◇SH1180◇オリンパス、旧取締役への損害賠償請求の一部棄却を不服として控訴 柏木健佑(2017/05/23)

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オリンパス、旧取締役への損害賠償請求の一部棄却を不服として控訴

岩田合同法律事務所

弁護士 柏 木 健 佑

 

 オリンパス株式会社(以下「オリンパス社」という。)は、5月11日、過去の有価証券投資等に係る損失計上先送りの問題に関して旧取締役に対して提起していた損害賠償請求訴訟について、東京地方裁判所が先だって下した旧取締役6名に対して最大で587億円を超える損害賠償を命じた判決を不服として、控訴を提起したことを発表した。

 オリンパス社は、資産運用のために保有していた金融資産の含み損を連結対象とならないファンドを用いて分離する(以下「損失分離スキーム」という。)とともに、分離した損失分のM&A案件の資産価値への上乗せ等により損失の解消を企図した。これによりオリンパス社は多額の損害を被るとともに、かかる粉飾の結果分配可能額を超えた剰余金の配当や自己株式の取得(以下「違法配当等」という。)がなされることとなった。

 これら一連の不祥事について、オリンパス社は、第三者委員会(取締役責任調査委員会)による調査結果を踏まえて、損失分離スキームの構築・維持等に関与し、あるいは損認識し又は認識し得た取締役6名(以下「関与・認識取締役」という。)と、損失分離の解消に向けた不正行為について適切な検討を怠った取締役13名に対して損害賠償請求訴訟を提起していた。関与・認識取締役を除く13名の取締役については、2016年3月に当該取締役らが解決金を支払う内容の和解が成立していたが、残る関与・認識取締役6名(但し、1名については死亡のためその相続人が被告)に対しては、損害賠償を命じる内容の東京地裁の判決が2017年4月27日に言い渡されていた。

 各取締役についての、調査委員会で認定された責任内容、支払い義務を負う金額、請求額、認容額(和解額)を以下の表にまとめた。

(金額については、1万円未満切捨)




*1

調査委員会で認定された責任内容*2

調査委員会で認定された支払義務を負う金額

オリンパス社による訴訟の請求額

判決による認容額
(和解による解決金の額)


199億2261万円

10億円

1億円

199億2261万円

10億円

1億円

★☆●◆

859億1047万円

36億1000万円

587億8596万円

★☆●◆

738億9385万円

30億1000万円

587億8596万円

★☆●◆

700億3529万円

28億1000万円

587億8596万円

●◆

40億1401万円

1億1000万円

2986万円

×



22億0925万円~

46億5675万円

2億5000万円~

5億円

 -

(合計7197万)

★=損失分離スキームの維持 ☆=損失分離スキームの解消 ●=疑惑発覚後の対応 ◆=違法配当等

*1 取締役①~⑥は関与・認識取締役、⑦~⑲は既に和解が成立しているその他の取締役。
*2 なお、調査委員会では各責任内容についてより細分化された認定を行っているが、ここではその概略のみ示す。

 

 判決内容は本稿執筆時点において公表されていないため、会社が公表する以上の判決の詳細は不明であり、控訴の理由も明らかではないが、本判決では、一連の不祥事に関与した取締役に587億円を超える巨額の賠償義務が認められている。オリンパス社が公表している訴訟での請求額は36億1000万円が最大であるが、オリンパス社の株主が共同訴訟参加した併合事件の賠償額が含まれているようである。会社が取締役に対して責任追及等の訴えを提起する場合においては、取締役個人の支払能力に鑑み、訴訟費用の節減等を意図して請求額を抑える傾向があるが、株主による代表訴訟は訴訟費用が低廉であるため(会社法847条の4第1項、民事訴訟費用等に関する法律第4条第2項)、代表訴訟の請求額は多額に上ることがある。本件の事実関係は明らかではないが、そのような事例の一つに数えられる可能性もある。

 本件で認容された取締役の責任追及等の訴訟に係る賠償額は、ニューヨーク支店での巨額損失をめぐる大和銀行事件の支払額に次ぐと言われている。巨額の賠償額を認める判決に一事例が加わったことで、D&O保険を含めた取締役の責任の軽減のための方策についての議論が活発になることも考えられる。一方で、第一審においては、関与・認識取締役を除く13名の取締役については裁判所の和解勧告を受けて上述のとおり和解が成立しているのに対し、関与・認識取締役については和解勧告はなかったということであり、裁判においても、不祥事に関与した関与・認識取締役とそれ以外の取締役との責任の質の違いが意識されていたとも考えられる。いずれにせよ、取締役にとっては、自らが負っている善管注意義務について一層の留意を促す判決であったと考えられ、控訴審の行方も注目される。

以上

 

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