帝国データ、民事再生法を申請した上場118社を追跡調査
岩田合同法律事務所
弁護士 坂 本 雅 史
帝国データバンクは、8月3日、民事再生法(2000年4月施行)に基づく再生手続開始の申立てを行った上場企業118社の追跡調査の結果を発表した。帝国データバンクによれば、このような調査が行われたのは今回が初めてとのことである。
調査結果の概要は以下のとおりである(いずれも数値等は帝国データバンク作成の報告書による。)
今回調査が行われた民事再生手続とは、原則として債務者に財産管理権を残したままで、債権者集会の決議及び裁判所の認可を得て、債務の減免を主たる内容とする再生計画を遂行することにより事業の再生を図る手続である。選任された破産管財人が債務者の資産(破産財団)を換価して配当が行われ、会社債務者の法人格の消滅(自然人の場合は債務の免責)を目的とする破産手続とは、①原則として債務者に管理処分権が残る点、②債権の減免については債権者の意向が反映される点及び③法人の解散を前提とせず事業の継続を目的とする点などが異なる。
申請後の状況としては、調査対象会社118社のうち現在も存続しているものは約4割に相当する46社にすぎず、72社は法人格が消滅し又は事業活動を停止している。消滅した66社の内訳は、解散が35社、破産が16社(うち8社は再生計画の認可を受ける前に破産手続に移行している)、合併により消滅した会社が14社、特別清算が1社である。
また、調査対象会社の再生類型についてみると、自主再建型は29社にすぎず、13社は清算型(再生手続の中で事業譲渡などを行い会社を清算する方法)、スポンサー型(スポンサーの支援により再建を図る方法)が68社であり、大部分がスポンサー型による再生を選択している。なお、スポンサーとなった企業のうち48社(全体の70%)は事業会社である。
多くの経営者が事業の継続や会社の存続を希望して、破産ではなく、再生型倒産手続である民事再生手続を選択するものと思われる。再生計画には債権者集会の決議が必要であり、かつ裁判所がこれを認可する際にも「再生計画の遂行の見込み」がなければならない(民事再生法174条2項2号)。しかし、調査対象会社118社のうち存続している会社は46社であり、中でも再上場を果たした企業となると、株式会社かわでん(山形県)の1社にすぎない。この調査報告の結果を見る限り、民事再生手続によったとしても会社の存続は容易でないことがうかがわれる。自主再建を選択した企業は29社であり、対象会社のうち68社がスポンサー型を選択しているように、事業再生を図るためにはスポンサーの力を借りる必要性が高いということもいえよう。
なお、この調査報告では項目ごとの相関関係には言及されておらず、自主再建を選択した企業とスポンサー型を採用した企業のうち、どちらの会社が多く存続しているかといったことまでは明らかになっていない。また、今回の調査報告は、上場企業を対象としたものであり、負債規模は92社が100億円以上(1000億円以上も11社)である。このように、大規模な倒産案件が対象となっているため、上述のような分析が、小規模な非上場企業の場合にそのまま当てはまるわけではないことに留意が必要である。