◇SH1385◇最二小判 平成29年3月24日 特許権侵害行為差止請求事件(鬼丸かおる裁判長)

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1 事案の概要

 本件は、角化症治療薬の有効成分であるマキサカルシトールを含む化合物の製造方法に係る特許権の共有者であるX(被上告人)が、Yら(上告人ら)の輸入販売等に係る医薬品の製造方法は、上記の特許に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであり、その特許発明の技術的範囲に属すると主張して(最三小判平成10・2・24民集52巻1号113頁参照。以下、この判決を「平成10年判決」という。)、Yらに対し、当該医薬品の輸入販売等の差止め及びその廃棄を求める事案である。これに対し、Yらは、本件では、平成10年判決にいう、特許権侵害訴訟における相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するから、上記医薬品の製造方法は、上記特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるとはいえないと主張して、Xの請求を争っている。

 

2 事実関係等

(1) 本件特許

 Xは、発明の名称を「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」とする特許権(特許第3310301号。請求項の数は28である。以下、この特許を「本件特許」という。)の共有者である。Xは、本件特許につき、1996年(平成8年)9月3日に米国でした特許出願に基づく優先権を主張して、平成9年9月3日に特許出願をした。

(2) 本件発明

 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項13(以下「本件特許請求の範囲」といい、これに係る発明を「本件発明」という。)の記載は、別紙のとおりである。Xは、本件特許の特許出願時に、本件特許請求の範囲において、目的化合物を製造するための出発物質等としてシス体のビタミンD構造のものを記載していたが、その幾何異性体であるトランス体のビタミンD構造のものは記載していなかった。

(3) Yらの製造方法

 ア Y1社は、角化症治療薬であるマキサカルシトール原薬の輸入販売をしており、Y2社、Y3社及びY4社は、上記原薬を含有するマキサカルシトール製剤をそれぞれ販売している(以下、上記原薬に係る製造方法を「Yらの製造方法」という。)。

 イ Yらの製造方法を本件特許請求の範囲に記載された構成と比べると、目的化合物を製造するための出発物質等が、本件特許請求の範囲に記載された構成ではシス体のビタミンD構造のものであるのに対し、Yらの製造方法ではトランス体のビタミンD構造のものである点において相違するが、その余の点については、Yらの製造方法は、本件特許請求の範囲に記載された構成の各要件を充足する。

 Yらは、Xにおいて、本件特許の特許出願時に、本件特許請求の範囲に記載された構成中のYらの製造方法と異なる上記の部分につき、Yらの製造方法に係る構成を容易に想到することができたと主張している。

(4) 本件明細書の記載等

 本件特許の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、トランス体をシス体に転換する工程の記載など、出発物質等をトランス体のビタミンD構造のものとする発明が開示されているとみることができる記載はなく、本件明細書中に、上記発明の開示はされていなかった。

 

3 原審の判断

 原審(知財高裁)は、本件を大合議事件(特許法182条の2)として審理し、要旨次のとおり判断した上で、本件では、上記特段の事情が存するとはいえず、Yらの製造方法は本件特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲に属するとし、Xの請求を認容すべきものとした。これに対し、Yらが上告受理申立てをした。

 ア 出願人が、特許出願時に、特許請求の範囲外の他の構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても、それだけでは、上記特段の事情が存するとはいえない。

 イ 上記アの場合であっても、出願人が、特許出願時に、特許請求の範囲外の他の構成を、特許請求の範囲に記載された構成中の異なる部分に代替するものとして認識していたものと客観的、外形的にみて認められるときは、上記特段の事情が存するといえる。

 

4 本判決

 第二小法廷は、Yらの上告受理申立てを上告審として受理し、次のように判示した上、原審の判断は、これと同旨をいうものとして是認することができ、論旨は採用することができないとして、本件上告を棄却した。

 (1) 出願人が、特許出願時に、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき、対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても、それだけでは、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきである。

 (2) 出願人が、特許出願時に、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき、対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において、客観的、外形的にみて、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。

 

