◇SH2500◇公取委、「楽天トラベル」を運営する楽天に対し、独占禁止法違反の疑いにより立入り検査 鈴木智弘(2019/04/23)

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公取委、「楽天トラベル」を運営する楽天に対し、独占禁止法違反の疑いにより立入り検査

―「最恵国待遇条項」について解説―

岩田合同法律事務所

弁護士 鈴 木 智 弘

 

 「楽天トラベル」を運営する楽天株式会社(以下「楽天」という。)は、2019年4月10日、「楽天トラベル」が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)19条・「不公正な取引方法」(昭和57年公取委告示第15号。以下「一般指定」という。)12項に違反する疑いがあるとして、公正取引委員会(以下「公取委」という。)による立入り検査を受けたことを公表した。

 

1 大手旅行予約サイト運営会社への立入り検査

 公取委は、同日に「楽天トラベル」を運営する楽天の他にも、オンライン旅行予約サイトである「ブッキングドットコム」や「エクスペディア」を運営する日本法人にも立入り検査を行った。これら3つのオンライン旅行予約サイトは、ホテル等の宿泊施設から手数料を得て自社のサイト上で予約の仲介を行っている。

 上記3サイトを運営する会社は、宿泊施設と契約をする際に、宿泊施設の自社サイトや他の予約サイトと同じ価格か、それより安くするような条件を強いる条項を設けていた疑いがある。また、予約可能な部屋数等についても同様の条項が定められていた疑いがあるとされている。

 

2 最恵国待遇条項

 こうした契約条項は「最恵国待遇(MFN)条項」(相手方に対して、自分との取引条件よりも良い条件で他と取引することを禁ずる条項)や「同等性条項(パリティ条項)」(最安値での提供を約束する条項)などと呼ばれ、一定のシェアを有する業者が相手方に義務付けると、契約先の自由な事業活動を不当に妨げるとして独禁法19条・一般指定12項が禁じる「拘束条件付取引」に該当する場合がある。楽天トラベルは国内客向け、ブッキングドットコムとエクスペディアは訪日客向けの市場を中心に一定のシェアがあるとみられている。

 本件のようにオンライン旅行予約サイトと宿泊施設との間の契約において最恵国待遇条項が定められた場合、宿泊施設側は仲介手数料のかからない自社サイトで低価格のプランを提供できなくなるほか、予約サイトの業者間では手数料を下げるなどの競争が起こりにくくなり、結果として料金が割高に据え置かれてしまう可能性がある。

 

3 諸外国のオンライン旅行予約サイトに関する事例

 最恵国待遇条項を巡っては、諸外国においても競争法の観点から問題視をされたことがある。フランス、スウェーデン及びイタリアの競争当局は、2014年頃に、ブッキングドットコムが、宿泊施設との間の契約において、宿泊施設に対して他の全てのオンライン旅行代理店及び実店舗の流通チャネルにおいて提供可能な宿泊料金と同等又は安価な価格をブッキングドットコムに提供するよう強制していたことから、各国の競争法に違反するおそれがあるとして審査を行った。

 

4 日本のインターネット通販に関する事例

 また、最恵国待遇条項は、日本国内のインターネット通販に係る契約においても問題視されて公取委による調査の対象となったことがある。

 公取委は、インターネット通販大手のアマゾンジャパン合同会社が、同社の通販サイト「Amazonマーケットプレイス」の出品者との間で締結した出品関連契約において、競合電子商取引サイトと同等かより有利な価格や品揃えで出品させるという最恵国待遇条項を定めることにより、出品者の事業活動を制限しているという独禁法違反(拘束条件付取引)の疑いがあるとして調査を行った。同社は、公取委による調査を受けて最恵国待遇条項を見直したことから、2017年6月に公取委による調査は打ち切られた。

 

5 最後に

 東京五輪・パラリンピックを控えて訪日外国人客が増加する中、宿泊施設の料金が割高に設定されていた疑いもあり、我々が宿泊施設を利用するにあたって大きな影響がある問題である。旅行予約サイトにおける最恵国待遇条項の適法性については諸外国でも規制の動きがあり、公取委や今回の立入り検査の対象となった業者の今後の動向は要注目である。

以上

 

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