◇SH0992◇金融庁、「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績 鈴木智弘(2017/02/01)

未分類

金融庁、「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績について

岩田合同法律事務所

弁護士 鈴 木 智 弘

 

 金融庁は、平成29年1月20日、「経営者保証に関するガイドライン」(以下「経営者保証ガイドライン」という。)に関し、平成28年4月から同年9月末までの民間金融機関における活用実績(以下「本活用実績」という。)を取りまとめ、公表した。

 経営者保証ガイドラインは、①中小企業の経営者保証に依存しない融資の促進及び②中小企業の債務整理時に顕在化する経営者保証債務の適切な整理の促進を目的として平成25年12月に策定されたものであり、法的拘束力はないものの、主債務者・保証人・対象債権者(金融機関)が自発的に尊重し、遵守することが期待されている。また、金融庁の監督行政においては、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立、保証履行時における保証人の履行能力等を踏まえた対応の促進について定められているところでもある[1]

 本活用実績は、経営者保証ガイドラインを融資慣行として浸透・定着させることを目的として、経営者保証に依存しない融資の件数を公表したものである。

 本活用実績によれば、新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合は14%となっており、過去に公表された平成27年4月から9月の実績(12%)や同年10月から平成28年3月の実績(12%)と比較して若干の増加がみられる(下表参照[2])。

 金融庁は、これまでに経営者保証ガイドラインの浸透・定着のために以下の㋐~㋔のような様々な取組みを行っており、本活用実績の公表は㋓に該当する。

㋐ 金融機関に対する経営者保証ガイドラインの積極的な活用の要請
㋑ 監督指針[3]及び金融検査マニュアルを改正し、経営者保証ガイドラインに基づく対応姿勢の整備等を着眼点として明記
㋒ 経営者保証ガイドラインの活用に関して、金融機関等により広く実践されることが望ましい取組事例を取りまとめた「『経営者保証に関するガイドライン』の活用に係る参考事例集」の公表[4]
㋓ 各金融機関からの報告を基にした経営者保証ガイドラインの活用実績の公表
㋔ 地域経済活性化支援機構における、経営者保証が付された貸付債権等を買い取り、経営者の保証債務を経営者保証ガイドラインに沿って整理する特定支援業務の追加

 他方で、金融庁が中小規模の事業者を対象に実施したヒアリング及びアンケート調査の結果をまとめて公表した平成28年5月23日付「企業ヒアリング・アンケート調査の結果について~融資先企業の取引金融機関に対する評価~」によれば、ヒアリング調査の結果、約半数の企業が経営者保証ガイドラインを「知らなかった」「説明がなかった」と回答し、アンケート調査の結果では約7割の企業が「知らない」と回答した。そして、経営者保証ガイドラインの相談状況は「経営者保証を提供しない融資を依頼したことはない」及び「既存の経営者保証の解除を依頼したことはない」が大多数を占めている。また、アンケート調査の自由意見では、融資スタンス(担保・保証に依存しない融資等)に対する厳しい意見も多くみられた。

 なお、保証人の保護という時代の潮流を反映し、今次通常国会に提出されている民法改正法案では、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約等において個人が保証人となる場合には、原則として公正証書を作成して保証債務を履行する意思を明らかにしなければ効力が生じないものとして手続が厳格化されたが、経営者保証(保証人が、主債務者が法人である場合のその取締役である場合等)については適用除外とされている(民法改正法案465条の6及び465条の9参照)。もっとも、保証人の保護強化が民法改正の目指す方向の基調であり、経営者保証に慎重たるべきことは改正法の下でも変わらないと思われる。

 経営者保証ガイドラインの活用の促進は内閣に設置された日本経済再生本部が公表した「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」においても盛り込まれており、今後の活用促進の動向を引き続き注視したい。

以上



[1]主要行等向けの総合的な監督指針Ⅲ-10、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅱ-11。

[3] 主要行等向けの総合的な監督指針Ⅲ-9、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針Ⅱ-10。

[4] 例えば、事業計画の実現可能性等を考慮して経営者保証を求めなかった事例や、中小企業再生支援協議会を活用して保証債務を整理した事例等が紹介されている。

 

タイトルとURLをコピーしました