(速報)中国:技術輸出入管理条例の改正
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 川 合 正 倫
2018年3月18日、中国の国務院はウェブサイトで「国務院が一部の行政法規を改正することに関する決定」を公表した。当該決定には、外国企業から中国企業へ技術移転を強制するものとして批判されていた「技術輸出入管理条例」の一部条項の削除が含まれ、この決定は既に施行されている。
昨今の米中貿易協議において、米国側は、中国は外国企業から技術移転を強要しているとの問題提起をし、これに対して中国側は、3月15日付で可決された外商投資法において外国投資者及び外商投資企業の知的財産権を保護する旨を規定する等の対応をしてきたところである。今回の国務院の決定は、この外商投資法の規定と足並みを揃えるものと考えられる。
1.改正内容
国務院の決定により、「技術輸出入管理条例」の以下の3条項は削除される。
- 1. 輸入技術が他人の権利を侵害している場合の供与側(ライセンサー)の責任(第24条第3項)
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技術輸入契約の受入側が、供与側が提供した技術を契約に従い使用した結果、他人の合法的権益を侵害する場合、その責任は供与側が負担する。
- 2. 改良技術の帰属(第27条)
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技術輸入契約の有効期間内に改良した技術は改良側に帰属する。
- 3. 不当な制限的条項の禁止(第29条)
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技術輸入契約には、以下に掲げる制限的条項を含めてはならない。
- ⑴ 不可欠ではない技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入を含む、技術輸入に不可欠ではない付帯条件を受入側に要求すること。
- ⑵ 特許権の有効期間が満了し又は特許権が無効宣告された技術について、受入側に許諾使用料の支払い又は関連義務の履行を求めること。
- ⑶ 受入側が供与側に提供された技術を改良し、又は改良した技術の使用を制限すること。
- ⑷ 受入側に、供与側が提供した技術に類似又は競合する技術を他の供給先から取得することを制限すること。
- ⑸ 受入側の原材料、部品、製品又は設備の購入ルート又は供給源を不合理に制限すること。
- ⑹ 受入側の製品の生産量、種類又は販売価格を不合理に制限すること。
- ⑺ 受入側が輸入した技術を利用して生産した製品の輸出ルートを不合理に制限すること。
2.注意点
上記のとおり、技術輸出入管理条例において、主として外国側ライセンサーの権利を制限する条項の一部は削除されたことになり、これらの点については、当事者間が契約において合意できる自由度が広がることになる。しかしながら、契約法においては、技術の違法独占、技術進歩の妨害、他人の技術成果を侵害する技術契約は無効とされ(契約法第329条)、また、契約に定めがない場合等には改良技術は改良した者に帰属する(同354条)とされている。このうち、「技術の違法独占、技術進歩の妨害」の例として「当事者の一方が契約の目的技術を基礎にして新たに研究開発を行うことを制限すること、その改良技術を使用することを制限すること、又は双方の改良技術の交換条件が対等でないこと。これには、当事者の一方に開発した技術を無償提供し、互恵原則によらずに相手側に譲渡すること、改良技術の知的財産権を無償で独占又は共有させるよう要求することを含む。」とする最高人民法院の司法解釈があり、今回の決定以後もこれらの規定は引き続き有効に存続しており、無制限に当事者自治が認められたものではない点に注意する必要がある。