◇SH3444◇わが国上場会社においてバーチャルオンリー株主総会を許容する場合における法的論点(上) 太田洋(2021/01/14)

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わが国上場会社において
バーチャルオンリー株主総会を許容する場合における法的論点(上)

西村あさひ法律事務所

弁護士 太 田   洋

 

一 はじめに

 2020年11月19日、日本経済新聞電子版は、「政府は企業の株主総会について完全なオンラインでの開催を認める検討に入った。物理的な会場を設定して取締役や一部の株主が集まることを求める規定に特例をつくる方向だ」と報じ、わが国でも、遂に、バーチャルオンリー型株主総会(以下「バーチャルオンリー総会」という)を許容する方向で、立法的検討が行われることとなった。具体的には、会社法の特別法により、一定の条件の下で、バーチャルオンリー総会を解禁することが検討されている模様である。

 この点、現行会社法の下では、バーチャルオンリー総会の開催の可否について、会社法298条1項1号が株主総会の招集に際して「株主総会の場所」を定めるよう求めていることから解釈上は難しいと解されている[1][2]。しかし、このことは、立法論としてバーチャルオンリー総会の開催を許容することを否定するものではないと考えられる。比較法的にみても、米国では、2000年にデラウェア州一般会社法が改正されてバーチャルオンリー総会を開催することが適法と認められたことを皮切りに、現在では30州でバーチャルオンリー総会の開催が可能とされている[3][4]。また、ドイツ[5]、フランス[6]、オーストリア[7]、スイス[8]、スウェーデン[9]及びインド[10]等では、従前、会社法上、特に上場会社においてはバーチャルオンリー総会を開催することが認められていなかったが、2020年における新型コロナウイルス感染症のパンデミックと感染拡大を防止するための全面的な外出禁止や都市封鎖といったロックダウンの措置が講じられ、株主が株主総会に物理的に出席することが事実上不可能になったことを受けて、時限立法として、一定期間、バーチャルオンリー総会を開催することを許容する立法措置が講じられるに至っている。

 バーチャルオンリー総会は、海外機関投資家など遠隔地の株主や健康上の理由や多忙等により株主総会への物理的な出席が難しい株主に対しても株主総会への参加・出席の機会(アクセシビリティー)を提供することで、株主の権利をより実質的に保証する(株主への情報提供を充実させ、より効率的な対話を促進する)ことを可能にする点で、既にわが国で許容されているハイブリッド型バーチャル株主総会(出席型)(以下「ハイブリッド出席型バーチャル総会」という)[11]と同様の意義を有する。また、バーチャルオンリー総会を活用することで、わが国企業が国境を越えて外国企業の買収又は外国企業との経営統合を行う場合における問題点の一つが解消されることも期待される。即ち、わが国企業X社が、三角合併や自社株対価TOBといった株式を対価とするM&Aの手法を用いて外国企業Y社を買収する場合又はY社と経営統合する場合、(その大部分が海外居住株主であると想定される)Y社の株主がわが国企業X社(又はわが国に統合持株会社Z社が設立される場合にはZ社)の株主に流入してくることになるが、バーチャルオンリー総会の方式でX社(又はZ社)の株主総会を開催すれば、それら流入してきた旧Y社の海外居住株主も、特に移動する手間や費用をかけることなく、X社(又はZ社)の株主総会に出席できることになるため、Y社の海外居住株主がX社による株式を対価とする買収又は経営統合に反対する動機が一つ消失する。

