経産省・公取委、下請取引の適正化について要請
――働き方改革、台風等災害時の取引条件、消費税の円滑・適切な転嫁等への対応を要請――
経済産業省と公正取引委員会は11月15日、下請取引の適正化等について要請を行った。
経産省等によると、「我が国経済は緩やかな回復基調にあり、企業収益の拡大や倒産件数の減少が続くなど、経済の好循環が浸透する一方、度重なる災害をはじめ、人手不足の深刻化、労働生産性の伸び悩みなど、中小企業を取り巻く環境は厳しい面もあり、これから年末にかけての金融繁忙期を迎えるに当たり、下請事業者の資金繰り等について一層厳しさを増すことが懸念される」状況にある。
このため、
- ① 親事業者が下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにすることが必要であり、下請事業者と十分な協議を行い適切な対価の決定を行う、事前に定めた支払期日までに下請代金を全額支払うなど、下請取引の適正化に努めていただきたいこと
- ② 本年4月より大企業に対して罰則付きの時間外労働の上限規制の適用が開始され、来年4月には中小企業に対しても同規制が適用されるなど、政府を挙げて働き方改革を推進しているところ、大企業・親事業者による長時間労働の削減等の取組が、下請等中小事業者に対する適正なコストを伴わない短納期発注等の「しわ寄せ」を生じさせることにより、下請等中小事業者の働き方改革を妨げないように努め、下請代金支払遅延等防止法等の違反にもなり得る「しわ寄せ」を生じさせないようにしていただきたいこと
- ③ 災害等の発生を理由として、下請事業者に一方的に負担を押しつけることにより、取引のある経営基盤の弱い中小企業・小規模事業者に悪影響を与えることのないよう、適切に対処していただきたいこと
- ④ 令和元年10月1日から、消費税率が引き上げられ、併せて、消費税の軽減税率制度が実施されたところ、減額や買いたたき等による消費税の転嫁拒否等の行為が生じないよう適切な措置を講じていただきたいこと
等について、親事業者約20万社および関係事業者団体約1,100団体に対し、公正取引委員会委員長および経済産業大臣連名の文書をもって要請したものである。
以下、「下請取引の適正化について」の要請文の概要を紹介する。
下請取引の適正化について(20191010中第4号・公取企第53号・令和元年11月15日)
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<中小企業の取引環境>
我が国経済は緩やかな回復基調にあり、企業収益の拡大や倒産件数の減少が続くなど、経済の好循環が浸透する一方、度重なる災害をはじめ、人手不足の深刻化、労働生産性の伸び悩みなど、中小企業を取り巻く環境は厳しい面もあります。また、これから年末にかけての金融繁忙期を迎えるに当たり、下請事業者の資金繰り等について一層厳しさを増すことが懸念され、親事業者が下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにすることが必要です。
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<下請法の理解と下請代金支払の適正化>
経済の好循環を実現するには、下請等中小企業の取引条件を改善していくことが重要という問題意識の下、政府を挙げて下請対策の強化に取り組んでおり、平成28年12月には、違反行為の未然防止や事業者による情報提供に資するよう、下請法に関する運用基準を改正するとともに、親事業者による下請代金の支払についても以下の事項を旨とした通達を発出しました。- • 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること
- • 手形で下請代金を支払う場合は、割引料を下請事業者に負担させることがないよう下請代金の額を十分に協議すること
- • 手形サイトは、将来的に60日以内とするよう努めること
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引き続き、下請取引の適正化に取り組むよう要請いたします。
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<働き方改革>
本年4月より大企業に対して罰則付きの時間外労働の上限規制の適用が開始され、来年4月には中小企業に対しても同規制が適用されます。人手不足が深刻化している中、中小企業における働き方改革への対応は、重要な経営課題の一つとなっております。政府を挙げて働き方改革を推進しておりますが、取引の一方当事者の働き方改革に向けた取組の影響がその取引の相手方に対して負担となって押し付けられることは望ましくないと考えられます。
そのため、大企業・親事業者による長時間労働の削減等の取組が、下請等中小事業者に対する適正なコスト負担を伴わない短納期発注、急な仕様変更、人員派遣の要請などの「しわ寄せ」を生じさせることにより、下請等中小事業者の働き方改革の妨げとならないことが重要です。
下請等中小事業者に対して発注を行うに当たっては、下請法等の違反にもなり得る「しわ寄せ」を生じさせないよう要請いたします。
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<災害時における取引条件>
令和元年台風第15号及び第19号に伴う災害により災害救助法の適用が決定されるなど、台風や前線を伴った低気圧などがもたらす大雨によって河川の氾濫や土砂災害が発生しており、被災地域における事業者と取引のある全国の事業者に影響が広がっております。
貴社におかれましても、災害等の発生を理由として、下請事業者に一方的に負担を押しつけることにより、取引のある経営基盤の弱い中小企業・小規模事業者に悪影響を与えることのないよう、適切な対処を要請いたします。
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<消費税の円滑かつ適正な転嫁>
令和元年10月1日から、消費税率が8%から10%に引き上げられ、併せて、消費税の軽減税率制度が実施されました。貴社におかれましては、減額や買いたたき等による消費税の転嫁拒否等の行為が生じないよう、貴社全体で適切な措置を講じるよう要請いたします。
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<社内周知及び実施のお願い>
貴社におかれましても、このような取引環境を御理解いただき、下請事業者と協議をした上で適切な対価の決定を行う、事前に定めた支払期日までに下請代金を全額支払うなど、下請法の遵守に取り組んでいただきますようお願いいたします。
特に、別紙(略)の記載事項については、調達担当者のみならず役員等の責任者まで周知徹底を図り、現場責任者には調達担当者の指導及び監督に当たらせるなど、適切な措置を講じるよう要請いたします。
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経産省、下請取引の適正化について親事業者等に要請します(11月15日)
https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191115004/20191115004.html -
○別添1:下請取引の適正化について(親事業者代表者宛て)
https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191115004/20191115004-1.pdf -
○別添2:下請取引の適正化について(関係事業者団体代表者宛て)
https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191115004/20191115004-2.pdf -
公正取引委員会、下請取引の適正化について(11月15日)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/nov/191115.html - 参考
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SH2055 総務省、下請取引の適正化に関する制度の周知状況等を調査し、下請取引の適正化に関する勧告を公表 羽間弘善(2018/08/29)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=7023951 -
SH2233 経産省と公取委、下請取引の適正化について親事業者等に要請--下請法の遵守、働き方改革、災害時の取引条件等(2018/12/05)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=7722595 -
SH1515 経産省と公取委、下請取引の適正化等について要請を行う--下請法の遵守、消費税の転嫁の確保等を要請(2017/11/27)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4918614