◇SH0381◇消費者契約法専門調査会のポイント(第15回) 児島幸良/須藤克己(2015/07/27)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第15回)

 
森・濱田松本法律事務所
弁護士 児 島 幸 良
弁護士 須 藤 克 己
 
 平成27年7月17日、内閣府消費者委員会において、第15回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者の私見である。

1. 配付資料

 以下の資料が配付された。
 
 資 料 1 個別論点の検討(9)―(消費者庁資料)
 資 料 2 山本健司委員提出資料
 参考資料1 参考事例(消費者庁提出資料)
 参考資料2 資料1の概要(消費者庁提出資料)
 参考資料3 古閑由佳委員提出資料 消費者契約法見直しに関する意見(その2)
 参考資料4 阿部泰久委員提出資料 消費者契約法専門調査会における消費者契約法改正検討に関する
       意見提出にあたって

2. 議事内容

 会議の冒頭、古閑委員及び阿部委員から、それぞれ参考資料に基づき事業者からの意見の紹介があった(参考資料3、参考資料4)。なお、参考資料3については差し替え版が席上配布された。
 続いて、消費者庁加納消費者制度課長から、資料1に基づいて、以下の論点ごとに説明がなされ、各論点についての審議が行われた。
 (1) 法定追認の特則
 (2) 消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)
 (3) 条項使用者不利の原則
 (4) 不当条項の類型の追加
 

3. 審議

(1)法定追認の特則

 消費者契約法の規定に基づく意思表示の取消しに関し、法定追認の規定(民法125条)の適用についての特則を設けるべきか否かについて、消費者契約法の規定に基づく意思表示の取消しについては、法定追認の規定を適用しないこととする案(甲案:なお、民法125条1号から6号までに掲げられた行為のうち、一部についてのみ法定追認の規定を適用しないという案も注記で提示された)、消費者が取消権を有することを知った後に民法125条各号に掲げる事実があった場合でなければ法定追認の効力は生じないとする案(乙案)、民法の解釈・運用に委ねるとする案(丙案)が事務局から提示された。
 意図せず消費者が追認したという事態は回避してほしい、取消権を有していても使い方を知らない消費者の保護を図りたい等の理由から甲案に賛成という意見が複数あったが、事業者の立場から丙案に賛成する意見があった。なお、乙案に積極的に賛成する意見はなかった。
 

(2)消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)

 法第10条の前段要件について、最高裁判決を踏まえ、当該消費者契約の条項がない場合と比べて、消費者の利益を制限し、又は消費者の義務を加重するものかどうかを判断するという考え方に基づいて適切な修正を行うこととしてはどうかとの事務局提案に対し、平成23年最判に沿い修正されるべきとし賛成する意見や、条文の文言を変更する意味があるか否かをよく検討すべしとして判断を留保する意見があった。
 条項の平易明確性については、条項使用者不利の原則等において検討することとしてはどうかとの事務局提案に対しては、検討することに賛成する意見が複数あった。
 法10条の後段要件について、現行法の文言を維持するという考え方について、どう考えるかとの事務局提案に対しては、平成23年最判に趣旨に沿うべきとして反対する意見、現状のままでとくに不都合がないのであれば現状維持で問題が無いとして賛成する意見があった。
 

(3)条項使用者不利の原則

 条項使用者不利の原則を規定化することの是非について、定型約款に限定して議論をすることに疑問を呈する意見や、保険業界では懸念が生じそうな論点であるという意見、「通常の方法により解釈してもなお複数の解釈が可能であるときは」という要件が適切かどうかという意見等があった。また、民法では、条項の解釈指針に関する条文がないので、消費者契約法でなんらかの基準を画する必要があるのではないかという意見もあった。
 

(4)不当条項の類型の追加

  1. ① 消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項
  2.  (ア)消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項
  3.    当該条項がなければ消費者に認められる解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項は無効とするという案(A案)と民法その他の法律の規定に基づく解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項は無効とするという案(B案)が提示され、A案には複数の賛成意見があったが、事業者の立場からB案に賛成の意見もあった。
  4.  (イ)消費者の解除権・解約権をあらかじめ制限する条項
  5.    当該条項がなければ消費者に認められる解除権・解約権をあらかじめ制限する条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とするという案(A案)と当該条項を定める合理的な理由があり、かつ、それに照らして当該条項の内容が相当である場合を除き無効とするという案(B案)が提示され、B案に賛成意見が複数あったが、事業者の立場からA案に賛成の意見もあった。なお、このA案に対しては、要件自体が自明であることからそもそも法制化できるのか疑問であるという意見があった。
     
  6. ② 事業者に当該条項がなければ認められない解除権・解約権を付与し又は当該条項がない場合に比し事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項
  7.    事業者に当該条項がなければ認められない解除権・解約権を付与し又は当該条項がない場合に比し事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項について、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とするという案(A案)と当該条項を定める合理的な理由があり、かつ、それに照らして当該条項の内容が相当である場合を除き無効とするという案(B案)が提示され、B案に賛成意見が複数あったが、事業者の立場からA案に賛成の意見もあった。なお、この論点と上記①の論点はセットで検討すべきという意見もあった。
     
  8. ③ 消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項
  9.    消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項について、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とするという案(A案)と当該条項を定める合理的な理由があり、かつ、それに照らして当該条項の内容が相当である場合を除き無効とするという案(B案)が提示され、B案に賛成意見が複数あったが、事業者の立場からA案には反対しないがB案には反対するとの意見もあった。
     
  10. ④ 契約文言の解釈権限を事業者のみに与える条項、又は、法律若しくは契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性若しくはその権利・義務の内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項
  11.    消費者契約の文言を解釈する権限を事業者のみに与える条項については、これを無効とする規定を設けるという案が提示され、賛成意見が多くみられた。
     民法その他の法律の規定若しくは契約に基づく事業者の義務の発生要件該当性又はその内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項については、これを無効とするという趣旨の規定を設けるのではなく、それによって生ずる消費者の不利益については、法10 条の解釈・適用によるほか、個別の事案で実際に当該条項が不当に利用された場合に、信義則、権利濫用、不法行為等の適用による救済に委ねるという案が提示され、賛否が分かれた。
     
  12. ⑤ サルベージ条項
  13.    いわゆるサルベージ条項については、これを不当条項として無効とするか否かについて、今後、問題となった実例等を調査した上で、更に検討するという案が提示された。サルベージ条項を不当条項として無効とすること自体については、賛成、反対、保留と意見が分かれたが、問題となった実例等を調査した上で更に検討することについては特段の異論はみられなかった。

4. その他

 次回開催予定:平成27年7月28日(火)13時~
以上
 
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