◇SH2753◇すてきナイスグループ、第三者委員会調査報告書の受領に伴う再発防止策を発表 ――外部弁護士を中心とした「創業家との関係整理委員会」の設置など計15項目を掲げる (2019/09/04)

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すてきナイスグループ、第三者委員会調査報告書の受領に伴う再発防止策を発表

――外部弁護士を中心とした「創業家との関係整理委員会」の設置など計15項目を掲げる――

 

 すてきナイスグループ(神奈川県横浜市、東証第一部上場)は8月23日、平成27年3月期の有価証券報告書の虚偽記載事案を巡って作成・公表された第三者委員会調査報告書における指摘を踏まえ、同社として再発防止策の骨子を策定したと発表した。

 併せて、今年5月20日付で発表した代表取締役の異動等を含むグループ内の取締役らの辞任、報酬の返上について明らかにするとともに、関与した役職員等に対して厳正な人事上の措置を行うこと、関係者に対する責任追及を検討していくことを表明。なお、同社には5月16日、上記事案による金融商品取引法違反の容疑で証券取引等監視委員会と横浜地方検察庁が強制調査を実施。7月25日には横浜地検が元取締役3名を逮捕していた。その後、同社ならびに前代表取締役会長および前代表取締役副会長については監視委員会による8月13日付の告発を受け、横浜地検が8月14日、虚偽有価証券報告書提出の罪で起訴している。

 また、以前に7月19日付の発表により、ア)証券取引等監視委員会・横浜地検の調査を受けていること、イ)これを真摯に受け止め、第三者委員会の設置による原因分析と再発防止策の提言が必要であるとして5月30日付で設置を決議して以降、同委員会の調査に協力しているなどの状況にあること、ウ)6月27日に開催した定時株主総会に関しては招集通知の発送期限までに事業報告・連結計算書類・計算書類の確定などの必要な手続を完了させられず、伴って会計監査人・監査役会の監査報告書も添付できなかったこと――を理由とし、第三者委員会の調査結果を踏まえて決算手続等を完了したのちにこれら添付書類の報告を目的事項として招集する臨時株主総会のための基準日を8月9日と設定したことを公表していたが、8月23日には本臨時総会を9月27日に開催することも発表するに至っている。

 第三者委員会調査報告書については取締役らの逮捕前日となる7月24日に同日付の報告書として同社に提出され、同社はこれを当日のうちに公表した。委員会は α)名古屋高検検事長・金融庁長官を務めた弁護士を委員長とし、β)弁護士、γ)公認会計士・税理士の2名を委員とする計3名で構成。調査報告書によると、本調査の委嘱事項は「(1)すてきナイス(編注・すてきナイスグループ)の平成27年3月期に係る不動産物件の取引に関する架空売上計上の疑い(以下「本件嫌疑」という。)に係る事実関係の調査及び本件嫌疑に係る会計処理の適切性の検証」「(2)本件嫌疑の類似事案の有無の確認」「(3)上記(1)及び(2)において問題が発見された場合には、その原因究明及び再発防止策の提言」の3点で、調査対象期間を平成26年度〜30年度第3四半期(26年度の有価証券報告書に記載されている比較対象年度である25年度を含む)とした。

 調査の主要な着目点は次の2点である。ⅰ)ナイス株式会社(以下「ナイス」という)およびナイスエスト株式会社(以下「ナイスエスト」という)が所有していた土地・店舗を27年3月25日にザナック設計コンサルタント株式会社(以下「ザナック」という)に売却し、マンション合計75室を27年3月28日・31日にザナックに売却し、売上を計上したことは会計上認められないのではないか、ⅱ)ナイス、ザ・マネジメント株式会社およびナイスエストが所有していたマンション合計19室を27年2月23日・28日付でタケイチに売却し、売上を計上したことは会計上認められないのではないか。加えて、委員会では調査の過程で上記ⅰ案件に類似した事案として、ⅲ)ナイスコミュニティー株式会社が所有していた社宅マンション1室を27年3月25日にザナックに売却し、売却益を得た案件を検出したとしており、これらのうちⅰおよびⅲの案件において会計上認められない処理が行われていたと判断されている。ただし、ⅱの案件に関してはタケイチ側から委員会への協力を拒絶され、タケイチ側の認識や資料の保有状況その他の詳細について十分な調査を行うことができなかったという。

 委員会の分析によれば、ⅰ・ⅲ案件はナイスグループの実質的なトップであったすてきナイスグループ前代表取締役会長と同社社長であった前代表取締役副会長の指示または了解のもと、ナイスグループの財務を担当していた同社元取締役、同社の元グループ経理担当兼ナイスの元経理担当取締役らが主導し、住宅事業本部の担当取締役らが実務を実行するかたちで行われた。①経営陣としては、27年3月期決算が最終的に赤字になることはもちろん、すでに下方修正された業績予想値につき再度の下方修正を行わざるを得ない事態となることはなんとしても回避したいとの強い意向などを有していたところ、ナイスグループの役職員としては、前代表取締役会長および同氏の意に沿って行動するその他の経営陣の意向に対し、その意向に背いたり疑義を呈したりすることは困難な状況があったほか、②ナイスグループには直接または間接に大半の株式を有している子会社でありながら非連結子会社としていた会社が多数存在するとともに、経理その他の業務をナイスの役職員が遂行し、実質的にナイスが支配して意のままに扱いうるグループ外支配会社が多数存在しており、とりわけグループ外支配会社はナイスグループとの関係が外形上知りえないことを奇貨としてグループで取り扱いにくい事業や取引を行わせることを容易とする客観的事情が存在していた。さらに、③役職員においては自らの関与を積極的に是認しようとする主観的事情も複数存在していたとされる。

 また、これら直接的な原因を生じさせた背景事情(間接的な原因)として、次の点を挙げている。④創業家の強い影響力、⑤ガバナンス、内部統制の不全、⑥企業風土、⑦50年以上継続して実施している会計監査人の監査、⑧会計に関する知識の欠如、⑨内部通報制度がほとんど利用されていなかったこと、⑩多くの非連結子会社およびグループ外支配会社の存在。

 このような原因を踏まえて提言された再発防止策は、「経営陣の刷新等」「ガバナンス体制の根本的な改善・再構築」を始めとする6点を掲げるものであった。

 8月23日発表の再発防止策の骨子は大別すると、1)取締役会改革によるガバナンス強化、2)組織改革によるガバナンス強化、3)創業家との決別、4)内部通報制度の再構築、5)法令遵守風土の構築、6)適正な会計監査の実施。これらを具体的にみると、上記1としては a)新社外取締役・社外監査役の選任等を伴う取締役会による監督強化、b)指名・報酬委員会のメンバー構成の刷新、同様に2では c)内部統制機能の強化、d)内部監査機能の強化、e)子会社・関連会社数削減への取組みの強化、f)経理部門の機能強化、g)法務部門の機能強化、h)人事部門の機能強化、i)資材事業推進室、住宅事業推進室の新設、3では j)外部専門家である弁護士を中心とした「創業家との関係整理委員会」の設置、4では k)内部通報制度の社員への浸透、l)通報窓口の社外への拡大、5では m)経営トップ等の意識改革、n)コンプライアンス教育の徹底、6では o)監査法人に対して会計上の重要な判断に関する情報をすべて開示、適正な会計監査が実施できるよう良好なコミュニケーションの構築――といった計15項目を掲げるものとなった。

 今後は新たなガバナンス体制のもと、新たな企業風土を構築し、同社として「ステークホルダーの皆様および社会からの信頼回復を目指し、全社一丸となって尽力してまいる所存でございます」と述べている。

 

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