◇SH1928◇法務省、民法の一部を改正する法律(成年年齢関係) 徳丸大輔(2018/06/26)

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法務省、民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)

岩田合同法律事務所

弁護士 徳 丸 大 輔

 

 法務省は、2018年6月13日、同省のホームページ上に「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」と題するページをアップした。

 周知のとおり、民法の成年年齢を現行の20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律(以下「本法改正」という。)が、同日成立した。なお、本法改正による改正後の民法(以下「改正民法」という。)は2022年4月1日から施行される。

 民法の定める成年年齢には、①単独で契約を締結することができる年齢という意味(民法4条参照)と、②親権に服することがなくなる年齢という意味(民法818条参照)があるところ、企業活動との関係で改正民法が直接に影響するのは、上記①の部分である。すなわち、18歳、19歳の者は、現行法上は親権者の同意がなければ一人で契約できなかったものが、改正民法が施行される2022年4月1日以降は、当該同意を得ることなく単独で契約を締結することができることとなる(いわゆる「契約年齢の引下げ」)。このことにより、主にB to Cの取引を行っている企業において、契約締結時の事務処理規定やマニュアル等の改定や、契約受付担当者への周知等といった対応が必要となると思われる。

 また、契約年齢の引下げに対しては、検討過程から、とりわけ若年者の消費者被害の拡大や労働条件の劣悪ないわゆるブラック企業等による被害といった懸念が示されていた。この点に関し、2018年4月16日関係府省庁申合せ[1]によれば、法務大臣を議長として、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を開催し、成年年齢引下げを見据え、環境整備が必要な個別施策の報告、所要の措置・進捗管理を行うことが予定されている。

 同連絡会議(第1回)で示された工程表[2]には、上記環境整備に関する現時点での具体的な施策の取組状況や2022年4月1日の改正民法施行までの期間における予定が示されている。当該工程表で示された施策内容等のうち、企業活動に影響し得るものを抜き出すと、以下の表のとおりである。

 

項目名 施策内容等 関係する企業

消費者保護施策の検討

若年者の消費者被害の状況等の把握、これを踏まえた対応。

B to Cの取引を行っている企業

貸金業における貸付・信用供与の健全性確保

若年者に対する返済能力の調査をより一層適切に行う事業者の自主的な取組の推進。

貸金業者

クレジット取引における信用供与の健全性確保

若年者に対する支払可能見込額の調査を通じた過剰与信防止措置の適切な実施等。

クレジット業者

学生アルバイトの労働条件確保対策等

ホットラインやポータルサイトを通じた相談の受付、労働基準関係法令や事業に応じた相談先等の情報提供等

学生アルバイトを雇用している企業

(上記工程表を元に、筆者において作成)

 

 上記項目のうち「消費者保護施策の検討」の項目については、社会生活上の経験不足を不当に利用した勧誘行為(いわゆるデート商法など)に対する取消権の追加などを内容とする消費者契約法の一部を改正する法律が、今月15日に公布されている[3]。また、改正民法施行後の若年者の消費者被害の状況次第では新たな法規制が設けられる可能性もあり、今後の動向が注目される。

 これに対し、その他の貸金業、クレジット取引及び労働条件に関する項目については、自主規制基準や現在の規制の徹底、行政による情報提供によって、対応が図られることが予定されている。

 

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