 他方、ハイブリッド出席型バーチャル総会と比較した場合、バーチャル株主総会を開催するための通信設備やシステム整備等のコストが必要となるという点では同様であるが、リアル総会を開催しないため、物理的な会場の確保が不要になることに加えて、物理的な会場を用いることに伴う音響機材等の設備費、警備員や誘導員等の人件費・委託費等を削減することや株主総会に対応するスタッフの手間を削減することが期待できる点で大きなメリットがある。また、バーチャルオンリー総会を開催する場合、リアル総会のための会場の確保や会場の使用時間に関する制約、さらには警備・誘導上の要請を考慮する必要性がなくなるため、リアル総会やハイブリッド出席型バーチャル総会と比較して、株主総会の開催日時に関する柔軟性が大幅に高まるものと考えられる(出席株主数が極めて多数に上る場合に、会場となるホテルやホール等の収容人数のキャパシティの面からの日程的な制約が消失するほか、ホテルやホール等を確保しにくい週末の総会開催も容易になるため)。また、新型コロナウイルス感染症の感染が再び拡大したり、将来、新たな感染症の感染が拡大したりすることにより、外出禁止や都市封鎖といったロックダウンの措置が講じられる状況になった場合、リアル総会やハイブリッド出席型バーチャル総会の開催は極めて困難になると考えられるが、バーチャルオンリー総会を開催することが許容されていれば、そのような状況や災害等により多くの株主の物理的な株主総会への出席が事実上不可能な場合でも、株主総会が開催できないために会社経営が麻痺ないし停滞するといった事態を回避できる。また、ロックダウンの措置まで講じられていなくとも、2020年の定時株主総会シーズンのように、感染防止等の観点から、株主総会への出席人数を厳しく制限せざるを得ない状況に陥った場合、委任状勧誘が行われているような会社では、リアル総会に出席できる株主の選別を巡って紛争が生じかねないが、バーチャルオンリー総会を開催することが許容されていれば、当日出席株主による議決権行使の結果を適時かつ正確に把握するシステムが整備されていることが前提とはなるものの、上記のような「リアル総会に出席できる株主の選別」を巡る紛争を予防することが可能となる。

 これらの点を踏まえて、2020年7月17日に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」では、「バーチャルオンリー型株主総会を含む株主総会プロセスにおける電子的手段の更なる活用の在り方」に関して、2020年度内に一定の結論を得るとされており、さらに、日本経済団体連合会が同年10月13日に公表した「株主総会におけるオンラインの更なる活用についての提言」(以下「経団連提言」という)[12]では、バーチャルオンリー総会について、2021年6月の株主総会に向け、「ハイブリッド型バーチャル株主総会の延長として、まずは特例法等による対応によりバーチャルオンリー型を選択的に開催可能とするための措置を検討する」こと等が提言されている[13]。以上等を受けて、2020年12月1日に策定・公表された政府の成長戦略会議の実行計画では、「来年の株主総会に向けて、バーチャル株主総会を開催できるよう、2021年の通常国会に関連法案を提出する」旨が記載されるに至っている。

 バーチャルオンリー総会は、【表1】のとおり、既に多くの国で解禁されており、コロナ禍が収束の兆しを見せない中で、わが国でもそれを許容する法制を早急に整備することは望ましい方向と考えられる。

 

【表1】 上場会社におけるバーチャルオンリー総会ないしハイブリッド出席型バーチャル総会の可否
国・地域 バーチャルオンリー型総会の可否 *1 ハイブリッド出席型バーチャル総会の可否
米国 ◯ *2
カナダ ◯ *3
英国 ◯ *4
ドイツ ×
フランス ×
オランダ ×
ベルギー ×
スイス (◯)*5 (◯)*5
オーストリア ×
イタリア ×
スペイン
スウェーデン ×
デンマーク
ポーランド ×
アイルランド
オーストラリア ×
ニュージーランド
中国 ×
香港 ×
インド ×
南アフリカ
  1.  *     Claire Corney, The Future of Shareholder Meetings, Corporate Secretary Journal, June 2018, at 13-18等を基に筆者にて作成。なお、《https://www.eqs.com/en-us/ir-knowledge/blog/virtual-annual-general-meetings-a-global-update/#austria》も要参照。
  2.  *1 新型コロナ感染症の拡大防止のためのロックダウン等のための時限立法等で許容されている場合を除く。
  3.  *2 具体的には、42州とコロンビア特別区においてハイブリッド型が許容され、そのうち30州ではバーチャルオンリー型も許容されている。他方で、残る8州[14]ではバーチャル株主総会は許容されておらず、物理的な場所における対面での開催のみが可能とされている[15]
  4.  *3 オンタリオ州ではバーチャルオンリー総会が許容されていることは明確であるが、連邦法及び他の州では不明確である。
  5.  *4 英国では、明文規定がないため解釈によるものとされており、2016年にJimmy Chooが初のバーチャルオンリー総会を開催しているものの、本当にバーチャルオンリー総会が可能かについては議論がある模様である。なお、2020年6月26日に発効したCorporate Insolvency and Governance Act 2020では、定款で総会の場所について定めていたとしても、最大で2021年4月5日までは、その定めによらずバーチャルオンリー総会を開催できるものと定めている。
  6.  *5 2020年6月29日に成立し、2021年施行予定のスイス会社法の改正により、新たに許容されることとなった。