5 説明

(1) 均等の主張が許されない特段の事情

 ア 問題の所在
 特許法70条1項の「特許発明の技術的範囲」は、特許請求の範囲に記載された構成の文言解釈により確定されるのが原則であるところ、平成10年判決は、特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(対象製品等)と異なる部分が存する場合(文言侵害が成立しない場合)であっても、所定の要件(第1~第5要件)を充足するときは、当該対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であるとし、特許権侵害(均等侵害)となるものとした。
 本判決が取り上げた法律上の問題は、上記の均等論の第5要件に関する問題であって、「出願時同効材への均等論適用の可否」に関する問題である。

 イ 学説及び裁判例の状況
 この問題に関する学説としては、① A説(出願時容易想到説)……出願人が特許出願時に容易に想到することができた他人の製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかっただけで、均等の主張が許されない特段の事情が存するといえるとする説(出願時同効材への均等論適用を基本的に否定し、均等論は、出願後同効材に適用されるとする説。この説に対して比較的親和的とみられる論稿として、三村量一「判解」最判解民事篇平成10年度(上)156頁、高林龍『標準特許法〔第5版〕』(有斐閣、2014)154~156頁、高林龍「均等論をめぐる論点の整理と考察」日本工業所有権法学会年報38号(2014)68~69頁、大野聖二「均等論における本質的部分及び意識的除外」知財管理54巻9号(2004)1345頁、愛知靖之「審査経過禁反言・出願時同効材と均等論――アメリカ法を参照して」日本工業所有権法学会年報38号(2015)105頁などがある。)と、② B説(客観的外形的表示説)……出願人が特許出願時に容易に想到することができた他人の製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかっただけでは、均等の主張が許されない特段の事情が存するとはいえず、特段の事情を肯定するためには、何らかの外形的な付加事情が必要とする説(出願時同効材への均等論適用を基本的に肯定し、均等論は、出願後同効材に適用されるだけではないとする説。この説に対して比較的親和的とみられる論稿として、設樂隆一「無効の抗弁導入後のクレーム解釈と均等論、並びにボールスプライン最判の第5要件とFESTO最判との比較及び出願時同効材等について」日本工業所有権法学会年報38号(2014)270頁、中山信弘『特許法〔第3版〕』(弘文堂、2016)480頁、田村善之「均等論の要件の明晰化を図った知財高裁大合議判決~マキサカルシトール事件~」WLJ 判例コラム第78号(2016)、岩坪哲「クレームアップされざる技術は意識的除外されたか」飯村敏明先生退官記念『現代知的財産法――実務と課題』(発明推進協会、2015)670頁などがある。)が挙げられる。
 また、裁判例の多くは、明細書の発明の詳細な説明の記載などを丹念に検討して、均等の主張が許されない特段の事情の存否を判断しており、B説(客観的外形的表示説)に親和的な裁判例が大勢を占めていたといえるように思われる。知財高判平成18・9・25裁判所ウェブサイト登載〔椅子式エアーマッサージ機事件〕、名古屋高判平成17・4・27裁判所ウェブサイト登載〔圧流体シリンダ事件〕などもこの立場に親和的であると思われる。他方、A説(出願時容易想到説)を明示的に採っていた裁判例はほとんどないように思われる。A説(出願時容易想到説)に親和的といわれることがある知財高判平成24・9・26判時2172号106頁(医療用可視画像生成方法事件)も、明細書に他の構成の候補が開示されていたという事案であり、知財高判平成21・8・25判時2059号125頁(切削方法事件)も、当初の請求項が削除されたとの出願後の経過も踏まえて均等の主張が許されない特段の事情が存すると判断されたものである。さらに、知財高判平成17・12・28裁判所ウェブサイト登載(施工面敷設ブロック事件)も、明細書の記載を丁寧に検討した上で結論を導いている。

 ウ 海外の状況
 均等論を採用している米国、ドイツにおいても、出願時容易想到説(前記①の説)のように、出願人が特許出願時に容易に想到することができた他人の製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかっただけで、均等の主張が許されないこととなるという趣旨のものは見当たらない(「知財高裁詳報 均等の5要件の主張立証責任並びに第1要件および第5要件の適用の判断手法等 マキサカルシトール製剤事件[知財高裁特別部平成28.3.25判決]」Law & Technology 72巻(2016)73~74頁参照)。

