法のかたち-所有と不法行為
第十話 所有権法と不法行為法-請求権の構成
法学博士 (東北大学)
平 井 進
6 不法行為と所有権の共通の請求権形式
ここで、不法行為と所有権をまとめて、その請求権の要件と効果の構成を考えてみる。
その要件は、人がもつ「実体」の正当な状態を第三者の行為(不作為を含む)が損ねるということであり、その効果は、その状態を回復し、または第三者の上記行為を停止・予防することである。その行為において第三者にどのような責任(善意・悪意、過失・無過失等の扱い)があるとするかは、規範的に定めることになる。
このような請求権の構成について、民法第709条の形式にならうと、次のようになる。(選択する要素を〔〕内に示す。)
a 〔故意・過失により/故意・過失の有無に関わらず〕
b 他人の権利又は法律上保護される利益を〔侵害した/侵害する〕者は
c 〔損害賠償/原状回復・侵害停止・侵害予防〕の責任を負う。
このように、不法行為と所有権の内容が同じカテゴリーにあるとすると、その請求権を構成する形式も共通となる。
ここで不法行為と所有権の請求権のあり方(その規範)として述べていることは、現行民法の規定の範囲内で運用することが可能である。