 

 もっとも、バーチャルオンリー総会の開催を許容するに際しては、わが国上場会社の株主総会(以下、場合により単に「総会」という)の実情とバーチャルオンリー総会を許容している諸国の株主総会の実情との差異にも十分留意すべきように思われる。

 例えば、世界でもバーチャルオンリー総会の形式で総会を開催している上場会社の数が最も多いのはおそらく米国であると考えられる[16]が、例えば、General Motors(以下「GM」という)における定時総会への出席株主の数は、2014年から2018年までの過去5年間は平均35名未満であったが、総会の開催方法をバーチャルオンリー総会に変更した2019年6月の定時総会においては125名(当該総会への株主のアクセス数ベース)とのことであり[17]、決議の結果がほぼ事前に明らかである場合であっても出席株主数が1000名を超えることもままあるわが国上場企業の場合とは、かなり様相を異にする。また、出席株主による質問等の参加方法も、例えば、GMの2019年総会の場合には、電話を通じたものであったようであり(いわゆる音声方式)[18]、そもそも、米国で2019年にバーチャル株主総会を利用した326社のうち、バーチャルオンリー型が採用されていた会社では、97%が音声のみのウェブキャストによる方式で開催されていたと指摘されている[19]とおり、「バーチャルオンリー総会」というからには、VR(仮想現実)のように出席株主がZoom等のビデオ会議システムを通じて画像付きで参加しているのかと思うと、必ずしもそうではないようである。

 その意味で、米国では、有力上場会社では決議の結果がほぼ事前に明らかである場合であっても出席株主数が1000名を超えることがままあり、また、多くの出席株主が、社長を始めとする経営陣と直接相対して質疑応答している模様を間近で見聞できること(ないしは自ら質問すること)を期待して株主総会に出席しているものと考えられるわが国上場会社における株主総会の実情とはかなり異なる面があることは、否定できない。米国は、しばしば株主の利益に最も配慮されていると称されるが、米国の上場会社は、このようなわが国とは異なる株主総会の実情を前提として、バーチャルオンリー株主総会への移行を進めているのではないかと推測される。

 そのようなわが国上場会社における株主総会の実情を前提とすると、バーチャルオンリー総会は、株主から、リアルに株主総会に出席して社長を始めとする経営陣と直接相対して質疑応答している模様を間近で見聞したい(ないしは自ら質問したい)という事実上の「期待」を奪うものであって、わが国上場会社の株主の中には、バーチャルオンリー総会には、そのような事実上の「期待」が制限される要素があると捉える向きも存在し得ることは否定できない[20]

