企業法務フロンティア
エストニアにおける裁判手続等のIT化
日比谷パーク法律事務所
弁護士 井 上 拓
裁判手続等のIT化を求める声が強い。欧米諸国では既に相当程度進められているが、我が国の歩みは遅い。事実、世界銀行の「Doing Business 2018」(世界190ヵ国の事業環境を項目毎に採点し総合結果に基づき順位付けしたもの)における我が国の「Court automation」の項目(4点満点)は、僅か1点である。
そうした中、平成29年10月に「裁判手続等のIT化検討会」(以下「IT化検討会」)が設置され、翌年3月には「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」が発表された。IT化検討会では、韓国、アメリカ、シンガポール、ドイツ、スペインの民事裁判手続きが紹介されている。本稿は、エストニアにおける民事裁判手続きを紹介するものである。
エストニアは、人口130万人と小規模だが、「世界最先端の電子国家」とも呼ばれるICT先進国であり、裁判手続等のIT化も進んでいる。実際、先述の「Doing Business 2018」における同国の「Court automation」の項目は、満点(4点)である。
エストニアでは、原則として、「Public e-File」と呼ばれるウェブシステムを用いて、電子的に裁判所に申立て等を行う。具体的には、ポータルサイトにログインし、当事者に関する基本的なデータと請求の内容を入力する。関連する文書や証拠も、同様に提出できる。また、ポータルサイトにログインすると、自身が関与している事件の審理に関するデータにアクセスでき、そこで手続きの進捗状況を把握できる。
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