(2) 本判決の考え方

 ア 本判決の判断について
 本判決は、原審の判断を是認して、① 出願人が特許出願時に容易に想到することができた対象製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかっただけでは、均等の主張が許されない特段の事情が存するとはいえないことを示し、② 出願人が特許出願時に容易に想到することができた対象製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかったときにおける、均等の主張が許されない特段の事情が存する場合として、「出願人が、客観的、外形的にみて、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるとき」という規範を示した。
 上記の①と②とは、原審の判断と同一の、ひとまとまりの規範を提示したものである。すなわち、A説(出願時容易想到説)の立場である論旨が「原審の認定判断は、均等の主張が許されない特段の事情が認められる範囲を狭く解しすぎている。」旨をいうのに対し、最高裁として、上記①の法理判断をしてA説(出願時容易想到説)が採用できないことを示し、均等の主張が許されない特段の事情が認められる範囲として、上記②の法理判断を示し、これらに照らすと、原審が「狭く解しすぎている」ことにはならないとして、論旨は採用できない旨応答したものといえる。

 イ 禁反言の法理との関係について
 本判決は、平成10年判決が参照されるべきことを示しつつ、特段の事情が存すると均等の主張が許されなくなる根拠は、禁反言(民法1条2項)の法理に照らしてのものであることを述べている。
 禁反言の法理とは、民法1条2項(「権利の行使……は、信義に従い誠実に行わなければならない。」)に規定される信義誠実の原則が具体的に適用される場面に現れるものといえ、権利の行使又は法的地位の主張が、先行行為と直接矛盾する故に(先行行為抵触の類型)、又は先行行為により惹起させた信頼に反する故に(信頼惹起の類型)、その行使を認めることが信義則に反するとされる場合であるとされる(谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)  総則(1)〔改訂版〕』(有斐閣、2002)98頁〔安永正昭〕)。
 しかるに、本判決が踏襲する平成10年判決も説示するとおり、特許発明の実質的価値は、第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することのできる技術に及び、第三者はこれを予期すべきものである。そうすると、このような立場にある第三者においては、出願人が特許出願時に容易に想到することができた対象製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかっただけでは(先行行為)、対象製品等が特許請求の範囲の記載に含まれず文言侵害はないとの理解が生ずるとしても、例外的に、特許発明の実質的価値が特許請求の範囲外の他の技術に及びうるとの予期までもが必ずしも払拭できるものではなく、出願人が、あえて特許請求の範囲に記載しなかったとの信頼が生ずるとまではいえないであろう。そうすると、出願人の側が、後になって、特許権侵害訴訟において均等の主張をしたとしても(後行行為)、特許発明の実質的価値について先行行為と直接矛盾する行為をしたとはいい難く、上記の「先行行為抵触の類型」に当てはまらないこととなろう。
 このような思考から、本判決は、A説(出願時容易想到説)が採用できないことをまず法理として示し、続いて、それではどのような場合に上記のような立場にある第三者の信頼が生ずるといえるのかを分析するべく、上記の「信頼惹起の類型」にあてはまるかの検討をしたものと思われる。そして本判決は、客観的、外形的にみて、出願人があえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるとき(このような先行行為があるとき)には、明細書の開示を受ける第三者も、その表示に基づき、対象製品等が特許請求の範囲から除外されたものとして理解するといえるから、当該出願人において、対象製品等が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したと解されるような行動をとったものということができると説示し、更に法理として、客観的、外形的にみて、出願人があえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには、均等の主張が許されない特段の事情が存するとして、B説(客観的外形的表示説)の採用を明示するに至ったものと考えられる。

 ウ 特許請求の範囲の記載の公示機能との関係について
 前記のとおり、出願人が特許出願時に容易に想到することができた他人の製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかっただけでは、特許発明の実質的価値が特許請求の範囲外の他の技術に及びうるとの第三者の予期までもが必ずしも払拭できるものではないというところまではいえたとしても、他方、それが払拭できる明確なラインが定立されていなければ、第三者は安心して対象製品等の製造販売等をすることができず、特許請求の範囲の記載の公示機能がその基礎を置いているところの第三者の予測可能性との関係で、問題が生ずるように思われる。
 この観点から、本判決は、均等の主張が許されない特段の事情が存する場合として、客観的、外形的にみて、出願人があえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときという、第三者から見ても判断が可能であるようなラインを定立したものと評価し得るように思われる。なぜなら、明細書の開示を受ける第三者は、その表示に基づき、対象製品等が特許請求の範囲から除外されたものとして理解するといえるからである。このことは、本判決自身、以上のようなときに上記特段の事情が存するものとすることは、特許法の目的にかない、出願人と第三者の利害を適切に調整するものであると述べて、第三者の予測可能性の見地も踏まえて規範を定立したものであることを示しているところからも裏付けられる。

