三菱商事、気候変動対策の強化を求める株主提案に
対する取締役会意見を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 上 西 拓 也
令和4年5月10日、三菱商事株式会社は、気候変動対策の強化を求める株主提案に対する取締役会意見を公表した。
株主提案の内容は、①パリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定開示、②新規の重要な資本的支出と2050年温室効果ガス排出実質ゼロ達成目標との整合性評価の開示を定款に規定することを求めるものであり(以下「本株主提案」という。)、三菱商事株式会社の公表した取締役会意見は、いずれの株主提案についても反対するというものである。取締役会意見は要旨、会社として既にSDGsやパリ協定で示された国際的な目標に向けた諸施策を打ち出していること、また、会社の組織・運営の基本的事項を定める根本規範である定款に個別具体的な業務執行に係る事項を定めることは適切でないというものであり、それに加えて、気候変動に対する会社の具体的な取組についても詳細に説明する内容となっている。
定款変更議案の可決には出席株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による賛成が必要であるため、そのハードルは高い。もっとも、気候変動問題への世界的な関心の高まり、特に海外機関投資家等が関心を寄せていることも踏まえれば、会社としては、気候変動対策の強化を求める株主提案に対して単に反対すれば足りるとは言い難い状況である。そのため、上記のような取締役会意見による詳細説明は会社の取組を対外的に発信する観点あるいは株主の理解を得る観点から望ましいものと考えられる。
以下では、本株主提案の会社法の位置づけを概説した後、気候変動対策の強化を求める株主提案に関する近時の事例等とともに今後の動向について検討する。
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(うえにし・たくや)
岩田合同法律事務所弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録。『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、「各業務における反社勢力対応のポイント」(共著。銀行実務658号)、『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)等著作多数。
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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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三菱商事、気候変動対策の強化を求める株主提案に対する取締役会意見を公表
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