  3. ● 法改正により企業者のコスト、社会的コストが増え、安倍政権の掲げる成長戦略にむしろマイナスとならないか。
  4. ● 現行法の課題を、国民に対し、広く且つ具体的な例を示しながらわかりやすく示すべき。現状、議論状況が分かりにくい。
  5. ● 勧誘要件については、以下のような問題がある。

    1. ① 対象となる広告の範囲が広範すぎる。
    2. ② 広告等に基づいて消費者が契約締結の意思表示をしたことは客観的には判断できない。また、不告知、不実告知の主体について、もう少し詳細な議論が必要ではないか。
    3. ③ 通常、消費者と事業者の間で不利益事実について認識の差があるのではないかと思われる。広告に不利益事実をすべて記載することは現実的ではない。
  6. ● 本調査会で不当条項規制に関し議論された時間は、相対的に少ないのではないか。
  7. ● 不当条項規制については、合理的な条項として広く一般に活用されているものも規制の対象となりはしないか、グレイリストは事業者が保守的に行動する結果、実質ブラックリスト化しないかという懸念がある。

 (3) 日本チェーンストア協会

  1. ● 特殊な悪質業者による被害防止のためBtoCビジネス全般に影響が及ぶことはいかがなものか。契約の取消しや無効等が生じる可能性が不明確なままでは日常生活に関する取引に支障が生じ、事業者・消費者双方の利益を削ぐことにならないか。
  2. ● 特に、勧誘要件の拡張、不利益事実の不告知・不実告知の見直し、重要事実の拡張については、予測可能性の観点から強い萎縮効果を招くのではないかと懸念する。仮に勧誘要件等を拡張する場合でも、適用場面を限定し、日常生活の安定を阻害しない工夫が必要である。
  3. ● 合理的判断ができないことの事情を利用した契約締結について、特に高齢者との取引に対する萎縮を招きかねないという懸念がある。
  4. ● 法改正よりも、現在の消費者契約法の内容の周知を行うことの方が問題解決に役立つのではないか。

 (4) 全国中小企業団体中央会

  1. ● 中間とりまとめ前にこのようなヒアリングを実施して欲しかった。
  2. ● 消費者保護・悪徳業者の排除は賛成だが、事業者の活動に一方的な網をかける法改正には反対。モンスターコンシューマーが発生する要因になるのではないか。
  3. (法改正するのであれば)中小零細企業が見ても分かりやすい、明確な規定にしてほしい。
  4. ● 広告も勧誘に含まれるとなると、詳細を記載しないと事業者が思わぬリスクを被ることにならないかという懸念がある。
  5. ● 重要事項に消費者の内心に関する事情が含まれるとなれば、それは事業者が認知できることではないのではないか。これまで以上に事業者の負担が増すことにならないか。

 (5) 公営社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会

  1. ● 不特定多数に向けた勧誘(広告・表示)であっても不実告知等があった場合は取消できるようにしてほしい。
  2. ● 不利益事実の不告知のうち、不実告知型については故意要件を削除してほしい。また、事業者側に故意・重過失がある場合は不告知型についても取消できるようにしてほしい。
  3. ● 契約の動機に関わる不実告知等に対応できるよう、重要事項を拡張してほしい。
  4. ● 執拗な勧誘、威迫による勧誘、迷惑を覚えさせる勧誘も困惑類型に追加してほしい。
  5. ● 不当勧誘行為について、高齢者保護の規定を追加してほしい。
  6. ● 取消権の行使期間を延長してほしい。
  7. ● 不当勧誘行為により契約が取消された場合、消費者が事業者に返還すべき利益を現存利益に限定してほしい。

 

4. その他

 次回開催予定:平成27年10月30日(金)13時~

以上

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