 また、2020年2月26日に、経済産業省が、「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」(座長:尾崎安央・早稲田大学法学学術院教授)での議論に基づき、「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(以下「実施ガイド」という)を策定・公表したことにより、会社がハイブリッド型バーチャル総会を実施する際の法的・実務的論点についての見解及び具体的対処策が明らかになった[21]が、ハイブリッド型バーチャル総会は、そのうち出席型のもの(即ち、ハイブリッド出席型バーチャル総会)についてもリアルでの総会の開催を前提とするものであって、株主にはリアル総会に参加する権利が留保されていることから、バーチャルで参加する株主が、動議や質問の提出に際して一定の制約を受けることはやむを得ないものと解される。しかしながら、バーチャルオンリー総会については、そもそもリアルに総会に出席すること自体が不可能であることから、株主が当該総会に「出席」する場合、動議を提出したり質問したりするに際しては、技術的な制約に基づく最小限の制限に服することは別として、リアル総会におけるのと同様の権利が保障されている必要があるはずである。その意味で、バーチャルオンリー総会に関して問題となる法的論点には、ハイブリッド出席型バーチャル総会に関して問題となるものとは質的に異なるものがある(ハイブリッド出席型バーチャル総会において問題となる法的論点は、基本的には、双方向性及び即時性が確保された形でいわゆる第二会場を設ける場合[22]に問題となるものと基本的に同様のものも多い)。

 そこで本稿では、バーチャルオンリー総会を許容するに際して問題となる法的論点につい、若干の整理を試みることで、今後の立法に際して参考に供することとしたい。

 以下、上場会社(必然的に取締役会設置会社たる株式会社である)を前提として論じることとしたい。

 

二 制度設計と政策論

 バーチャルオンリー総会を許容する理由として、上記で述べたバーチャルオンリー総会の開催を許容することのメリットの他、コスト削減に重きを置く会社があってもよいのではないかということが夙に指摘されている[23]。しかしながら、バーチャルオンリー総会が、株主にとって一種の事実上の「期待」を制限する要素を有している点に鑑みると、バーチャルオンリー総会を許容する法制度を設計するに際して、①上記で述べたバーチャルオンリー総会を許容することのメリット及びコスト削減重視に重きを置くことと株主のリアル総会出席権の保障に重きを置くこととを、価値的に等価と考えるか、②株主のリアル総会出席権を保障することが原則形態であって、かかる原則の中で、コスト削減に重きを置くことも選択できるようにすべきと考えるかのいずれの考え方を採るかによって、法制度の枠組みは大きく異なってくるものと考えられる。

 端的にいえば、現行の会社法の枠組みを前提とする限り、仮に前者(①)の考え方(以下「自由選択説」という)を採用するのであれば、制度設計としては、会社は、取締役会決議によって、株主総会をリアルで開催するか、リアルとバーチャルの双方で開催するか、バーチャルのみで開催するかを決定することができるものとすべきということになるであろうし、後者(②)の考え方(以下「リアル総会原則説」という)を採用するのであれば、制度設計としては、会社は、株主総会をリアルで開催することが原則である(取締役会決議により、リアルでの開催とバーチャルでの開催を併用してもよい)が、定款で別段の定め[24]を置けば、バーチャルのみで開催することもできる、ということになるであろう。株主総会は会社の意思決定のための会議体であって、会議体が意思決定できるための双方向でのコミュニケーションが確保されていればそれで足りると考えるのであれば、前者の自由選択説の立場に基づいて制度設計をすることに特に躊躇はないであろう[25]が、株主総会は会社経営陣と株主との対話の「場」でもあって、「中長期的な企業価値創造に向けた事業活動につなげるための結節点」[26]として、相互に相手方の考え方や物の見方等についての理解を深める役割をも担っていると考えるのであれば[27]、物理的に同一の空間と時間とを共有することになる「ライブ感」も重要であると解されることとなるため、後者のリアル総会原則説の立場に基づいて制度設計をすべきということにつながりやすいと考えられる[28]

 現在報道されている、特別法によって、一定の条件の下にバーチャルオンリー総会を開催することを可能にするという案は、バーチャルオンリー総会の開催を許容しない現行会社法の枠組みを前提とした立法論であるので、結果的には、上記の後者の考え方を採用した場合と同じ制度的枠組みを構築することに繋がるが、将来的に、会社法本則による手当てを考える場合には、上記で述べた前者の考え方と後者の考え方のいずれを前提として制度設計すべきかについて、議論を尽くしておくべきであろう。

(下)につづく

 


