◇SH2618◇LIXILグループ、株主による株主総会検査役の選任の申立て 臼井幸治(2019/06/20)

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LIXILグループ、株主による株主総会検査役の選任の申立て

岩田合同法律事務所

弁護士 臼 井 幸 治

 

 株式会社LIXILグループは、2019年6月7日、同社株主より、東京地方裁判所に対して総会検査役選任の申立てを行った旨の通知を受領したことを公表した。

 総会検査役選任までの手続については比較的多く文献が出ているものの、検査役選任後の流れについて詳細な説明がなされているものは少なく、会社としてなかなかイメージを持っておくことが難しい。

 そのため、本稿では、選任後の実務的な流れを含め、その概要を解説する。

 

1 総会検査役とは?

 そもそも総会検査役とは何かを簡単に説明すると、株主総会の招集手続及び決議方法に関して必要な調査を行うために選任される(会社法306条1項)株式会社の臨時の機関である。

 選任が想定されるのは、後日、株主総会決議取消訴訟や決議不存在確認訴訟等が提起され、決議の有効性が争われる可能性が高い等の場合であり、かかる事態に備えるため、総会検査役の選任を検討することになる。株主提案権や委任状勧誘が利用されている株主総会の場合等が代表例であり、必要に応じて会社が申し立てを行うことも考えられる。

 

2 選任手続は?

 株式会社又は総株主の議決権の1%以上の議決権を有する株主が(会社法306条3項)、株主総会に先立ち、管轄の地方裁判所に対し、総会検査役の選任を申し立てることができる(会社法868条1項)。公開会社における株主の場合は、その議決権を6か月前から引き続き保有していることも必要となる(会社法306条2項)。

 総会検査役選任の申立ては、不適法として却下される場合を除き、言い換えると、株式保有要件等の形式的な要件を満たしている限り、原則として認められることになる(同条3項)。

 株式会社LIXILグループの例においても、2019年6月14日、総会検査役が選任された旨の東京地方裁判所の決定を受領したことが同社より公表されており、申立株主の株式保有要件等の形式的な要件に問題がなかったものとして選任が認められたようである。

 

3 総会検査役が選任されたらどうするか

(1) 株主総会前

 検査役選任決定後、株主総会開催より事前の段階において、検査役、会社、及び申立人(必要に応じて裁判所も)の関係者間の協議が行われることになると考えられる。

 総会検査役の調査対象は、株主総会の招集手続及び決議方法に関する事項であるから、招集手続に関しては、招集を決定した取締役会議事録、招集通知・付属書類の記載内容、発送方法、行使された株主提案権の対応状況等、調査に必要な書類を確認することになると考えられる。

 また、決議方法に関しては、株主総会の定足数、議決権行使書・委任状の内容・対象株式数の確認方法、会場設営、議事運営状況の保全方法、出席株主の確認方法、議案の採決方法等が協議されることになると考えられる。

(2) 株主総会本番

 出席株主の確認という点で、総会検査役は、受付作業から確認するものと考えられる。会社としては、株主以外の者が出席を求めた場合の対応等について事前に整理をしておき、株主総会検査役の記録に耐え得る対応を行う必要がある。

 株主総会開会後の議事については、役員の説明義務や動議対応等が、株主総会の議事の瑕疵として争点化し得るため、会社はきちんと対応を行う必要がある。

 株主総会の決議事項について、投票が行われる場合には、投票の様子や集計作業も調査の対象となるため、会社において、投票のカウントや集計作業もきちんと対応を行う必要がある。

(3) 株主総会終了後

 総会検査役は、必要な調査を終えた後、その結果を記載または記録した書面または電磁的記録を裁判所に提出して報告することとなる(会社法306条5項)。

 裁判所は、当該報告受領後、必要があると認めるときは、取締役に対し、①一定の期間内に(総会検査役の調査結果を開示しかつ取締役がそれに関し調査した結果を報告するための)株主総会を招集すること、②総会検査役の調査の結果を株主に通知することの全部又は一部を命ずることとなるため(会社法307条1項)、この場合は、会社として改めて対応が必要となる。

 

4 結語

 上記の通り、総会検査役が選任された場合、会社としては、通常の株主総会に比して事務負担が増すことは否めない。もっとも、株主総会の招集手続及び決議を適正に行うことは、常に求められるところであり、これ自体に特別な作業が発生するものではないことから、過度におそれるものではない。

 実務的にあまりなじみがないと思われる総会検査役選任後の対応をイメージしておくものとして、本稿が少しでも参考になれば幸いである。

 

<総会検査役選任後の流れ>

株主総会前

関係者間の協議

招集手続の確認、決議方法に関する事項の確認方法等の確認

株主総会本番

受付対応、議事進行、決議等について総会検査役の検査及び記録

株主総会終了後

裁判所より取締役に対し、①一定の期間内に株主総会を招集すること、②総会検査役の調査の結果を株主に通知することのいずれか又は双方が命じられた場合にはその対応

以上

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