経産省、法務省、新型コロナウイルスの感染拡大下における
「株主総会運営に係るQ&A」を取りまとめ
岩田合同法律事務所
弁護士 飯 田 浩 司
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経済産業省及び法務省は、2020年4月2日、「新型コロナウイルスの感染拡大下における「株主総会運営にかかるQ&A」」を、経済産業省のHP上で公表し、さらに同月14日付で一部改訂した(本稿末尾関連リンク。以下「本Q&A」という。)。
会社法上、株主総会は、一定の物的「場所」で行うことが予定されている(会社法298条1項1号参照)。
対して、政府は、新型コロナウイルス対策で、いわゆる「三密」(換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面)を避けるべきことを呼び掛けているところ、株主総会の会場はこうした「三密」に該当するおそれがあり[1]、また、当然ながら、株主総会の会場への移動中もリスクがないとは言えない。
もっとも、本原稿執筆時においては、現今の状況下でも、株主総会の開催時期自体を延期することを具体的に検討している会社は少ない[2]と思われる。
まず、多くの会社ではその定款において「毎事業年度終了後3カ月以内に定時株主総会を招集すべきこと」を定めており、この違反リスクを完全に否定することはできない[3]。
このほか、株主の権利行使の基準日及び剰余金配当受領の基準日は、通常、事業年度末に設定されているところ、延期後の定時株主総会において剰余金配当の決議を行う場合には、これらの基準日とは異なる日を新たに基準日として設定することとなる可能性が高く(基準日は、当該基準日から3箇月内有効である。同法124条2項)、当該事業年度末時点での基準日株主の配当への期待も事実上無視できない[4]。定時株主総会によって決せられるべき役員選任その他会社の重要事項の決定も勿論大切である。さらにいえば、現今の状況が収束する時期も、当面見通せない。
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