[1] 2018年11月13日の衆議院法務委員会における小野瀬厚・法務省民事局長(当時)答弁(第197回国会衆議院法務委員会会議録第2号3頁)参照。

[2] バーチャル株主総会、就中、ハイブリッド出席型バーチャル総会の長所と問題点について詳細に分析した論考として、北村雅史「バーチャル株主総会と株主の議事参加権」吉本健一先生古稀記念『企業金融・資本市場の法規制』(商事法務、2020)271頁以下参照。

[3] なお、英国については、英国では、明文規定がないため解釈によるものとされており、2016年にJimmy Chooが初のバーチャルオンリー総会を開催しているものの、実際にバーチャルオンリー総会が可能かについては議論がある模様である。詳細については、例えば、《https://www.fortunelaw.com/covid-19-and-share-holder-meetings-did-jimmy-choo-pave-the-way/》参照。

[4] カナダについても、オンタリオ州ではバーチャルオンリー総会の開催が許容されていることは明確であるが、連邦法及び他の州では不明確であるとされている。詳細については、例えば、《https://www.dlapiper.com/en/canada/insights/publications/2020/03/virtual-shareholder-meetings-and-covid19/》参照。

[5] ドイツの状況については、石川智也「ドイツ、アメリカのバーチャル株主総会の最新動向と日本への示唆―第1部 ドイツ―」資料版商事法務436号(2020)21-24頁参照。

[6] フランスの状況については、菅悠人「新型コロナウイルス対策でフランスが会社法関連の緊急立法」朝日新聞・法と経済のジャーナル(2020年4月20日アップロード。《https://judiciary.asahi.com/outlook/2020041900001.html》にて閲覧可能)参照。

[7] オーストリアの状況につき、例えば、《https://blog.eyeson.com/shareholder-meetings》参照。

[11] 相澤哲ほか編著『論点解説 新会社法』(2006、商事法務)472頁参照。なお、会社法施行規則72条3項1号は、議事録の記載事項として、「株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)」と定めており、このような方式による株主総会の開催が許容されることを前提としている(弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則〔第2版〕』(商事法務、2015)361頁、北村・前掲[2] 271頁参照)。

[12] 経団連提言の詳細な解説として、宮内優彰「バーチャル株主総会についての展望と課題」商事2244号(2020)46-49頁参照。

[13] 経団連提言では、さらに、「爾後の株主総会につき、会社法改正によるさらなる手当てを行う場合には、新型コロナウイルス感染症発生前からバーチャルオンリー型が導入されているアメリカのデラウェア州の方式を参考にしつつ、そもそも株主総会とは何をする機関なのかといった会議体としての株主総会の在り方(例えば、決議事項の見直し、株主提案権の要件、説明義務や動議権のあり方など)に関しても併せて再度検討を行う必要がある」とされている。

[14] 具体的には、アラバマ州、アラスカ州、アーカンソー州、ジョージア州、アイダホ州、ニューメキシコ州、サウスカロライナ州及びサウスダコタ州。

[15] 以上につき、辰巳郁「ドイツ、アメリカのバーチャル株主総会の最新動向と日本への示唆―第2部 アメリカ―」資料版商事法務436号(2020)27頁参照。

[16] 澤口実編著・近澤諒=本井豊『バーチャル株主総会の実務』(商事法務、2020)12頁、辰巳・前掲[15] 27頁参照。

[17] 澤口・前掲[16] 5頁参照。なお、GAFAの一角を占めているMicrosoftでも、2020年12月2日にバーチャルオンリー総会の形式で開催された定時株主総会への出席株主数が900名であって、バーチャルオンリー総会に移行する前の最後の株主総会であった2018年の定時株主総会への出席株主数の3倍超(つまり、2018年の定時株主総会の出席株主数は300名未満)であったと報告されている(《https://news.microsoft.com/2020/12/02/microsoft-holds-annual-shareholders-meeting-4/》参照)。