(3) 残された問題

 ア 客観的外形的表示の具体例
 本判決は、客観的、外形的にみて、出願人があえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときとして、平成10年判決が「外形的に」とした部分を表現としてより明確にし、出願人の主観的な意図を問わないことを明らかにしている。しかるところ、具体的にはどのような事例がこれに当たるかについては、米国やドイツなどの海外の状況も見据えつつ、今後の裁判例の集積が期待されるところである。
 この点について若干の私見を述べると、本判決(6頁5行目~8行目)が「出願人が、特許出願時に、その特許に係る特許発明について、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき、特許請求の範囲に記載された構成を対象製品等に係る構成と置き換えることができるものであることを明細書等に記載」したときを挙げていることに照らすと、例えば、特許発明に係る技術思想と無関係に「幾何異性体にはシス体とトランス体がある。」と抽象的、一般的に記載されているにすぎないときは、均等の主張が許されない特段の事情が存することにはならないように思われる。また、前記の海外の状況で紹介したような、明細書中の記載自体において示されていないとき(明細書中の記載としては文献名等のみがあり、当該文献をみると、その中に記載があるにすぎないとき)や、対象製品等の構成の上位概念や概括的な効果が記載されているにすぎないときも、同様であるように思われる。
 なお、本判決は、明細書の記載以外の場合については、特に触れていない。本判決は「明細書等」としているから、それ以外の場合(原審が触れた、論文公表のような場合)を排除はしていないと思われるが、もともと当該発明を開示する役割を有する明細書と、それ以外の媒体とを同じように考えることが困難であることは否定できないように思われる(原審も、論文公表の場合は「出願人が出願当時に公表した論文等で特許請求の範囲外の他の構成による発明を記載しているとき」のようにハードルを上げ、明細書の記載の場合の「出願人が明細書において当該他の構成による発明を記載しているとみることができるとき」とは区別していることが看取される。)。このように、私見では、明細書の記載以外の場合に客観的外形的表示性が認められるのは例外的な場合に限られるように思われるが、具体的にどのような媒体にどのような記載がされた場合が明細書の記載に匹敵するような「客観的外形的表示」該当性を有することとなるかは、困難な問題であり、なお今後の裁判例の集積に委ねられるといえよう。

 イ 特許出願後の審査経過等において補正等がされた場合について
 前記のとおり、本判決が設定した場面は、出願人が特許出願時に容易に想到することができた対象製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかったという場面であって、特許出願後の審査過程や特許付与後において補正や訂正がされた場合は、「特許出願時に」という要素を欠くから、本判決の射程外であると考えられる。
 もっとも、本判決が示した法理判断は、場面設定は異なるものの、その趣旨を及ぼす形で、補正等がされた場面においても広義説(対象製品等が補正等により特許請求の範囲から除外された場合には、一律に均等の主張が許されない特段の事情が存するとされる説)ではなく狭義説(上記のような場合であっても、直ちに均等の主張が許されない特段の事情が存するとはされない説)をとることに親和的である可能性がある。この点、例外はあるものの、本判決の法理(B説〔客観的外形的表示説〕)に親和的な論者は、補正等の場面でも狭義説を採用し、より柔軟な対応を指向する大まかな傾向が見受けられるところである。

(4) 本判決の意義

 本判決は、平成10年判決が定立した均等論の第5要件に関して、平成10年判決を踏襲しつつ、出願人が特許出願時に容易に想到することができた対象製品等に係る構成を特許請求の範囲に記載しなかったときにおける、均等の主張が許されない特段の事情が存する場合について、出願時容易想到説を採用しないことを明示した上で、客観的、外形的にみて、出願人があえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときに当たるかどうかが基準となることを示した初めての最高裁判決であり、実務的に重要な意義を有するものである。

 

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