◇SH1083◇法務省、商業・法人登記の主要通達等のページを更新(出資の払込みを証する書面について) 冨田雄介(2017/03/28)

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法務省、商業・法人登記の主要通達等のページを更新
(出資の払込みを証する書面について)

岩田合同法律事務所

弁護士 冨 田 雄 介

 

 本年3月17日、法務省は、「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の一部として払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを添付する場合における当該預金通帳の口座名義人の範囲について」と題する通達(以下「本通達」という。)を発出した。

 株式会社の発起設立の場合、発起人は設立時発行株式の引受け後遅滞なく、発起人が定めた銀行等の払込取扱金融機関において、その出資に係る金銭の全額の払込みをしなければならないとされている(いわゆる全額払込主義。会社法34条1項、2項)。

 そして、商業登記法47条2項5号は、株式会社の設立登記に当たって設立登記の申請書に添付すべき書面として、発起人の払込みがあったことを証する書面を挙げている。当該書面については、設立時代表取締役又は設立時代表執行役の作成に係る払込取扱機関に払い込まれた金額を証する書面に、払込取扱機関における口座の預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面のいずれかを合てつしたものをもって当該書面として取り扱って差し支えないものとされている(平成18年3月31日付け法務省民商第782号通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」第2部第1の2(3)オ(イ))。

 本通達は、当該預金通帳の口座名義人の範囲についての考え方が示されており、そのポイントは下表のとおりであるが、以下概説する。

<本通達のポイント>

 発起人の払込みがあったことを証する書面について、

  1. ① 設立時取締役の預金通帳も当該書面に含まれるとした。
  2. ② 発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に居住していない場合には、これ以外の者の預金通帳も当該書面に含まれるとした。
  3. ③ 上記①及び②の場合は、発起人一人の委任が必要であるとした。

 まず、本通達は、①預金通帳の口座名義人は、発起人のほか、設立時取締役(設立時代表取締役である者を含む。以下同じ)であっても差し支えないとした。従前、マネーロンダリングに利用されること等の防止の観点から、発起人以外の口座名義人としては設立時代表取締役しか許容されていなかったところ、これを設立時取締役にまで拡大するものである。もっとも、設立時取締役は設立中の会社の機関ではないから、この場合には発起人が当該設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(代理権限証書)も添付する必要がある。

 また、本通達は、②発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していないことが申請書の添付書面から明らかな場合、預金通帳の口座名義人は、発起人及び設立時取締役以外の者であっても差し支えないとした。もっとも、この者は設立中の会社の機関ではないから、この場合には、上記①同様、発起人がこの者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(代理権限証書)も添付する必要がある。

 さらに、本通達は、③上記①及び②の場合における発起人からの払込金の受領権限の委任については、発起人全員又は発起人の過半数で決する必要はなく、発起人のうち一人からの委任があれば足りるとした。発起人が複数存在する場合には、民法上の組合(発起人組合)を観念することができるが、金員の受領行為は、組合員の過半数の同意を要するほどの業務ではないと解されるためである(民法670条参照)。

 特に発起人が外国人・外国法人の場合には、金融機関の日本国内支店に預金口座を有していないことがあり得るところであり、そのような場合にも払込みを可能とすべく、昨年12月に、邦銀の海外支店の預金通帳の添付も可能とする通達が発出された(平成28年12月20日付け法務省民商第179号通達「会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面について」)。本通達は、払込みがあったことを証する書面として認められる預金通帳の範囲をさらに拡大するものであり、本通達により、発起人が外国人・外国法人の場合の会社設立がより容易になると考えられる。

以 上

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