[18] 澤口・前掲[16] 7頁参照。

[19] See Broadridge Financial Solutions, Virtual shareholder meetings – 2019 facts and figures, available at https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2021/01/broadridge-virtual-shareholder-meetings-2019-facts-and-figures.pdf, at 2. このような傾向は、2020年の定時株主総会でも特に変わりはなかったようである(なお、2020年に開催されたバーチャルオンリー総会はほぼ全て音声のみの方式によるものであったと指摘するものとして、Douglas K. Chia, Key Takeaways and Best Practices from Virtual Shareholders Meetings in 2020, Jul 2. 2020, available at https://corpgov.law.harvard.edu/2020/07/02/key-takeaways-and-best-practices-from-virtual-shareholders-meetings-in-2020/)。以上につき、辰巳・前掲[15] 32頁参照。

[20] 「スクランブル バーチャルオンリー型株主総会の是非―平時と有事―」商事2246号(2020)62頁も、バーチャルオンリー総会の有用性と許容性につき、新型コロナウイルス感染症の「終息後に、有用性が認められることは自明であろうか。〔中略〕株主からリアル会場での出席の機会を奪うことの許容性とのバランスからは、異論があり得る」と指摘している。

[21] なお、経済産業省は、2020年12月23日、「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集(案)」(以下「実施事例集(案)」という)を公表し、パブリックコメントの手続に付している。

[22] 近時では、トラスコ中山のように、東京・大阪の2会場で株主総会を開催している会社も登場するに至っている。

[23] 田中亘「会議体としての株主総会のゆくえ―『株主総会運営に係るQ&A』の法解釈と将来の展望―」企業会計72巻6号(2020)44-46頁参照。なお、バーチャルオンリー総会を許容すべき理由として、特にコスト削減と株主総会の運営スタッフの労働時間・労力の削減を強調する見解として、宮内・前掲[12] 48頁参照。

[24] 定款の規定振りとしては、バーチャルオンリー総会を開催することが「できる」とするパターン(以下「授権型」という)と総会を開催する場合にはバーチャルオンリー総会の方法によるというパターン(以下「義務型」という)とがあり得るが、リアル総会原則説に立ったとしても、いずれの規定振りも認められて然るべきものと考えられる。

[25] 倉橋雄作「2020年総会の動向と新時代の展望(3)新しい株主総会実務のあり方―株主総会の多様化と目的合理的な実務対応による価値の提供―」商事2242号(2020)23頁は、「最近の潮流をみると、会議体としての株主総会の意義を批判的に問い直す学説が有力になりつつある」とした上で、かかる考え方を突き詰めていく中で、「法制度論としては、会議体としての開催を義務づける根拠がなく、任意の取組みに委ねればよい、という議論にまで発展している」と、最近の学説の傾向をまとめている。

[26] 経産省が2020年7月22日に公表した、「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会報告書」42頁参照。

[27] 学説は、長年、「議論することでよりよい意思決定が可能になる、質疑応答で説明責任を果たす、経営陣への規律効果を発揮させるといったことを重視して、リアルな総会の場での質疑を重んじてきたように思われる」と指摘されているところである(倉橋・前掲[25] 23頁)。

[28] 倉橋・前掲[25] 23-24頁は、株主総会を、経営陣が「株主やその背後の市民社会との対話の中で、わが社がどうありたいのかを語る中心的な場」と位置付けた上で、「会議体としての株主総会を対話機会の中心に位置づければ、リアルな会場に来場した株主だけでなく、より多くの株主の声を聞き、またより多くの株主に情報発信すべきということになるはずである」と論じているが、ほぼ同様の発想に立脚するものと推察される。

 


(おおた・よう)

西村あさひ法律事務所パートナー弁護士。1991年東京大学法学部卒、93年第一東京弁護士会弁護士登録、2000年ハーバード・ロー・スクール修了(LL.M)、01年米国NY州弁護士登録、01年~02年法務省民事局参事官室(商法改正担当)、13年~16年東京大学大学院法学政治学研究科教授

日本経済新聞「企業が選ぶ2020年に活躍した弁護士」M&A分野第1位・企業法務一般第3位、同「企業が選ぶ2019年に活躍した弁護士」企業法務総合第2位など受賞多数

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