金融審議会「市場構造専門グループ」の審議が進む
――指名・報酬委員会の設置の一部上場要件化、TOPIXの公表停止も議論の俎上に――
金融庁は8月9日、今年5月に設置・審議開始となった金融審議会「市場構造専門グループ」(座長・神田秀樹学習院大学大学院教授)の第2回会合に関する議事録を公表した。
市場構造専門グループは5月13日に開催通知がなされ、その設置の趣旨などが明らかになったもので、市場区分を再設計しようとする検討が東京証券取引所の「市場構造の在り方等に関する懇談会」(座長・神田秀樹教授)において行われ、論点整理が取りまとめられたことを受け(SH2476 東証、市場構造の改善に向けて論点整理 (2019/04/12)既報)、金融庁においては「東京証券取引所を始めとする我が国の取引所の在り方は、我が国の市場そのものの在り方に直結する」とし、金融審議会で継続的・専門的に議論を深める必要があるとして設置された。学識経験者、経済団体、アナリストなど各界の市場構造に関する有識者等により構成し、事務局は金融庁企画市場局市場課。オブザーバーには日本取引所グループ、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、経済産業省、日本銀行、日本証券業協会が加わっている。
これまでに5月17日(初会合)・同月31日(第2回会合)と2度にわたる審議がなされ、議事録も出そろった恰好となった。5月17日会合では、市場構造専門グループの設置目的等について事務局から説明がなされたのち、東証からこれまでの議論について報告。続いて、①フィデリティ投信のヘッド・オブ・エンゲージメント、②ニッセイアセットマネジメントのチーフ・コーポレート・ガバナンス・オフィサー(以上の2者は運用ビジネスに携わる)、③日本経済団体連合会の金融・資本市場委員会資本市場部会長(上場企業の取締役)の3名の委員からヒアリングを行っている(3委員とも提出資料があり、公表されている)。
東証では現在、市場構造を巡る現下の課題を解消すべく、「一般投資者の投資対象としてふさわしい実績のある企業」をA市場、「高い成長可能性を有する企業」をB市場、「 国際的に投資を行う機関投資家をはじめ広範な投資者の投資対象となる要件を備えた企業」をC市場とそれぞれ仮に区分したうえで、各市場の上場基準・退出基準等を提示しているところである。東証からは席上「我が国の証券市場の一つであります東証の上場制度を担う立場といたしましては、本専門グループにおきましてぜひ活発なご議論をいただくことを期待している」と述べられた。
ヒアリングの3委員以外からは、改革案としては「ラジカルに、白地から考えたほうが良いんじゃないか」「ドラスティックに考えることになろうかと思(う)」といった意見が複数寄せられたほか、座長においても「ある程度思い切った改革というか、インパクトのある改革でないと、目的の達成という観点からも十分ではないと言えそうな気がします。皆様方もそういうご意見ではないかとは思いますけれども」との意見が終盤に表明された。
5月31日会合では、参考人として①日本投資顧問業協会の会長、②農林中金バリューインベストメンツの取締役、③RMBキャピタルのパートナーが参加(3参考人の提出資料も公表されている)。「海外投資家の視点」とする③からは、(ア)「市場構造の変更は基本的に必要なく、すべきでもない」という意見とともに、(イ)東証の機能として「市場の管理と、指数の開発という機能が一緒になっていることが問題なのであれば、むしろその分離というのもこの際、考えるべき(例えば株価指数の部門がスピンオフするということ)」といった提案が表明されたほか、(ウ)親子上場に絡んでは「支配株主がいないことを上場基準に入れてもいいのではないか」との見解もみられた。(イ)はTOPIXやJPX日経インデックス400を巡る課題と絡むものであり、当日の席上、様々な角度から審議されているが、金融指標でもあるTOPIXの公表停止に関しても「制度上は可能なのか」といった観点から議論されている。
また、③からは「指名・報酬委員会の設置の義務化」「取締役会の過半数を社外者とする」などのガバナンス体制を一部上場の要件とすべきとの意見も出されたところであるが、このようなガバナンス面に着目することについて一部委員から肯定的な見解もみられた。
市場構造専門グループでは次回会合以降、企業経営者からのヒアリングなどを行い、議論を継続していく。第3回会合が6月14日に予定されていたが、延期となり未開催の状況にある。