◇SH1053◇最三小決、非公開会社における、株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定め 飯田浩司(2017/03/08)

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最三小決、非公開会社における、株主総会の決議によっても
代表取締役を定めることができる旨の定款の定め

岩田合同法律事務所

弁護士 飯 田 浩 司

 

1.

 最高裁判所は、平成29年2月21日、「取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解するのが相当である」として、許可抗告申立を棄却する決定を下した(平成28年(許)第24号事件。以下「本決定」という。)。

 本件(事案の概要については下図参照)においては、非公開会社であり取締役会設置会社である株式会社Yの定款に、「代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが、必要に応じ株主総会の決議によって定めることができる」旨の定めがあった。

 本件では、Yのかかる定款の定めの適法性、ひいては、かかる定款の定めに基づき株主総会決議で定められた代表取締役の選任の有効性が問題となった[1]

 

2.

 会社法295条は株主総会の権限について規定するところ、同条2項は「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」ことを規定している。同項の規定により「定款で定めた事項」について、法令上、明文の制限は設けられていない。

 代表取締役等の選定・解職を定款により総会権限として定めることについては、会社法制定前は、取締役会による代表取締役の監督権限の裏付けがなくなってしまうとする消極説があり、登記実務も消極説に立ってきたが[2]、学説上は積極説が通説とされてきた[3]

 会社法制定後、登記実務は積極説の立場に転じたが、学説ではなお、(i)会社法が、株主総会を万能の決定機関である総会(同条1項)と、権限が法令・定款事項に定められている事項に制限されている総会(同条2項)に分けた趣旨、及び、(ii)代表取締役等の選定・解職を株主総会の権限とした場合に取締役会の監督機能が弱体化することが否定できないこと等から、疑問を呈する見解があった[4]

 

3.

 これに対して、本決定は、上記判旨の理由として、

  1. (ⅰ) 法令において定款で定める事項の内容を制限する明文の規定がないこと、
  2. (ⅱ) 取締役会設置会社である非公開会社において、株主総会の決議によって代表取締役を定めることができる旨定めたとしても、代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(法362条2項3号)が否定されるものではなく、取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえないこと、

を挙げている。

 

4.

 本決定は、直接は「取締役会設置会社である非公開会社」において、定款で株主総会の権限として「代表取締役を定めることができる」とした場合について判断したものである。したがって、「公開会社」や、総会権限として代表取締役の「解職」権限を定めた場合については判断が下されていない。

 もっとも、公開会社の場合であっても、(ⅰ)法令上、定款で定める権限事項の内容を制限する明文の規定がないことは変わらず、また、(ⅱ)総会権限に代表取締役の選定権限を定めたとしても、取締役会に代表取締役の選定・解職権限があることにも変わりがないようにも見える。

 他方、本決定は、定款で株主総会の代表取締役の解職権限を定めることの適法性については扱っておらず、積極・消極のいずれかの方向性を本決定から導き出すことは、直ちには難しいようにも思われる。

 

5.

 本決定の実務上のインパクトとしては、例えば非公開会社である取締役会設置会社としての合弁会社について、代表取締役の選定権限が総会にもあることを明記するようにすることが増えるのではないかと想像される。

 


[1]事案としては、総会決議に基づき選任された代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分命令が申立てられた事件である。

[2] 昭和26年10月12日付民甲第1983号民事局長通達参照。

[3] 例えば、鈴木竹雄=竹内昭夫『会社法〔第3版〕』(有斐閣、1994)228頁。同書では、かかる定款の定めによっても取締役会は命令監督の権限を失ってしまうわけではなく、代表取締役の選任及び解任が総会の決議事項とされても、取締役会はその解任を議題として総会を招集できることが、積極説の理由として挙げられている。

[4]岩原紳作ほか編『会社法コンメンタール 7』(商事法務、2013)40頁[松井]、酒巻俊雄ほか編『逐条解説 会社法 第4巻 機関・1』(中央経済社、2008)35頁[前田]。

 

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