◇SH2039◇実学・企業法務(第163回)法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産 齋藤憲道(2018/08/23)

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実学・企業法務(第163回)

法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引

3. 業法、資格

(1) 建設業法

 建設業とは、「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう[1]。」

 建設業法は、建設業を営む者の資質の向上・建設工事の請負契約の適正化を図ることによって建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発展を促進することを目的として(1条)、次の①~⑥の規律を設けている。

  1. ① 建設業を営む者は、国・地方公共団体の「許可」を受けなければならない。
    〔許可要件〕1 経営業務の管理責任者[2]の設置、2 営業所専任技術者[3]の設置、3 財産的基礎(資本金額、自己資本額、流動比率等)[4]を有し、4 欠格要件[5]に該当しないこと。
    (注) 工事の種類は、「土木一式工事」、「建築一式工事」並びに「大工工事」、「左官工事」等の27種類(合計29種類)で構成される[6]。この29種類それぞれについて、営業許可が必要。
  2. ・ 2以上の都道府県の区域内に営業所(本店、支店等)を設置する場合:国土交通大臣の許可
  3. ・ 1の都道府県の区域内にのみ営業所(本店、支店等)を設置する場合:営業所所在地の都道府県知事の許可
    ※ 政令で定める軽微(少額、小面積、簡易工事)な建設工事のみを請け負う建設業者については、許可が不要。
     
  4. ② 建設工事の技術者を配置することが必要である。(26条1~4項)
  5. ・ 主任技術者(全ての建設工事に、法定の有資格者[7])を配置する。 
  6. ・ 監理技術者(3,000万円以上の下請契約を結ぶ工事に、法定の有資格者[8])を配置する。
  7. ・ 公共性のある施設・工作物等[9]については、上記の主任技術者又は監理技術者は、工事現場毎に専任の者でなければならない。専任の監理技術者は、「監理技術者資格者証」の交付を受け、国土交通大臣の登録講習を受講した者から選任する。
     
  8. ③ 建設工事の請負契約では、公正な契約を締結し誠実に履行する(18条、19条)。
  9. ・ 下請人保護の徹底[10]等について、行政当局がさまざまな解説[11]を行っている。
    (注) 建設工事における「役務提供委託」の下請取引には、「建設業法」の請負契約及び紛争処理に関する規定が適用され、下請法は適用されない(下請法2条4項)。
    ※ ただし、建設業者が業として販売する建設資材の製造を他の事業者に委託する「製造委託」、及び、業として提供する建築物の設計や内装設計を他の事業者に委託する「情報成果物作成委託」に該当する行為には、「下請法」が適用される[12]
  10. ・ 不当に低い発注金額や不当な使用資材等の購入強制は、独占禁止法が禁止する「不公正な取引方法(19条)」の一つの類型である「優越的地位の濫用」に該当するおそれがある。
     
  11. ④「建設工事紛争審査会」を設置して、建設工事の請負契約に係る紛争を処理する。
    中央建設工事紛争審査会(国土交通省に設置)又は都道府県建設工事紛争審査会(都道府県に設置)がADRを担当して調停・仲裁を行う(25条~25条の26)。
     
  12. ⑤ 公共入札に参加しようとする建設業者に対して、経営に関する事項の審査を行う。
      (27条の23~27条の26)
     
  13. ⑥ 法令遵守の実効性を確保するために、不適格者を処分等する。
    発注者に対する勧告(19条の5)、適合命令(26条の13)、改善命令(26条の14)、登録の取消し等(26条の15)、指示及び営業の停止(28条)、許可の取消し(29条)、営業の禁止(29条の4)、監督処分の公告(29条の5)、公正取引委員会への措置請求(42条)、罰則(45条~55条)等


[1] 建設業法2条2項

[2] 許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する(又は、国土交通大臣がこれと同等以上の能力を有すると認定した)常勤役員等を置く。建設業法7条1号

[3] 許可を受けようとする建設業それぞれについて、営業所毎に、所定の要件を満たす専任の技術者を置く。建設業法7条2号、15条2号

[4] 建設業法7条4号

[5] 建設業法8条、17条

[6] 建設業法3条1項、2項。(建設業法別表第一)土木工事業、建設工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・レンガ・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業

[7] 建設業法26条1項、7条2号イ、ロ、ハ

[8] 建設業法26条2項、15条2号イ、ロ、ハ

[9] 国又は地方公共団体の発注工事、鉄道・道路・上下水道、学校・デパート・事務所・マンション等(建設業法施行令27条)

[10] 建設工事の請負契約の内容(19条)、不当に低い請負代金の禁止(19条の3)、不当な使用資材等の購入強制の禁止(19条の4)、一括下請負の禁止(22条)、元請負人の義務(2節)等

[11] 例えば、「建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-(国土交通省土地・建設産業局建設業課)」、「建設業者のための建設業法(国土交通省北陸地方整備局)」

[12] 公正取引委員会HP「よくある質問コーナー(下請法)」より。(2017年11月)

 

 

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