◇SH1944◇アルパイン、株主からの第52回定時株主総会における事前質問書に対する見解の公表 松田貴男(2018/07/04)

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アルパイン、株主からの第52回定時株主総会における
事前質問書に対する見解の公表

岩田合同法律事務所

弁護士 松 田 貴 男

 

 アルパイン株式会社(「アルパイン」)の株主であるオアシス インベストメンツ ツー マスターファンド エルティーディー(「オアシス」)は、平成30年6月21日開催のアルパインの定時株主総会に先立ち、同社に事前質問書を送付した。これを受けてアルパインは6月20日、事前質問に対する見解を公表した。

 株主総会前に株主から事前質問書が寄せられることはよくみられる。しかし、会社が自発的に回答をする場合であっても、総会当日の議場において株主からの質問に先立ち議長から口頭で回答することが多い。本件のように、事前質問書に対して事前に会社見解を公表することは珍しい。

 オアシスの事前質問30個弱の大半は、アルパインが平成29年7月27日に締結した、アルプス電気株式会社(アルパインの議決権約40%を保有)を株式交換完全親会社、アルパインを株式交換完全子会社とする株式交換契約(「本件株式交換」)において定められた株式交換比率の公正性及びアルパインが利益相反回避措置として設置した第三者委員会に関する質問である。このうち、前者の質問に関しては、オアシスは、DCF法上のディスカウントレートや業績予想期間の適正性を問うたほか、本件株式交換の公表以降のアルパインの2度に渡る業績予想上方修正を問題視した。これに対してアルパインは、2度の業績予想修正によっても株式交換比率が妥当であるとの見解を、これまでの同社のプレスリリースを引用等しながら、回答した。

 また、オアシスはこの事前質問に先立ち、本件株式交換の株式交換比率が少数株主にとって不公正であるためこれを是正するとの理由による配当額増額、及び、本件株式交換に関して既存の社外取締役が少数株主の保護を怠ったとの理由による社外取締役2名の追加選任を、それぞれ6月の定時株主総会の議題とする株主提案を実施し、アルパインは5月9日に当該株主提案に反対する意見を公表した。オアシスは、アルパインの他の株主に対して委任状勧誘を実施したが、結果的に、6月21日の同総会において、配当額増額提案への賛成は29%弱、社外取締役選任提案への賛成は25~30%弱となり、オアシスの株主提案は否決された(一連の時系列は末尾表にまとめた)。

 本件で興味深いのは、定時株主総会の実質的な「争点」とされた本件株式交換の承認は、同株主総会の議題ではないことである。本件株式交換契約の承認は、平成30年12月中旬開催予定のアルパインの臨時株主総会において審議の予定である。従って、6月の定時株主総会に係るオアシスの株主提案、委任状勧誘、事前質問等及びこれらに対するアルパインの対応は、12月開催予定の臨時株主総会の「前哨戦」といえる。本件株式交換を12月の臨時株主総会で承認可決するためには出席株主の議決権数の3分の2以上の賛成が必要となるところ、今般オアシスの株主提案に賛成した30%弱の議決権数では、臨時総会での本件株式交換の承認を阻止できない。その意味で「前哨戦」としては、アルパインが守りに成功したともいえる。しかし、株主提案に対する30%弱の賛成は、特別決議事項を議題として提案する会社にとっては、一般論としては、脅威である。株主総会の運営だけを考えても、議決権数の議場集計を検討する必要があるし、今後、12月の「本戦」に向けて、メディアアプローチ、個別折衝、他の株主の勧誘など、オアシスが活動を活発化することも予想される。

 持合株式の解消が進み、投資家との対話が求められる中、株主総会におけるいわゆるアクティビストファンドの存在感・発言力は増している。株主提案や事前質問書の送付などの手法を駆使する少数株主はもはや珍しくはなく今後も増加の一途だろう。株主総会は、もはや、総会屋が跋扈する特殊な会合でも、拍手で迎えられる役員お披露目の会でもなく、権利意識の高い株主による、経営方針の吟味と役員に対するシビアな信認投票、いわば激しい選挙戦の舞台と化しつつある。アルパインの場合、今回の定時株主総会は、12月の「本戦」といえる臨時株主総会へ向けた長い選挙戦活動の第一幕といえ、今後も目が離せない。

 

<アルパインとアルプス電気の株式交換に関する時系列表>

時期 イベント
H29.7.27 アルパイン、株式交換によるアルプス電気との経営統合を発表
H29.10.30 アルパイン、H30.3期通期連結業績予想の上方修正
H29.12.4 アルパイン、アルプス電気との経営統合に関するQ&Aを公表
H30.1.30 アルパイン、H30.3期通期連結業績予想の再上方修正
H30.1.30 アルプス電気、H30.3期通期連結業績予想の上方修正
H30.2.27 アルパイン、H30.3期通期業績予想の修正を踏まえた財務予測が株式交換比率算定に与える影響の検証結果を公表(アルプス電気に対して株式交換比率の見直しの申し入れを行わない旨を取締役会において決議)
H30.4.20 オアシス、アルパインに対し、アルパインのH30.6定時株主総会における株主提案を実施(剰余金処分、社外取締役追加選任)
H30.5.9 アルパイン、オアシスからの株主提案に対する取締役会反対意見の公表
H30.6.8 アルパイン、オアシスの株主提案に関する議決権行使助言会社ISSによる賛成推奨レポートに対する見解を公表
H30.6.12 オアシス、アルパインに対し、アルパインのH30.6定時株主総会における事前質問書を送付
H30.6.19 アルパイン、オアシスによるアルパイン株主に対する委任状勧誘関連資料について、一部事実と異なる記載がある旨を公表
H30.6.20 アルパイン、オアシスによるH30.6定時株主総会における事前質問書に対する見解を公表
H30.6.21 アルパイン定時株主総会開催。オアシスの株主提案否決。
H30.6.26 アルパイン、H30.6定時株主総会の決議結果及び賛否割合公表(臨時報告書)
 
H30.12中旬
(予定)
本件株式交換契約承認のための臨時株主総会(アルパイン)。なお、アルプス電気は簡易株式交換に該当のため株主総会の承認は不要。

 

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